今日はハロウィンですよ。
 書いてるのは十二月三十日ですけれど。日本はもう大晦日ですけれど。

 こちらでは週に二回、英会話教室に通っています。先生は牧師のスティーブ。
 スティーブが教えてくれるのは英会話には違いないんですが、むしろ文化理解が中心です。会話をしながら、アメリカではこういう風にするんだよとか、アメリカではこんな行事があるんだよ、なんて教えてくれるのですね。なので細かく文法を指導したりといった内容ではありません。就職や受験対策にはならない教え方ですが、とにかく会話をして様々な文化を知る意味においては、中々楽しい授業です。

 水曜は夜七時からの授業なのですが、この日は事前に連絡がありまして、今日の参加者は私しかいないと、だったらウチに来て食事をするかい?と。
 普通に授業をやってもいいし、ハロウィンの夜を米国人のお宅にお邪魔して満喫してもいい、どっちでも好きな方を選んでOKと言われたんですね。
 これ、考える余地あります?どうせ先生と一緒に過ごすんだし。どう考えたってお邪魔した方が良いに決まってますがな。

 と、スティーブ宅にお邪魔する前にかぼちゃをお見せしなければなりません。
 僕の住むアパートでは管理人さんの企画で割と頻繁にイベントがあります。あるんですが正直それほど盛り上がってる感じではありません。いつの間にかアパートの住人がお互いにみんな友達、みたいなのが理想なのかもしれませんが、そう上手くもいきませんやね。
 それでもイベントが企画されるのは悪くありません。そこから多少なりとも交流が生まれる可能性はありますしね。
 それで本日はSignature apartment 主催、あなたのカボチャでみんなを驚かせちゃおうコンテスト発表の日でもあったんです。ウチは早い段階でかぼちゃランタンがありましたが、ハロウィン前に腐りました。あのまま放っておくと、カボチャの顔に醜悪なシミがあちらこちらに出来、嫌なにおいを発し、おぞましい虫が這い回る本気のホラーになってしまうので月末を待たずにご隠退を頂きました。なのでコンテストには参加させておりません。

 ちなみのこのコンテスト優勝者には賞金が出ます。
 そして賞金は自動的に次の月のお家賃に充てられる仕組みになっています。うぬぬ。
 では発表しましょう
 
第三位

第三位 かぼちゃ

「掘らない」という発想が斬新ですね。僕の写真掲載コンセプトも抑えてくれている素敵な作品でした。

第二位
第二位 かぼちゃ

これは手が込んでいます。『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』ですね。

第一位

第一位 かぼちゃ

一位なのに写真がピンボケですね。がっかりですね。ブログにあげるつもりならちゃんと撮れば良いのにね。
カボチャがカボチャを食ってる造形がお見事。

 順位は僕が決めたんじゃありませんよ、念のため。

 そんな事をやっている間にスティーブ牧師のお宅に到着致しました。
 写真は好きに撮って良いよと言われましたが、他人様の家を撮って回るのも趣味が良くないので暖炉の写真を一枚だけ。

暖炉

 十月末でもう暖炉が恋しい気温です。
 火って温かいですね。

 食事をしていると子供たちがやって来ます。本当に「トリックオアトリート」って。
 当たり前ですが小さい子供には大人が付き添っています。お菓子をあげるとね、親御さんが「ちゃんとありがとうって言いなさい」と注意してました。こういうイベントを通じてコミュニケーションを学ぶんですな。やっぱり外に出なきゃいかんよ。
 仮装も実に多彩で定番のお化けや魔女から、ディズニープリンセス、果ては和服に刀を挿してる子もいました。ホロウィンの仮装に選ばれるような服で毎週人前に出て小津映画の弁士をやってるのかと思うと若干妙な気持になりましたけれど。
 ハロウィンで訪ねてくる子供の数は年々減ってきているのだそうです。少なくともスティーブの住んでいる地域では。今年は六十人ほどだったでしょうか。もういい加減に卒業しなさいよと言われながら毎年来る子もいました。今年十七歳、来年もまた来ますと言い残して去って行ったそうです。

 ハロウィンといえば、かつて日本人が撃たれてしまった悲しい事故がありました。たしか今年もスカンクを間違えられて撃たれた子供がいたんではないでしょうか。

 ハロウィンに繰り出す子供が減って、発砲事件は無くならない。ゆっくりと形を変えてゆくのでしょうか、それとも規模は縮小しつつも変わらないのでしょうか、あるいは何かの拍子に突然規模か大きくなったりするんでしょうか。僕が気を揉む必要はないのですが、らしさは残って欲しいなと思うのでした。

 でも子供たち、ちょっと寒そうだったな。
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|10/31| もやもやコメント(0)TB(0)
 『Searching For Sugar Man』を見たのはこの日のはずです。
 スケジュール表にはステイトシアター4:45と書いてありますから。でも何を見たのかメモしてない。状況から言うと『Searching For Sugar Man』しかないんだけどね。二ヵ月の後追いだとこういう無理がでますね。

 『Searching For Sugar Man』はとても良い映画だと聞かされていました。ノーネス先生がベタほめでして「見に行った方が良いよ」と言われていましたから、それは行かなきゃと思いつつ台本書きに忙殺されて劇場に行く時間が取れずにいたら某N先生から「見に行くつもりがないかもしれないけど、いい映画だよ」と言われて、いやいや行く気ありまんがな、MANMANでんがな、と思ってから早二週間。
 ようやく劇場に来られたんですね。

 通常ドキュメンタリー映画の上映期間は短いです。一週間だけやって、見た人だけが褒めて、それでお終いなんてパターンがほとんど。そもそもドキュメンタリー映画をわざわざ劇場に足を運んで見る人ってのは結構な映画好きか、それとも関係者のどちらかです。あんまりいないでしょ、デートで彼女連れてドキュメンタリー見に行く人。

 なのに『Searching For Sugar Man』は何週間も上映されています。この作品はデトロイトがらみの場面もあり、ご当地映画という意味もあるのかもしれません。でもほかの土地で上映が続いている。お客さんがちゃんと入っている。滅多ない出来事です。

 ボブ・ディランを超える逸材と期待されたミュージシャンと彼の音楽が歩む数奇な運命。

 ただ当然字幕もないしね、細かいところは分からなかったんですよ、正直。インタビュー中心だしさ。これは内容をちゃんと把握したいな、と思っておりましたら、なんとあなた来年日本でやるってぇじゃないですか。しかも三月なら見られる可能性が高いじゃないですか。日本公開は三月一六日なので、みなさんどんどん見に行って頂きたいと思います。Ann Arbor規模の町で一か月以上続映をした良心的な映画です。まさか東京で誰も来ないなんて、ありませんでしょ。

 音楽ファン、映画ファン、あと感動したい方(嫌な表現)は劇場にお出かけくださいませ。あるいは三月末に私と一緒に行きましょう。

 ところでタイトルは単に『シュガーマンを探して』かと思っていたら『シュガーマン 奇跡に愛された男』って邦題なのね。過剰なまでに分かりやすいタイトルを付けた訳ですが、さて吉と出るか凶と出るか。

 公式サイトで予告編も見られますので、まずはそこから。
 なんでこんなに宣伝してるのか分かりませんが。

 今日の画像はオフィスをシェアしているマークが突然飾り始めたポスター。
 剥がされたあとの梱包材がオフィスのあちこちに散らばったまま、ポスターだけがカッコよく置いてありました。マーク氏、おそらく飾った段階で満足して帰っちゃったんだと思います。
 子供か、君は。
 でもとっても親近感。

マークのポスター

|10/30| もやもやコメント(0)TB(0)
 風が凄いのです。
 窓に叩きつけるような風が吹いています。何かと思ったらハリケーンのサンディの風なのだと。ニューヨークで猛威を振るっているハリケーンの風がここまで届く……。しかもかなりの風力です。空を見上げたら鳥が真横に向かって飛んでました。どんなに羽ばたいても、自分の進みたい方向に行かないんですね。自然の力をまざまざと見せつけられる思いです。しかも寒い。外に出ると秒単位で体温を奪われていくのが分かります。

 災害って非日常じゃないですか。だから何となく現実感が無い。でも強靭な力で日常を食い破るから否応なく現実だと認めざるを得なくなる訳です。ところが自分はまだ米国について二ヵ月で、日常というには若干浮ついた生活をしています。日常がまだ非日常的と言えば良いのか。
 結果として非日常の中にハリケーンという非日常が割り込んできている構造ですから、こちらとしては物語の中にでも居るような心持がするんですね。幸いにして近しい人で怪我をした人もいないし。

 なんというか、不思議な感覚です。

 本日は天候こそ荒れていますが、スケジュール面では久しぶりに時間があるので学校の図書館に行きました。ミシガン大学の図書館は日本語の資料も沢山あり、無声映画のDVDも大量に所蔵していますし、さらには著作権切れの映画に関してはオンラインで、誰でも見られるサービスも展開しており、弁士にとっても誠にありがたい環境です。実に図書館こそが大学の価値を分けると言っても過言ではありますまい。

 電子書籍の時代になったら、大学図書館も含め、図書館の在り方はどう変化するんでしょうね。権利切れの文献は良いとして、新刊の扱いとか。

 なんてつらつら考えておりました。

 今日のキティちゃんはヘッドフォン。耳の位置が違うのに。
キティ ヘッドフォン
|10/29| もやもやコメント(0)TB(0)
 初めてきた土地で徒歩三十分見当の目的地まで地図も持たずに歩くのは無謀です。だけれども、どうしても会いたい相手がそこにいれば、たとえ千里の道だとて。

