
東京に住んでいる我々にとって上方落語はどうしても触れる機会の少ない芸能です。無論、きちんと調べていれば月に何度かは東京で上方落語を聴く機会はありますが、それは熱心なファンに場合であって絶対数はやはり少ない。とすると、私のようなヌルい落語ファンが上方落語を聴きたいと思ったときには録音に頼らざるを得ないのであります。
手軽に聴けるのは米朝師匠、故枝雀師匠のCDでして図書館の落語コーナーには高い確率でどちらかが置いてあります。語り口もスマートで関東圏の人間にも聴き易く、素晴らしいシリーズであります。
私が落語のテープの聞き漁っていたのは高校時代で、図書館にある落語を片っ端から借りておりました。当然、上方落語も含まれます。その時聴いた上方落語で一番好みだったのが二代目桂春団治だったのです。
語りのテンポの良さ、口跡の明瞭さ、程よい上方のアク、どれも素敵でした。しかしながら二代目は録音も資料も決して多くありません。初代が上方落語伝説の人物で、三代目が現役でご活躍されている為でしょうか、両者の間に挟まって話題にのぼる機会が少ないのです。その二代目の奥様、河本寿栄さんによる二代目桂春団治の思い出語りが本書です。発行は平成14年にされていますが、ようやく読んだという次第。
この本を読んだからと言ってどうだという事は無いのです。しかし、芸は好きだったけれども、人とナリについては全く知らなかった方のエピソードに触れるのは嬉しいものです。二代目春団治師匠、もっと録音が残っていたらと思う方の一人です。