
ちょいと長いお休みを経て久しぶりの弁士のお仕事でした。ここ最近の継続的な活動として中国映画をさせて頂いている阿佐ヶ谷のあるぽらん’89での公演です。何が辛いって活動写真弁士が弁士の仕事を出来ないのはツライのです。己のアイデンティティに係わりますからな。いや、その意味でこの一月の長さときたらありませんで、早く弁士をしたいと念じながら準備をあまりしないという怠惰なる日々を過ごしていたのでした。人間適度に忙しくないと駄目になります。いや、人間は知らんけどオイラは駄目になる。なのでもっと仕事を下さい。先日御一緒させて頂き、今度のモトヴン映画祭でも共演させて頂くオーストリアの無声映画伴奏者ゲルハルト・グルーバーは年内に100ステ位は決まっているそうです。ああ、そんな馬車馬のように仕事をこなしてみたい。
文句を言っても始まりません。仕事が少ない故に中国映画の様な集客的にも弱い、自分の興味のある分野へのチャレンジが出来るのです。芸人はお金とプライドで動きます。中国映画はプライドの部分を満たす為にやっている仕事といっても過言ではありません。大事にしているシリーズであります。ここで中国の無声映画を9本も語らせて頂いているのです。有難い事であります。
本日はニ部構成、一部が弁士以外のパフォーマーによるチャレンジ弁士コーナー。二部がアタクシ、片岡一郎の説明で『春蚕』でした。
チャレンジ弁士コーナーで上映した作品は詳細不明の西部劇風作品。どの位詳細不明かというとタイトル不明、主演不明、監督不明、制作国不明、もちろん共演者もスタッフも不明、つまり全部不明の作品で、登場人物の名前も人間関係も何にも解りません。そんな何も解らないフィルムを約三分、私が所蔵しておりまして、これを語って貰おうという趣向。出演弁士は声優の狛乃ハルコさん、池々大造さん、役者の志賀優寛さんのお三方でした。三人とも初めての弁士体験だった訳ですが、語りが三者三様で映像・音楽共に同じなのに、作品としては全く違うものに仕上がっておりまして非常に楽しいステージになったのです。
弁士が違えば映画が違う。この事は純粋な映画ファンを自認する片には許し難い事であるようです。映画というのは複製芸術ですら見る場所によって変化が起こってはならないのでしょう。気持ちは解るのですが、殊更に弁士というだけで嫌悪感を出されたりケナされたりすると、そりゃこっちだって面白かろう筈がないのです。つい喧嘩腰で反論を考えたりしますが、冷静になれば演者によって、場所によって内容が変化するのはパフォーマンスの世界では当然至極の事であるので反論なんぞする必要もないのです。
という様な事を何度書き、何度言ってきたでしょう。でもしつこい位に言わないと他人は認識してくれませんのでしょうがないのです。又かと思われた方がいたらスマンね。
御託が多くてイケマセン。そんな弁解・解説が必要ない程、この日の三人の弁士は素敵でした。彼らに比べればアタシの弁士初仕事など、全くもって児戯に等しい内容でした。こうした人達がもっと手軽に弁士を出来る状況をつくらねばならんなぁと思う次第。プロだけしか弁士を体験できないのは芸能としては不健康な状態と言えると思います。健康第一で行きましょうよ。
弁士をしてくれた狛乃ハルコさんはブログを持ってますのでご紹介しておきましょう。他のお二人は無い様なので出来たらいずれご紹介ということで。
狛乃ハルコのブログ* こまっしゃくれべいべー
http://ameblo.jp/harucomano こまっしゃくれているのだそうです。今回の三人はどなたも面白い人でした。HPやブログはありませんが志賀優寛さんは7月26日に阿佐ヶ谷のヴィオロンで一人芝居をされるそうです。落語をベースにした芝居との事、興味のある方は行ってみて下さい。