シカゴ 高層ビル
高層ビル アナーバーには無い 練馬にもない

シカゴ 高架下
都会的高架下

シカゴ 街
シカゴ 街の光景

シカゴ 公園
並木道 道じゃないですね

シカゴ 線路
線路 こんなものまで珍しい気になる



 ホテルから世界最高の美女に会うためにやって参りました。
 彼女に会うのが楽しみで楽しみで。

SUE1
二階の展示がSUEの背中に乗って手乗り文鳥みたいだ

 恐竜、好きなんですよ。
 彼女はSUEといいます。発見されている中では最も完全に近いT-REXの化石です。僕が子供の頃はT-REXなんて言いませんでした。ティラノサウルスって言ったんです。ティラノサウルスが急にT-REXになったのは『ジュラシック・パーク』の影響が有ったように記憶しています。

SUE2
二階から激写

 SUEが居るのはフィールド博物館といいまして、米国でも屈指の規模を誇る博物館です。僕も滞在時間は2時間しかなかったので全部見て回る事はとても出来ませんでした。機会があれば再訪したい所。

フィールド博物館
フィールド博物館

フィールド博物館 銅版
看板

フィールド博物館に限らず、仕事で行った先にある博物館や美術館を十分に見て回る時間が確保できるのは極めて稀です。大抵は駆け足でメインどころを抑えて移動、と言った感じで毎回の不完全燃焼。僕が美術館・博物館が好きなのはいつも不完全燃焼だからかもしれません。満たされない思いが次に対しての活力になるって仕組みで。そのくせ、何もない場所で妙に待ち時間が長かったりとかもしますね。「ご自由に」なんて言われても、どうしようもないという。

 SUEはフィールド博物館の至宝なので門外不出なのです。かつて日本で展示しようと日本企業が動いたことがあるそうですが、結果は実現ならず。日本に来たら大行列だったんでしょうね。日本人、並ぶの好きだから。

 そんな御託は良いのです。
 恐竜の化石をご覧下さいませ。嗚呼、カッコ良いなあ。
 恐竜についての本が読みたいな。
 昔は恐竜の名前とかいくらでも出て来たのになあ。

恐竜1

恐竜2

恐竜3

恐竜4

恐竜5

恐竜6

恐竜 足の大きさ
アパトスルスの足と僕の足

 化石ばっかり見ているようですが、恐竜以外の展示も充実しておりましたよ。
 あと散歩も気持ちよかったですよ。片道三十分かけて移動しましたからね、ちゃんと景色も楽しんでおります、おりますともさ。良いお天気でした。

シカゴ ミシガン湖
ミシガン湖 その1

ミシガン湖
ミシガン湖 その2

シカゴ オブジェ
謎のオブジェ

シカゴ 噴水
噴水

シカゴ 公園3
公園から見るミシガン湖

シカゴ 高層ビル2
ビル群


 この日は多少の登場時刻遅れがあったものの、予定通りの時間で帰れましたことをご報告いたします。
|10/28| もやもやコメント(0)TB(0)
 シカゴに来たのは二度目です。一度目はこの時。いやー思い出深い街だ。
 着いた当日に早速公演。ハードスケジュールですが、今日は久しぶりの時代劇でちょっと嬉しい。小津は素晴らしい、素晴らしいのだけど、そればっかり演ってるとたまには別のものも演りたくなるのが人情でごわすよ。贅沢な要求だとは思います、我ながら。

 しかしシカゴは都会だ。ワシントンDCでも浮き足立ちましたが、シカゴは完全に都会ですね。単純に人が多い。そして高層ビルが立ち並んでいる。噂では日本の食材から雑貨からかなりの物が揃うお店がシカゴには有って、アナーバーからもはるばる出かけて買い物をする方もいらっしゃるそうです。

都会 シカゴ
都会でごんす

 到着して担当の方に迎えに来ていただき、まずは食事に行きましょうと。
 何が食べたいですか?と、僕の最も苦手な質問をされます。

 俺ね、結構何でも美味しく食べられるの。でも飛び上がって喜ぶこともないの。だから料理が好きな人と付き合ったりすると最初は喜ばれるんだけど、だんだん張り合いがない相手になっちゃうの。

 だから食べたいものを言って、と聞かれると好意は嬉しいんだけれど答えに窮しちゃうのね。基本的には、その土地の物が一番嬉しいです。時折、気遣いでお寿司なんかを海外で紹介される時もありますが、それはそれで楽しい体験だけれど、どっちかというと場所を感じさせて貰える食べ物や飲み物が嬉しいですね。

 かくして本日の昼食はバーガーとなりました。良いじゃないのさ、なんだかシカゴっぽい。しかもお品の名前がGarbage Burgerときたもんだ。日本語に訳すと生ゴミバーガーって具合かしら。
 こっちのバーガーはねマクドナルドみたいなのだけじゃないの。ナイフとフォークで解体しながら食べるお店も結構あるのです。Garbage Burgerもまさにそのタイプ。こういうバーガーはどうやっても綺麗に食べられませんでね、後半の見た目の悪いことったらもう、まさに生ゴミチックで、ええ。美味しかったですけどね。
 案内して下さった方、ベジタリアンだったんですけどね。

 お腹を満たしてホテルに着いて、一息いれたらすぐに会場に向かいます。

シカゴ 会場 外から
会場を外から

 本日の会場はシカゴ大学のLogan Center, Screening Room 201で、演目は『御誂治郎吉格子』で、音楽はTatsu Aoki Quartetさんです。Tatsu Aokiという名前からも分かるかと思いますが、カルテットのリーダーは日本人で青木達幸さんという方。この御仁、ジャズベースと三味線の二刀流でして、なんとお座敷三味線のCDも出されているんです。コンセプトは四谷荒木町の料亭「豊秋」に流れていた音を復活させる、というもの。しかもこのCD、Tatsuさんの演奏も良いんですが特典音源が豊秋に残されていた1950年に収録された三味線の音。小唄、端唄とはまた違うお座敷の音が素敵です。
 Tatsuさん、お喋りしている間は駄洒落ばっかり言っているお茶目な方です。この日は会場入り直前まで日本から来た女子プロレスを見ていたと仰言っていました。

 公演情報はこちらからもご覧頂けます(ました)。


豊秋本(TOYOAKIMOTO)豊秋本(TOYOAKIMOTO)
(2012)
タツ青木

商品詳細を見る

僕はこのCDを頂いてしまいました

 じゃあ今日の『御誂治郎吉格子』はお座敷風味かといえば違うんですな。ベース&三味線、太鼓、サックス、シンセサイザーのかなりユニークな編成。曲もコンテンポラリー寄りで御座いました。今まで本作はマツダ映画社さん使用音源、柳下美恵さんのピアノ、音和座さんの楽団演奏と様々なパターンで説明させて頂きましたが、今回さらに新しい体験をさせて頂きました。一本の作品にこれだけバリエーション豊かな音が付いて上映されることは無声映画時代でも滅多に無かった状況だと思います。

シカゴ会場2
客席

シカゴ会場3
場内


 『御誂治郎吉格子』は今年日活100周年だったので繰り返し上映された作品ですが、一体どれだけの音が治郎吉を彩ったのでしょう。全てを知っているのは治郎吉ばかり。

シカゴ会場1
『御誂治郎吉格子』試写中

 今日の『御誂治郎吉格子』は数ある上映の中でもユニークな部類に入るであろう音でした。この会場で見た方、貴重な機会だったと思います。まあ舞台は一期一会ですから、常に貴重な機会たり得るのですが。

 上映はお陰様で好評でした。終演後の質疑応答もたっぷりやり、その後の懇親会でもなんのかんの質問攻めにあい、さらに関係者でビールも飲みに行っちゃうご機嫌ぷり。

 『吸血鬼ノスフェラトゥ』を一昨日見て、『東京の合唱』を昨日説明して、『御誂治郎吉格子』を今日説明しての重量級無声映画三連発はどうにかこうにか無事に終わり、楽しきシカゴの夜は更けてゆくのでした。
 といってもビール飲みながらギャラを頂くための書類を書いたりしましたがね。
 本当に書類好きねアメリカ。

 明日は半日自由時間です。どうしても行きたい場所があるのです。世界最高の美女に会いにゆかねばなりません。
|10/27| 活弁コメント(0)TB(0)
 週に一度のSilent Ozuもあと三回。
 本日の演目は『東京の合唱』です。

 正直言うとあまり好きな作品ではありませんでした。ちょっと散漫な気がしていたのですね。でも見ると演るとじゃ大違いで、やっぱり小津は凄いわあと。
 日本で小津作品を上映すると、どうしても映画史上の名作を見る雰囲気と言うか、肩に力が入っている雰囲気と言うか、そういうものがあるんですね。でも初期の小津は、いや小津は生涯を通じて喜劇作家だったと思うのですよ。だから面白いシーンでは屈託なく笑って頂きたいのですが、日本だと品の良い笑いしか聞こえてこないのがどうもね。そして『東京の合唱』は典型的なそういう反応の作品だと思うのです。
 よく言えば笑いと社会性のバランスが絶妙なのですが、悪く言えば緩んでくれない。特に日本においては。

 他国で上映すると、そうした映画史的な枷からは幾分自由です。小津の事なんか何も知らない方が「毎週やってるあれ、面白いから今週も行ってみよう」ってんで来て下さる。だから笑いが無邪気で良い。結果的に小津の喜劇性がクローズアップされるんですね。

 日本に顕著な傾向なのか、それとも世界的に同じなのか分かりませんが、喜劇を評する時に「笑いだけではない」を評価する考え方があります。実際、物語としては「笑いだけじゃない」方が優れているのかもしれませんが、「笑いだけじゃない」事に意識を向けすぎると「だけじゃない」はずなのに、そもそもの「笑い」がおざなりになってしまうパターンがあります。小津の喜劇性はそうした「笑いだけじゃない」を尊ぶ考え方の基に抑圧されているような気がするのです。もって笑ってくれて良いのにと思います。そうすれば『東京の合唱』は上映の頻度が上がる気がするんですね。

 僕がこれまで見た中で一番良かった『東京の合唱』は三鷹芸術文化センターで師匠が演ったものです。あの時は伴奏音楽のオペレーションを僕がやっておりまして、しかも音響ブースが舞台袖だったので実は、見た中で、という表現は正しくなくて、正確には聞いた中でと言うべきでしょうが、それはさておき、あの時の『東京の合唱』は脳裏に焼き付いています。でも師匠のパフォーマンスとはいえ、他人の芸が、しかもある一回の場においての芸があまりに強く印象に刻まれてしまうと説明台本を書くのが大変なのです。

 耳にタコやら目にフジツボやらが出来る程に言っていますが、弁士は自分で台本を書きます。中には他人の録音から台本を起こして平気な顔してオリジナルで御座いてな顔をしてるのもいますが、そんな方でも他人の録音が無いときは自分で最低限台本を書かねばなりません。弁士の仕事の要は台本にあると言っても過言ではないのです。
台本を書くにあたって師匠からの添削等はありません。少なくとも澤登一門では。したがって台本の呼吸を知るためには日ごろから師匠や先輩の芸に触れて血中弁士密度を上げておく必要があるのですが、いざ書く段になると他人の声はノイズなんですね。自分の感性、解釈で台本を書いているのに師匠の名演がちらちらちらちら脳裏をかすめるんです。だからといって師匠の良い所だけをイタダいても歪んだパッチワークになって台本としては酷く御粗末な代物が出来上がってしまうばかり。

 早い話が、今回の台本は難産だったってことなんざんすよ。
 こういう駄洒落を入れるから良くない。

 あ、それからこれは弁士諸君に大事な情報です。米国で小津のサイレント映画を上映する際には極めて高い確率でJanus Filmsさん所蔵のプリントで上映する事になると思います。Janus Filmsさんは、かのクライテリオンと表裏一体の会社なのですが、クライテリオンから出ている『東京の合唱』のDVDとJanus Filmsさんが上映用に貸し出すフィルムには若干の違いがあります。おそらくは元は同じだったのが、どこかで上映事故が起こって直したり繋ぎ直した際に欠損及び場面の移動がなされてしまったのだと推測されます。

 五年程度のキャリアがあれば対応できる範囲の違いですし、それ以下のキャリアの弁士が海外で『東京の合唱』を説明する機会がそうそうあるとは思いませんが、念のため情報として書いておきます。
映画のフィルム上映がすたれてデジタル上映だけになったら、こういうトラブルは無くなるんでしょうね。もっとも違った種類のトラブルが出てくるでしょうが。その場でフィルムの違いに合わせて語るスキルが弁士に求められない時代は目の前なのかもしれません。
|10/26| 活弁コメント(0)TB(0)
 ハロウィン、日本で定着する訳がないと思っていたハロウィン、ここ数年で妙に浸透したハロウィン、でもいまだに馴染めないハロウィン。
 まもなくハロウィンです。
 本場のハロウィンです。
 どう過ごしていいのか全く分かりません。

 そんな僕にもハロウィンの楽しみがひとつ出来ました。何度かお話ししておりますが、ミシガンシアターには1920年代に作られたシアターオルガンが現役で稼働しています。これだけでも十分感動的なのに、時折無声映画を上映してシアターオルガンの音楽で見る事が出来るのです。つまり無声映画時代に、まさにこの場所で行われていた上映形態を僕らは今でも体験できるのです。なんと素晴らしい事でしょうか。

 本日はミシガンシアターで無声映画の上映があります。作品はハロウィン特別企画として『吸血鬼ノスフェラトゥ』ですよ。ベタなチョイスです。でも良い。ちゃんと無声映画が現役の娯楽として生きている感じが良い。

ノスフェラトゥ 看板
『クイーンエリザベス』はSilent Ozuと日程が被っていたので見られなかった。

 と、その前に今日のミシガンシアターは企画二本立て。なんとオリバー・ストーン監督のトークショーが聞けちゃう。さすがに場内は満員でした。それにアメリカのお客様は盛り上がり方を心得ている。こういう熱気の中でなら気分よくおしゃべりできるというです。

 トークの様子はここで少し見られます。
 俺、ここに居たんだぜ。

 シアターオルガンというのはただのオルガンじゃないんですね。無声映画の音を奏でるために開発されたので、いわゆる音階だけでなく効果音を出すスイッチが沢山付いている。しかもその名の通りシアターのオルガンなので劇場機構の一部なので効果音が壁から聞こえてくる。演奏者は音楽を演奏しながら場面に合わせて効果音も出してゆくのです。これにはそれなりの習熟が求めらるんだろうと思いますが、観客としてはとにかく楽しい。ライブ感が物凄くあるのです。

シアターオルガン解説 ヒキ
シアターオルガン解説

シアターオルガン解説
解説文アップ

オルガニスト 写真
かつてミシガンシアターでオルガンを演奏されていたロバート・ホーランドさん


 日本では弁士と生演奏で無声映画の音は発達しましたが、こちらではシアターオルガンという発明をして無声映画を盛り上げていたんですね。

 最近とみに思いますが、無声映画を上映するにあたって一番気を使うべきは音楽です。弁士が関わるとどうしてもお客様の目も、主催の方の目も弁士にいきがちですが、やっぱり音楽です。無声映画上映は弁士がいなくても成立しますが、音楽が無いと(少なくとも娯楽としては)成立しません。時々「無声映画は無音で見るのが正しい」と仰る方もいますが・・・・・ねぇ?
少なくとも音楽の付かない無声映画の上映に友達を「これ面白いから見てよ」とは僕は誘えません。

 とにかく音楽は大事です。実際、今日の『吸血鬼ノスフェラトゥ』は明らかに無声映画を初めて見る方、初めてじゃないけれどたまたま見に来た方も大いに楽しんでおられました。所々で笑いも起きていたのも印象的。豪華な内装の映画館で、シアターオルガンの音楽で無声映画を見る。
初めて見た人が「また見たい」と思えるような環境を作る、とても必要な事です。 
シアターオルガンでムルナウの『吸血鬼ノスフェラトゥ』を見る至福の時間の料金がたった16$でした。これでもライブ演奏なので普段より入場料が大分お高いのよ。

 ちょっと調べてみたらミシガンシアターでのハロウィン無声映画上映は定番企画のようです。過去にはロン・チャニー主演の『オペラの怪人』や、ベンヤミン・クリステンセンの『魔女』が上映されています。シアターオルガンの音楽と『オペラの怪人』で共演出来たら弁士冥利ですな。来年のハロウィンで呼んでくれないかなァ。

いまちょっと調べてみたら日本でもシアターオルガンは日本橋三越ハービスOSAKAにあるんですね。

 日本橋三越のオルガンについての動画
 毎日演奏しているとは言っているけれど、効果音のキーは使ってないんじゃないだろうか。

 これちょっと企画を仕掛けたいなぁ。思いついた事を実行に移す前にブログに書いちゃダメね。でもウチの業界、良くも悪くも牧歌的だからな。

 ミシガンシアターでもシアターオルガンのCDが売られております。

シアターオルガン CD



|10/25| もやもやコメント(0)TB(0)
 ブルーバード映画という映画会社がありました。ここはユニバーサルの子会社で、アメリカの映画史では全く重要視されていません。アメリカの映画会社にも関わらず、アメリカの映画史文献では、こういう会社がありました、と書かれているにとどまる扱いです。研究者か、さもなけれぼよっぽどのマニアでないと知らないのがブルーバード映画。日本だとどこが近いかしら、エトナ映画とか全勝キネマと、僕の中ではそんなイメージ。

 ところがブルーバード映画さん、なぜか、どういう訳か日本でやたらとウケちゃった。海外の映画史家に「ブルーバード映画は『カリガリ博士』以上の影響力が日本映画のとってはあったんだよ」と言うと、まず信じて貰えませんが事実です。

 どうしてそんなに喜ばれたのかは分かりません。好んで舞台にされた農村風景が日本人好みだったから、作品のテーマに貧困が頻繁に取り上げられたせいで主な観客層だった低所得者の強い共感を得られたから、マートル・ゴンザレスに代表される女優が日本人にとってとても可愛かったから、等々の説が御座いますが確かな理由は分かりません。前述の通り米国映画史では重要な意味を持たない会社の作品故に本国でのフィルム保存も充分ではなく、といって主な配給先の日本では映画保存は絶望的状況です。作品が残っていない以上、片っ端から見て検証する事も出来ません。
 
ただ一つ言えるのは、当時の日本人、わけても日本の映画人が己の映画の理想形をブルーバード映画に見ていたという事です。

 11月に、ハーバードフィルムアーカイブで説明をさせて頂きます。
 ここではなんとブルーバード映画を上映したいとの打診、しかも希望の作品があれば(フィルムが現存していれば)僕の希望を通してくれると。

 僕は日本人ですからね、日本人の弁士ですからね、ブルーバード映画はいつか説明したいと強く思っておりました。作品の希望も聞いてくれるなんて飛び上がらんばかりに嬉しい提案です。
 選ぶ基準はひとつです。自分はなにが見たいか、に尽きます。日本の映画史に関わる人間にとってブルーバード映画を象徴する作品と言えば『Southern Justice(南方の判事)』ですが、これはどうやら残っていないらしい。ならば僕の心は決まってます『Shoes(毒流)』です。『毒流』も日本の映画人に感激を持って迎えられた作品ですし、なによりも晩年の生駒雷遊先生の説明の録音が残っている。これがまた良いのです。どうにかして一度でいいから生駒調で『毒流』を説明してみたい。ベンシ、いやさ映画説明者として至極自然な欲求であると思います。

 生駒調で語ってみたいなんて思う奴は現役ではワタシだけかもしれませんがね。

 そういう訳でハーバードでの二日間の上映のうち、一日は『毒流』を説明する運びとなったのです。本作は日本のフィルムセンターに約10分の断片が保存されているのも知っていましたし。
 それにしても「何が演りたいですか、それにしましょう」なんて提案が出来るのもハーバードフィルムアーカイブがFIAFに加盟して映画に対する真摯な態度と、他団体に対しての適切な連携を保ち続けていたからこそなのです。無声映画の発掘・保存・修復・上映なんてマニアの道楽だと思っている方もいるかもしれませんが、現在では各国が文化の歴史として世界中で連携しながらやっている事業なのです。とても広がりのある世界だと知って頂ければ幸い……ここで、へぇそうなんだって思うタイプの方はこのブログは読まないね。たまさか辿り着いたとしても、ここまで読まずに別のサイトに飛んじゃうね。

 話を戻しますとね今日ハーバードの公演情報をみたら上映時間が57min!ごじゅうななみん!!ふぃふてぃーせぶんみにっつ!!!日本にある10分前後のやつかと思ったら、なんと。
 オランダのフィルムアーカイブが近年デジタル修復したバージョンなのだそうで、こう言っちゃなんですが、俺に説明されるのを待ってたね、君(暴言)。※『毒流』は昨年のサンフランシスコ無声映画祭でも上映されています。
 
 57分バージョンでの上映がとても嬉しかったというお話でした。
 日本でもいつか『毒流』の57分版を演りたいな。
 ブルーバード映画及び『毒流』に関するウィキペディアの記述は、映画史を愛するKさんが熱烈執筆した物です。これもまた映画に対する真摯な態度と申せましょう。お礼申し上げます。

 
|10/24| 活弁コメント(0)TB(0)
 もうどうしようかと思う忙しさ。台本の準備に追われております。
 今週は金曜日にミシガンで『東京の合唱』を演って、土曜日にシカゴで『御誂治郎吉格子』を演ります。『東京の合唱』は今回初演、『御誂治郎吉格子』はずっと前(2004年)に飛騨高山で説明して、それからずっとかける機会が無くて、一昨年に赤坂で音和座さんと初共演の際に久々だったのですが、これは諸般の事情により師匠の台本そのままに、一切の変更なくやって個人的には不完全燃焼で、今年のお正月に神保町シアターで再演するってんで一から台本を書き直した作品です。なので師匠のバージョンの文字起しも含めれば、これまでに三回も台本を書いている作品なのですが、なんとした事でしょうかアメリカでもやる事になってしまって、しかも当初は上映候補に挙がって無かったので台本を持ってきいない。

 すわ書き直しかとオノノイていたのですが、天の助けがありました。
 『御誂治郎吉格子』は今年の五月、ドイツでも演った作品です。ドイツではドイツ語字幕をつけるとというので、事前に僕の台本のデータを送ったのです。もしかしたら……とPCを引っ掻き回しますがデータは無い。そんなに上手くいかないよね、台本書くべと思って筆箱を開けるとUSBメモリーが。

 そうなのよ、この中に入ってたの台本データ。
 上映の度に台本は洗い直します。つねに新しい台本で本番に臨みます。なんて言えたらカッコ良いんですが、現実問題としてなかなかそこまでやってられません。それに前回書いた自分の台本がそれなりに気に入っております。一から台本を書き直すと、そうさね12時間くらいはどうしたって必要ですしね。そんなこんなで台本を書くモチベーションが上がらずにいたので、データがあって助かったのでした。

 これで『東京の合唱』に専念できます。毎週やっているSilent Ozuも『東京の合唱』『非常線の女』『浮草物語』の三本を残すのみとなって、初演は『東京の合唱』だけ。ようやく、ようやく荒行の日々から解放される。やれ嬉し、やれ有難や、ドンツクドンツクと太鼓叩いて踊りながら喜んだので御座いました。

 それはそれとして銀行からデビットカードがまだ届きません。
 それなのにアカウントを作った銀行から無差別DMで「今ウチの銀行でアカウントを作ると、なんと○○$が貰えちゃう」って案内が届きました。作ってるっちゅーねん。
 もっともこれは銀行のせいでは無いようなんですね。宅配業者が持ち帰ってるようなんですね。なぜかというと、こっちではポストの中に名前を受取人の名前を貼っておくのが普通なのですが、ここで宛名と受取人が一致しないと大切っぽい郵便物は入れてくれない。当たり前っちゃ当たり前ですが、持って帰った事や、こういう物が送られてきたという通知は一切なし。なのでこっちは届いてないのか、持って帰られたのか、そもそも発送されていないのか分からない。
 いやね、ポストの中に名前を貼っておくなんて知らなかったからさ。海外生活のガイドみたいな本にも書いてなかったからさ、誰も教えてくれなかったからさ・・・・僕がイカンですね。良く見たらポストの中には前の住人の名前が書いてある・・・・僕がイカンですね。そりゃ届かないよ。

 みなさんもお気を付け下さいまし。
 ポストには名前を書きましょう。

 写真は牢獄にとらわれた重罪人バージョンのデトロイト空港のお土産屋さんのキティちゃん。
デトロイト空港のキティちゃん


|10/23| 活弁コメント(0)TB(0)
 きゃっほうオフだ。自由時間だ。
 修学旅行でもなんでも、楽しいのは自由時間ですよね。同じ場所に行くんでも自由時間だと楽しい気がいます。今日は半日自由時間です。アメリカに来て、アナーバー以外で初めて単に遊ぶためだけに取った時間です。これが嬉しくない筈はない。

 あらためて取っていないだけで、遊んではいますけれど。

 ワシントンDCは何のかんの言ってもアメリカの首都で御座いますね。だって日本人観光客がいるもの。今まで回った町は日本人学生はいても、日本人観光客は滅多におりませんでした。でも日本人観光客がいない場所でも中国人観光客や韓国人観光客は見かける機会が多いです。彼らは本当にアクティブだと感心します。
 アナーバーに限らず、ある規模以上の町には大抵アジア食材店があります。こうしたお店で我々は日本の食材を買うのですが、お店の経営者が日本人である事はまずありません。中国人か韓国人のどちらか。ですから僕らのような海外に暮らす日本人は細かいところで中国人や韓国人の皆様の行動力の恩恵に与っているんですね。日本人は海外で商売をするのがあんまり上手くないみたい。寿司屋も日本人経営のお店ってむしろ長持ちしませんでしょ。これもほとんど中国の方か、韓国の方がやっているものね。

 上記のような事を踏まえてみると、日本人観光客を頻繁に見かけるワシントンDCは都会なんだと、改めて感じずにはいられません。

 本日のお目当てはなんといってもスミソニアンを代表する博物館の代表格である航空宇宙博物館で御座います。

航空宇宙博物館
航空宇宙博物館

航空機と宇宙船関係を扱う博物館では世界最大の展示規模なんだそうで、やっぱり僕も男の子ですからね、こういうの好きなんですわ。
 入って早々に月の石が展示されています。しかも直接触れちゃう。

月の石1
月の石

月の石2
月の石を近くで

 パワーストーンとかあるじゃないですか。僕、アテにしない文化ですが、ああいうのが好きな方には月の石ってたまらんのではないでしょうかね。

 それから館内には幾つかのシアターがありまして、航空機の歴史を紹介しているのですが、なんとここには常駐の弁士が!

航空宇宙博物館 弁士1


 実は人形なのですけれどね。

航空宇宙博物館 弁士2

 机の中にスピーカーが仕込んであって、人間が古い映像を説明している態なんですよ。弁士は日本固有の文化と言われますが、このようにサイレントの映像を上映する時に人間の声で解説が付くのは至極当然の事でして、あんまり固有々々言ってると映像と語るという弁士の本質を見失う事にもなりかねません、と職業意識丸出しで映像を拝見。この映像と音声が入ったDVDが売店に売っていれば即買いだったのですが、そんなものは無く・・・かわりに今日のキティちゃん。

航空宇宙博物館 キティちゃん
キティちゃんは人類が宇宙で暮らすようになったら、最初に行くキャラクターかもしれない

 その他にも、こんな上映スペースがありまして、
航空宇宙博物館 映画館
古き良きアメリカの映画館風

 僕が覗いた時にはクララ・ボウの『つばさ』が上映されていました。さらにはアイマックス・シアターもあったりで映像関係も充実しています。
 幾つか展示も撮りました。

航空宇宙博物館 展示1
エントランス

航空宇宙博物館 展示2
鳥人間コンテスト(嘘)

航空宇宙博物館 展示3
宇宙で最初に歩いた宇宙服

航空宇宙博物館 展示4
零戦

航空宇宙博物館5
ボイジャー


 この航空宇宙博物館には別館があります。位置が離れているので行けなかったのですが、別館には広島に原爆を投下したエノラ・ゲイが展示されています。エノラ・ゲイに関連してこの博物館では原爆被害も含めての展示が企画された事があります。しかし退役軍人団体等の強い抗議を受けて展示は縮小、現在もエノラ・ゲイの展示に原爆被害についての記述はないのだと。

 このテの問題は本当に難しいですね。こう言ったら怒る人が居るかもしれませんが南京大虐殺も有ったり無かったりするじゃないですか。従軍慰安婦も居たり居なかったりするじゃないですか。どんな大事件も見る人の立場によって存在したりしなかったりするんですよ。原爆も爆撃だったり投下だったりするんでしょう。

 小難しい話は出来ないのでここまでにして、それ以外に行ったのは国立アフリカ美術館と、昨日仕事をさせて頂いたアーサー・M・サックラー・ギャラリーにもう一度でした。

 アフリカ美術館、面白かった。僕らの美の基準は日本文化と西洋文化の二本立てなのだと気付かされます。なぜってアフリカ美術館に展示されている品々が、こちらの基準の外にあるのよ。面白いし美しいんだが、評価がムズカシイ。難しくて写真は一枚も撮らず。でもワシントンに行った際にはご覧いただきたい場所です。

 たったこれだけ見たらもう帰る時間となってしまいました。
 おうちに帰るまでは遠足とはいえ、もう少し遠足を楽しみたい。でも仕方ない。

 飛行機は無事に離陸して一路デトロイトへ。
 さあ帰ろうと思ったらいつまで待っても飛行機のドアが開かない。機内放送でブリッジがインアプリケイトだとかなんとかで、違うゲートに行くからしばし待てとお達しが御座いました。こういう時、イライラする人があんまりいないのがアメリカの良い所。皆さん、しょうがないなぁって顔で笑ってる。日本人だと露骨に不快な態度をとる方がいますでしょ。ああいうのは嫌だね。どんなに怒ったってドアは開きゃしないのにね。
 かれこれ一時間ばかり機内に閉じ込められてようやく解放。ようやく帰れると思ったらバスが待てど暮らせど来ない・・・。一時間経過。右往左往した挙句、僕が乗るバスはバスターミナルに来ないバスらしいという事がさらに一時間後に分かりました。

 結局、帰宅は予定より三時間遅れになりましたとさ。
|10/22| もやもやコメント(0)TB(0)
 やってまいりました、ワシントン。
 実をいうと、何時に何処に行けばいいのか知らされていませんでした。でも本番は今日ですからね、これは何とかするしかない。なのでお電話ですよ。
 会話って面白いもので、言葉のやり取りだけじゃない。表情とか動きとを総動員して自分の伝えたいことを伝え、相手の発したいこと受け取る。ところが電話では正真正銘言葉しか使えない。
 要は僕の習熟度では二の足を踏む方法だって事です。

 それでなくても電話苦手なんです。日本語でも嫌いなんです。知り合いに電話かけるたびにドキドキしてるんです。おそらく電話一回当たり数秒は寿命を縮めていると思います。僕が死んだら死因は電話死になると思ってるくらいに電話が苦手なんです。

 そんな電話をします。

 結局は「自力で会場まで来られる?なら来て」てなもんでしたがね。
 会場の位置は何となく昨日確認済みでして、ホテルから至近。歩いて行ける距離。
 昨日の中華料理屋に行くよりはるかに楽ちん。

 到着いたしました。

 ギャラリー入口
ここが入口

スミソニアン 会場 表
もう一つの入り口

スミソニアン 看板
看板

 本日のイベントはこんな感じで紹介して頂いておりました。
 会場はFreer Gallery of Art and Arthur M. Sackler Galleryのホールです。

スミソニアン 会場1
会場客席側から

スミソニアン 会場2
会場 スクリーン側から

 博物館の仕事は嬉しいですね。空き時間に館内を見て回れるのが嬉しいですね。特にスミソニアンの博物館群は様々な趣味に対応しておりまして、東洋美術も近代絵画も、アフリカ美術も、航空博物館も何でもござれ。とてもじゃないが一日やそこらじゃ全部見るのは不可能なのです。特にワシ、あんまり機敏じゃないしね。

 本日の演目は『大人の見る絵本 生れてはみたけれど』でした。
 言わずもがなの名作ですが、残念ながら本日は生演奏ではありませんでした。やっぱり言葉が通じないお客様だと、生演奏じゃないと少しキツイですね。キツイというか「もっと楽しんで貰えるんだ、この空間は」と思ってしまいますね。今後の課題とすべきでしょう。今後というよりも、ずっと課題、これからも課題。

スミソニアン 告知1
告知用配布物表紙

スミソニアン 告知2
僕が写っているページ

 ちゃんと好評は頂いてますよ。お仕事はちゃんとやりますから。
 終演後にはお馴染みのQ&Aコーナーですが、今日は忘れられないお客様がいらして下さいました。その方が『第七天国』は知ってるか?と聞いてくるんです。弁士でボザーギの『第七天国』』を知らなけりゃ話になりません。当然知っております。そしたらそのお客様が「私の名前はDianeというの。『第七天国』にちなんでつけられたのよ」と。なんと嬉しい親御さんでしょうか。さらに大人になって日本人弁士にそれを話して下さるDianeさんも嬉しい方。こういう出会いって旅の良さですナ。

 その他にも今後につながりそうな方もお越し下さって、夢は膨らむばかり。
 ひとつ残念なのは、折角ワシントンでやったのにオバマさんがいらして下さらなかった事でしょうか。ホワイトハウスまでお迎えに上がるべきだったでしょうか。

 一度くらい、御前公演てやってみたいのよね。

 そんな戯言を思い浮かべつつ、終演後の食事までの時間を博物館散策に費やします。
 収蔵品の一部をご覧くださいませ。

スミソニアン 展示3

スミソニアン 展示1  スミソニアン 展示5  

スミソニアン 展示4

スミソニアン 展示7

スミソニアン 展示6

杯 スミソニアン

ガネーシャ

 撮ってるものが茶色っぽいものばかりですが、僕の趣味の問題です。もっと色んな物があって、その何十倍もの美術品が倉庫で整理、公開を待っています。

中庭
中庭

 スミソニアン 展示2
一番好きな展示品はこれでした 可愛い



 本日のお食事はトルコ料理のzaytinyaにて。お店開店の何周年記念メニューとやらを頼みましたが、これが多い。色んな品目を少しずつ食べられるテイスティングメニューみたいなもんだって話だったんですがね、一品当たりはたしかに量が少ないんだけど、品目が多い。次々と次の料理が出てくる。次って言葉を重ねちゃいたくなるほど出てくる。美味しいんだけれど、美味しいが終わらない。お腹は流石に限界になる。日本人とアメリカ人二人がかりで「多いね、これ」なんて笑いながらの食事は楽しゅう御座いました。
 今回の公演をコーディネートしてくれたTomさんは近日、鈴木清順についての論文をまとめるべく準備中との由。来年には調査の為に日本にもいらっしゃるそうです。オフィスには『ピストルオペラ』のポスターが飾ってありました。清順監督、海外で本当に人気あるなあ。

 いつもなら本番が終わったらいそいそ帰るのですが、ここはワシントン。なんと明日は半日お休みを頂いて博物館見物に充てるのです。やれ嬉し。

 ワシントン篇、もう一日続きます。
|10/21| 活弁コメント(0)TB(0)
 アメリカから日本語で公演案内しても限界があるかなと思いや、知り合いに教えるから情報頂戴というお声が多いので、近日中の公演予定をザックリとご紹介します。いま時間がないので本当にザックリ。というか、リンクはるだけなのですがご勘弁くださいませ。

10月21日 Freer Gallery of Art and Arthur M. Sackler Gallery(ワシントンDC)にて『生れてはみたけれど』
10月26日 ミシガンにて『東京の合唱』
10月27日 University of Chicago(シカゴ)にて『御誂治郎吉格子』
11月2日  University of Michigan(ミシガンにて)『非常線の女』
11月9日  University of Michigan(ミシガンにて)『浮草物語』
11月16日 Cleveland Institute of Art Cinematheque(オハイオ)にて『東京の宿』
11月18日 Harvard Film Archive(ハーバード大学)にて『毒流(Shoes)』『子宝騒動』
11月19日 Harvard Film Archive(ハーバード大学)にて『非常線の女』


今後ももう少し増える予定ですが、とりあえず近日中のものをまとめました。
 よろしくお願いします。
|10/20| 活弁コメント(0)TB(0)
 いよいよ売れっ子感が出てまいりました。
 馬車馬のごとく働いております。今日は向かうのはかのワシントンDCで御座います。アメリカの首都で御座います。空港からして首都的ですよ。

ワシントン レーガン空港
ワシントン レーガン空港

 あのですね、このところずっと学園都市を回っていたんですね。アナーバーが拠点だったんですね。ブルーミントンとかローレンスに行っていたんですね。どこも良い土地ですが都会では御座いません。ましてや、ほら僕って東京育ちじゃない?シテーボーイぢゃない?だもんだから都会が落ち着くんですよ。

 なんて思っていましたがね、正直言って都会怖いです。
 もうどこで何していいか分からないのよ。
 今回は空港に迎えが来るでもなしね、自分で勝手にタクシーを捕まえて予約のホテルまで行くのが最初のミッションですよ。これだって土地勘のない人間には緊張しますわね。ホテルの名前を言って通じなかったらどうしようとか思いますしね。あとタクシーのチップも自分の裁量で決めなきゃいけないですからね。運転手さんに露骨にがっかりされるのも嫌じゃないですか。かといって渡し過ぎると自分が露骨にがっかりしちゃうじゃないですか。

 ほんとにね、チップには慣れませんよ。

 先ほども申し上げましたがワシントンDCはアメリカの首都です。といっても自然に決まった首都ではなく政治的に駆け引きがあれやこれやあって決まった首都なんですね。中学生のテストでひっかけ問題として「アメリカの首都は?」というのがありますね。ここで多くの生徒さんがニューヨークと答えて×を喰らってしまうのです。同じような町にオーストラリアのキャンベラがありますね。こちらも政治的に決まった首都ですから、町の発展度合いで言えばシドニーの方が遥かに勝っているんですね。オーストラリア人や在豪日本人と話しても「オーストラリアの首都はシドニーだと思ってます」なんて言葉が出てきちゃいます。アメリカ人はそこまではっきり言わないかなと思いますが。

 ここで気になるのは治安ですね。
 これまでは町の真ん中に大学があって、大学がなくなったら町として機能しなくなってしまう場所を渡り歩いてきました。これらの都市は当然ながら治安が良い訳です。大学生が生活の中心になるのに治安が悪くちゃ話になりませんですから。

 ではワシントンDCはどうか?
 ちょっと調べてみますと、悪くもなく良くもなくといった感じらしいんですな。
 ワシントンDCはざっくり言って北西、北東、南西、南東の四つのエリアに分けられます。この中で治安が良いのは北西地域のみだとか。をいをい、それじゃ治安悪いんじゃないかてな風に思いますが、余所者がそれ以外の地域に行く用事は基本的にないんだそうで、当然ながら僕も北西地域の北西地域の会場で公演をする事になっています。

ワシントン 都会
街並み

 北西地区の中でも観光客が行くのは中華街、スミソニアン博物館を中心とした博物館群、それにホワイトハウスといったところでしょうか。あたくしも早速町歩きにくりだしました。

ワシントン 現代美術館
現代美術館

中華街はしっかり中華が食べられます。なんといっても中国人がやってるお店が多い。お店に入ると「Are you Chinese?」なんて訊かれたりします。それに「Japanese」と答えて物凄くがっかりした顔をされたりもします。店員も中国、お味も中国でアジアを満喫してお会計を済まし、いい気分で外に出ようとすると物凄い怖い顔で「チップ!!」って言われます。そういう所だけアメリカシステムか君たち。

あと町中に映画館があります。いやアナーバーにもあるけれど。ミシガンシアターよりも、もっと当たり前の映画館。なんてったって上映されている映画館が『パラノーマル・アクティビティ4』ですからね。あと『リンカーン』の巨大な看板がかかっていました。都会だ。

ワシントン 映画館
映画館

 なにが凄いってね、流しのタクシーが走ってるんですよ。これには感激しましたね。

 早い話が、東京はデカ過ぎるって事ですね。

 博物館は5時過ぎまでの所が多いみたいです。ホテルに着いたのが2時過ぎ。散歩したらもう閉館時間で御座いました。その辺りは明日明後日のお楽しみといたしましょう。

にしてもこの日は夕日が綺麗でした、実に。

ワシントン 夕景
ワシントンの夕景
|10/20| もやもやコメント(0)TB(0)
 ミシガン大学でのSilent Ozuもなんと折り返し点を過ぎてしまいました。
 毎週一回小津作品の説明はなかなかの重労働でありまして、はっと気づくと一週間が過ぎているといった塩梅であります。名作を毎週なんて弁士としては本当にありがたい状態で、これを上回るには無声映画時代のように毎日上映しかないんではないかと思う次第です。

 無声映画時代でなくてもありましたけどね。東京キネマ倶楽部という場所が。現在、僕と同程度のキャリアを持つ弁士のほとんどがあそこに複雑な思い出を持っているでしょう。僕もありますですよ、フクザツな思いが。

 ありました、と書きましたが東京キネマ倶楽部はまだ存在しています。あの空間はもともとバブル全盛に大層流行った九段度キャバレーで、不景気と共に空き空間になってしまっていたんですね。そこを再稼働させるために無声映画の常設館、もっというとシアターレストランを作ろうという驚天動地の企画が立ち上がったのが10ン年前。一応は華々しくスタートしたものの、あっという間に閑古鳥。僕は映写技師として働いていたので多少スタッフ会議みたいなのを見てるんですが、まあどうして客が来ないかの責任を各セクションの担当者がお互いに……ね。
 
 今にして思えばロクな弁士が居なかったんですわね。オーディションの急ごしらえの弁士が毎日出てたってお客さんが来るはずがない。来たってリピートするはずがない。今ならもう少しマシな興行が打てるかもしれません。いや、変わんないか。

 ちなみに東京キネマ倶楽部で使っていた16mm映写機(今もあるんじゃないかしら)はコマ数調整も出来るなかなかの良い機体でした。サイレントスピードで上映した事なかったけど。

 なにが言いたいかというと小さな空間で良いから連日無声映画が上映される劇場が都内にあったら素敵だな、という事ですね。

 そんな回想に耽っておりますが、さて今日は二本立て。しかも小津とチャップリン。こんな豪華な二本立てはそうそう御座いませんぜ。上映作品は『突貫小僧』と『The Kid』です。
 『突貫小僧』は長らく失われてしまったと考えられていましたが、近年発掘され我々が見る事が可能になった作品です。近年たってそれなりに前だけど。余談ですが僕は突貫小僧こと青木富夫さんには会った事が御座います。会ったというか、青木さんと会っている師匠の傍にいただけですが。とにかくこの頃のAnn Arborにおける突貫小僧の任期は大したもので、今日も「あの子が主演の映画だから見に来た」なんて方も居るくらい。音楽はChris McNamaraさんの電子音楽でした。電子音楽と『突貫小僧』の組み合わせは滅多にないでしょうから、実に貴重な場でした。なんというか突貫な雰囲気と言うか。

 もう一方の『The Kid』はフィルムに焼き込まれたチャップリン作曲の音楽と共に上映です。今ではチャップリンの後期長編作品は権利がはっきりしましたので、上映には正式な手続き方が御座いますが、東京キネマ倶楽部時代はその辺が世界的に曖昧であっちこっちでチャップリンが上映されていたものです。その時期に師匠の説明とカラード・モノトーンさんの音楽で見た『街の灯』は忘れらぬ名演として僕の心に刻まれておりますが、その後は権利がはっきりした事でマツダ映画社所蔵の16mmでは上映が出来なくなり、近頃はトンと澤登の説明でチャップリンを見る機会が無くなったのであります。そんなこんなで、実は私、チャップリンの短編は結構させて頂いてますが、長編とくると丸っきりで、ましてや『キッド』『街の灯』『黄金狂時代』あたりの代表作は神々しくて手も出せない状況でした。それが今夜、説明させて頂けるのですからミシガン大学様々です。

 小津も良いけど、チャップリンもやっぱり素晴らしい。
 見に来てくれた小学一年生の女の子が笑ったり泣いたりしながら見てくれたそうなので言うこと無しですね。

 チャップリンの長編作品、たまには演りたいなぁ……。
 チャップリンには言葉は不要、は正しいのですが、言葉があった方が子供は楽しめるんじゃないかと。小学一年生には少し言葉で補助してあげてチャップリンの長編を見せる事はとても良い事だと思った夜で御座いましたよ。
|10/19| 活弁コメント(0)TB(0)
 昨夜の興奮冷めやらず、と言いたい所ですが、それなりに落ち着いてお目覚めです。
 朝四時起きだったので寝ないでいようかと思いましたが、全く寝ないのもつらいので一時間ばかり仮眠。

 今朝はタクシーで空港までご帰還です。
 このタクシーの運転手が朝から元気なのよ。
「俺はカンザスが嫌いだ。ここはローレンスだ、ガハハ」
「俺はジャズが好きだ。この(ラジオの)チャンネルは駄目だ、ガハハ」
「日本は交通渋滞が凄いんだろう?おっと対向車線にトラックだ、渋滞になるところだ、ガハハ」

 おっちゃん、今四時だ、朝の四時だ。
 あとは飛行機乗って、バス乗って、帰って、寝て、明日の準備してという大したことのない一日。
 でも何のトラブルもなく飛行機に乗れたの、この旅で初めてかもしれない。
 バスも予定より予約の車より一本早く乗れそうだったので、運転手さんに掛け合ったら乗せてくれました。アメリカのこういう所、好きね。

 あ、ローレンスの夜明け前の星空、綺麗でした。

 写真は今日のキティちゃん。

三匹のキティ
三匹が切る

|10/18| もやもやコメント(0)TB(0)
 朝です。昨日は降りる空港を間違えるという空前の失敗をやらかしました。
 前回のインディアナでは財布を落すという失敗をやらかしました。
 こういう所に澤登の遺伝子を感じます。

 さて、本日はカンザスでの公演日で御座います。明日は朝が早いので関係者とのお食事は今日のお昼となりまして、どうやらこうやらお喋りをさせて頂きました。昼食の後に一度大学に行くことになりましたが、一緒に行動するメンバーにアメリカ人がいないという事態になったのです。僕とフランス人と中国人。主な話題は食事の事。
「アメリカの日本料理は日本料理じゃない」
「アメリカのフランス料理はフランス料理じゃない」
「アメリカの中国料理は中国料理じゃない」
 と、三人で意見を確認し合ったのです。
 考えてみりゃ当然ですわね。日本人が中国人を中華料理屋に連れて言ったら食べ終わる頃に「もしかしてこれ、中国料理?」と聞かれたなんて話も御座いますから。どこに国でも、その国の人に合わせてアレンジされるもんです。

 本日の会場はここ、Helen Foresman Spencer Museumのオーディトリウムです。

ミュージアム
カンザス公演会場
 
 ミュージアムです。こういう場所で出来るのが嬉しくてね。ついでに展示もみちゃったりしてね。

キリスト像
キリスト像

仏像
仏像

 それで空き時間には町も見て歩いちゃったりしてね。のびのびしちゃいますね。のびのびしちゃうと言えばね、カンザスは温かいのですよ、まだ。秋なのよ。アナーバーはもう霜がおりてるってのに。こういう部分でアメリカの大きさを感じますな。

秋
秋の日差し

 アナーバーも田舎っちゃ田舎ですが、カンザス大学のあるローレンスもなかなかどうして時間の止まった町です。どのくらい止まっているかと言うとゲーム&DVDショップの通りに面したディスプレイがこれだもの。

 もっともかなり大きい力作なのでバラすのが勿体なくてそのままなのかもしれませんが、にしたって、あなた。のどかな町でしてね、メインストリートでこんな程度です。町中には古本屋が一軒、絵本中心の新刊書店が一軒ありました。アメリカの地方都市では普通の新刊書店は壊滅的な状況だそうです。アマゾンの影響は凄まじいらしいですね。ましてやこれからは電子書籍がもっと普及するでしょう。小さな本屋さんがやっていくのは至難の業と言わざるを得ません。そんな理由で残っているのが絵本中心か古本屋なんですね。
 ちょっと映画のデジタル化問題にも通じる現象ですな、これは。

 ちなみに古本屋さんには猫が居ます。招き猫ってほど働いてません。お店の中でずっと寝てます。そして平気で触らせてくれます。日本を離れてから一ヵ月半、久しぶりに猫と触れ合うのでした。

古本屋の猫
猫、眠そう


 もうウチの猫、俺の事忘れてるだろうな……。

 夜は『生れてはみたけれど』の説明でした。町中はおろか、博物館の中にも今日の告知を見かけなかったので、お客様はいらっしゃるのだろうかと少し不安でしたが、ちゃんと来てくれて一安心。あとアメリカは質疑応答でちゃんと質問が出るのでやりやすい。感謝であります。

質疑応答
質疑応答。アメリカでは質疑応答中にお客さんはバラバラ帰ります。

名刺交換
名刺交換の図。やらせ写真じゃありません。


 今回の渡米で感じるのは、様々な日本映画研究の先生と会うと大抵の方が「澤登さんとは会った事があります」とか「澤登さんにはウチに大学に○年前に来てもらった事があります」とか「澤登さんの公演を日本で見たことがあります」と仰ること。皆さん、ちゃんと抑えるべきものを抑えて研究されているのだと、改めて感じた次第。そして、これだけ研究者の間で知れ渡っている澤登翠を、やっぱりウチの業界は活かしきれていないな、という事。

 絶対にもっと盛りあげるチャンスがこれまでに何度もあったはずなんですよ。それを今後どうやっていくか、模索しなければなりません。

 終演後は皆さんと軽く食事をして一休み。
 何しろ明日は4時起きだもの。
|10/17| 活弁コメント(0)TB(0)
 旅日記らしくなってまいりましたね。
 今日はカンザスに向かうのです。前回はタクシーでしたが、今回はバスで御座います。
 と、その前に急遽用事が……、朝イチでソーシャルセキュリティーナンバーを取りに行こうという事になりました。ようやく書類が揃ったのですね。受付事務所に行くと番号札を取って、呼び出されるまで待機、呼ばれたら職員に書類を渡して口頭で確認事項を伝えます。まったく日本のお役所と同じですね。目を引いたのは待合室で流されている解説ビデオでしょうか。モロにスタートレックがモチーフの宇宙人がここでどんな事が出来るかを解説してくれます。宇宙人は男女ペアなのですが、男性の方が伊武雅刀に毛をはやしてエンタープライズ号の制服を着せたような、どうにもこうにも味わい深い方で御座いまして、目が離せないのですね。
 あんまり待たされると空港へ行くバスが来てしまうのではないかと冷や冷やしておりましたが、それを上回るアメリカ雅刀の怪演に僕の心は鷲掴みで御座いました。ところでアメリカで企業PVやお役所のポスターを見ると高確率で東洋人が使われています。日本だとお役所のポスターにわざわざ白人を起用する事は少ないと思いますが、こっちでは東洋人が普通に使われている。そのくらい人種が入り乱れているんでしょう。もっとも日本では都知事選投票呼びかけのポスターにAKB48の娘さん方を使ったり、町おこしに萌えキャラをつかったりしますから、これはこれで別の入り乱れを感じますが。

 手続きそのものは10分程度で終了。二週間以内にソーシャルセキュリティーカードが届くはずだ、もし届かなければまた来るなり電話するなりしてくれ、という紙を貰って事務所を後に。ちなみにAnn ArborのSSN事務所では待ち番号発見器に「ここで番号札を鵜受け取って下さい」っぽい事が日本語でも書いてありました。これなら英語が苦手な方でも安心ねと思いきや、日本語のフォローがあるのはここだけです。小さな希望を与えてから突き落とすなんてなかなかやるじゃねえか、SSN事務所。

 そんな作業をこなしてから無事にバスに乗り込んで空港へ。

 今回は直行便だから楽ちんね。なんて思ってた訳ですよ。

 飛行機はほぼ時間通りにデトロイトを離れてカンザスへ。
 フライトはあっという間です。今回はカンザス大学の方が空港まで迎えに来てくれると言うのでお電話をしますと「あれ?もう着いたんですか?」と。「はい、予定より早く着いたみたいですね」と僕。
 実際到着は早かったのです。早すぎたと申し上げても良い。
 「じゃあすぐに空港に行きます。一時間くらいかかっちゃうけど大丈夫ですか?」
 おやおや、そんなに時間がかかるんざますか?でも待ちましょう。というのであっちへウロウロこっちへウロウロ。この時に様々な看板をしっかり見ていれば良かったのです。

 小一時間後に電話の着信。「着きました。どちらにいらっしゃいますか?」
 「手荷物受取におります」
 なんてやりとりをしますが、会えない。お迎えの方が影も形も見えない。しかもどうにも話が噛み合わない。お互いに電話を切ったりかけ直したりして会おうとしますが、やっぱり会えない。『愛染かつら』か俺は。なんて思っていたら、妙な文字を見つけたのです。

 C H I C A G O

 ここはシカゴだァァ!!!!
 節子、ここカンザスちゃう。

 フライト予定は確かに直行便でした。チェックインの時に発行されたチケットもそうでした。おそらくそれから出発の間に航路変更にでもなったんでしょう。しかも前回のインディアナ行きでしつこいほど来た確認の電話も来ない。でもシカゴだ。

シカゴのパンフ
空港内に設置されている観光ガイド群


 という訳で、もうカンザスに着いていなければならない僕はまだシカゴにいます。
 驚いちゃったね、これは驚いちゃったね。電話口でペコペコバッタよろしく頭を下げて飛行機の手配に向かいます。嗚呼、携帯電話があって良かった。そしてシカゴからカンザス行きの飛行機の空席もあり、何とか乗り込みます。

 待合所ではポケモンが放送されていました。ニャースの笑顔が今の僕にはキツイデス。

ニャース
シカゴに着いたのでニャース

 なんかね変だとは思ったのよ。でも直行便で降りたら到着だと思うじゃん?しかしこういうトラブルで動じなくなったなぁ、俺。初めての海外公演でクロアチアに行く時なんてミラノでの乗り換えでドキドキだったのに。

 午後三時にはついているはずのカンザスに到着したのは午後七時半で御座いました。
 到着日講演じゃなくて本当に良かった……。
 空港から大学やホテルのあるローレンスまでは車で約一時間。
 ごめんなさい、本当にごめんなさい。

 こんな僕に宿をあてがって下さって本当にありがとうございます。
 
 車の中で聞いた話ですが、カンザスはバーベキューにこだわりがあるんだそうです。アメリカにはバーベキュー大好き人が多くて量販店に行くとバーベキューコーナーがありますし、アメリカ生活ガイドブックなんかを読むと「アメリカ人と親睦を深めたいのならBBQパーティを企画しちゃおう」みたいな事が書いてあります。
 しかし!カンザスのバーベキューはそんじょそこらのバーベキューとは違うのだそうです。どう違うのかはカンザスのバーベキューパーティに参加した訳ではないので分かりませんが、とにかくカンザスっ子はバーベキューにこだわりを持っているそうです。関西人のお好み焼きみたいな意識なんでしょうかね。

 明日の本番に備えて寝なければなりません。観光をしている時間は無くなりました(自業自得)。
 
|10/16| もやもやコメント(0)TB(0)
 忙しい、忙しいと申し上げておりますが、実際にどれくらいかと言いますとこのあと一週間では10月17日にカンザスで『生れてはみたけれど』を演って、19日にミシガンで『突貫小僧』とチャップリンの『The Kid』を演って、21日にワシントンでもう一度『生れてはみたけれど』を演ります。次の週はミシガンで『東京の合唱』を演り、翌日にシカゴで『御誂治郎吉格子』を演るのです。もうしっちゃかめっちゃかなスケジュールなんですね。

 とか言いながら、実はこの後にさらに地獄が待っている事を11月27日の僕は知っているわけですが、それはさておき大変な慌ただしさで御座いましたよ。

 『生れてはみたけれど』は台本が出来ているら良いとして、問題は『突貫小僧』と『The Kid』です。『突貫小僧』はずっと前に新・文芸坐さんで演らして頂いた事がありますが台本がちょっと気に入らないので新たに書き直し。でもこっちで練習用のDVDが手に入らないのでYouTubeで見ながら台本制作。なんつーか、便利な時代になったものです。
 YouTubeで思い出しましたが、ミシガン大学のサイトでも無声映画が無料でがっつり見られます。日本映画はないと思いますが、時間があったら覗いてみるといいかもしれませんよ、映画ファンの皆様。

 『The Kid』は今回が初演。チャップリンの長編は権利の関係がありまして、日本だとやる機会が激減しております。現時点で日本での上映を管理している角川映画さんの方針でチャップリンの長編作品は映画祭形式じゃないと(基本的には)貸し出して頂けません。ちょっとこの方針に個人的には違和感があるんですが、現状そうなので我々のような単発系お仕事の人間ではチャップリンの長編は説明するチャンスがないんですね。アメリカでは貸し出し条件が日本とは違うので、今回上映できたという次第。
 日本文化である弁士を日本では出来ずに、アメリカでは出来る。ことチャップリンに関しては、ちょっと不思議な状況なんですね。

 上記の理由から僕はチャップリンの長編作品をやった事がありません。『街の灯』も『黄金狂時代』も、そして『キッド』も。今回はそんなチャップリンが演れるのです。緊張半分、嬉しい半分。なにしろ無声映画を知らない人もチャップリンなら分かるという、無声映画を象徴する存在のチャップリンです。短編時代に恐るべき完成度を誇り、圧倒的に語りを拒んでくるチャップリンです。台本を書くのにも力が入ろうという物です。

 『突貫小僧』と『The Kid』、なんて素敵な子供映画二本立てでしょうか。このプログラムに感心しましたね、アタシャ。

 それはそうと、こちらはもうハロウィンムードです。日本だとハロウィンで盛り上がる人ってかなり頑張っちゃってる感じですが、こちらはどうなのか?これも楽しみです。もっとも日本でも六本木は全力でハロウィンしてますが。昨年、夜の六本木を二人のフリーザ様が並んで歩いていたのと、明け方の都営大江戸線で疲れ切ったピカチュウが立ちつくしていたのは忘れられません。
 
 我が家も一応アメリカらしく。

かぼちゃ
ジャック・オー・ランタンとはあんまり言わないらしい

かぼちゃ2
別角度、頭にある脳髄を掘り出した痕跡がホラー
|10/15| 活弁コメント(0)TB(0)
 髪が大分伸びて来ました。
 出発前に切ったものの、あれからもう一か月を超えまして、もう大分。

 正直、こちらで髪を切るのはちょっと怖気づきます。なぜといってあなた、私は日本でも店員さんに希望を伝えるのが苦手なんですよ。

「もみあげどうします?」とか聞かれても、どう答えていいか分からない。雑誌や何かをみて、こうなりたい・こうしてほしいというのも一切ない。つまり日本とかアメリカとか関係なく髪を切りに行くのがおっくうなのです。なのですが、切らないとそれはそれで大層髪が邪魔なのです。
 僕は小中学生の頃、いや高校時代も、もしかしたら大学時代、さてさてその後も結構長い間、髪は短く切りゃ良いもんだと思ってました。だって短ければ、その分次に切るまで間があるじゃないですか。だもんですからワタクシの髪型はいわゆるスポーツ刈りだったんですね。スポーツが苦手なくせに、髪型だけはずっとスポォツでした。
 ところがですな、固いのよ、アタシの髪。針金みたいなのよ。だから一番短い時期は良いんですが、ちょっと伸びてくると強烈な寝癖が付いちゃうんですね。ちょっとやそっとじゃ直らない。小学生の時なんて、後ろから見ても寝癖で片岡君だと分かる、なんて言われたもんです。それは別の問題もある気がしますが。
 ただ流石に人前に出る仕事で寝癖はあまり良くないので、床屋さんに相談したら、少し長めにしておけば良いんじゃないかと言われまして、それからは少し長めなんです。僕の髪型は基本的に床屋さんの言いなりなんです。

 ただし長いと問題もありまして、やたらと目にゴミが入りやすい。毛先に引っかかった埃が目に入っちゃう。アタシ、コンタクトレンズだから痛ぇのなんの……。

 とまあ、そんなもろもろの薄っぺらい事情も御座いましてこっちで髪をどこに切りに行くべきかを考えているのです。なんだかね、ネットで調べるとこっちの床屋さんは東洋人の、ことに針金系の髪質には慣れてないので扱いがイマイチだそうなんです。とりあえずバリカンで刈っちゃえみたいな床屋さんも結構いるらしくて、日本人は問答無用で角刈りにされる店もあるとかないとか。
 ちょっとね……角刈りはね……。
 そんな部分で悩みながら日々を送っております。今週は忙しくて台本にかかりっきりなのを良い事に、どの店に行くかという決断を先延ばしにしております。

 僕、夏休みの宿題は終わらせないで二学期を迎える派でした。
|10/14| もやもやコメント(0)TB(0)
 バタバタした一夜が明けました。
 昨日は本当に疲れた。主に気疲れ。
 でも不思議なものでしてね、トラブルがあった時の方が芸は却って出来が良かったりします。覚悟が出来るんでしょうか。
 昨年オーストラリア巡業をした時に、お金を盗まれたんですね、5万円ばかり。その日の夜の出来は実に良かった。そういうものかもしれません。

 財布はFedExで送って下さるとの事。週明けには届くはずと言ってますが、実は火曜日からカンザスなのです。月曜日中に着くか、ちょっと心配ね。でないと文無し道中ですわ。

 ここミシガンで小津作品をすでに5作品演らせて頂きました。常連のお客様も出来、毎週金曜日が楽しくて仕方ないのです。しかし僕は大切な事に気付いてしまったのです。小津の無声映画に欠くことの出来ない役者と言えば突貫小僧です。彼はSilent Ozuの常連さんの間でも大人気で、突貫小僧が画面に出て来ただけでお客さんが笑い待ちの態勢に入っているのが分かります。
つまり、この数週間でミシガンにおいては片岡一郎の名前より突貫小僧の名前の方が有名になってきている。現役の芸人が80年前の子役に負けている。これは由々しき事態です。まあしょうがないけれどね、突貫小僧が相手じゃかないっこない。

今日のお仕事は台本書き。なんといってもこれから二週間が怒涛のスケジュールなのです。作業の合間を縫ってニュースをみると圓菊師匠の訃報、莫言先生のノーベル文学賞受賞なんかが飛び込んできます。圓菊師匠は僕が初めて国立演芸場に行った時のトリでした。莫言先生はP.E.Nフォーラムでご一緒させて頂いた事があります。あのとき僕はアルバート・ウウェント先生というサモアの作家さんの小説『サラブレッドに乗った小悪魔』を柳下美恵さんのピアノと、里中満智子さんの絵に乗せて朗読し、莫言先生の『秋の水』は神田松鯉先生が朗読されたのでした。
時代は流れてゆきます。
僕はちゃんと流れているでしょうか。

写真は今日のキティちゃん

キティ 10・13
CVS(コンビニエンスストア)にて捕獲
|10/13| もやもやコメント(0)TB(0)
 インディアナ大学での『東京の宿』はどうやら好評で終えられたようです。
 さて今日は金曜日、ミシガンでSilent Ozuの日なのです。嗚呼、我ながらなんという売れっ子感。ずっとこうやって暮らしていきたい。

 という訳で、早々にミシガンに戻らねばなりません。夜も明けきらない内に起き出して朝食です。食堂に行くと誰も居ません。パンやらヨーグルトやらが並べられているのが、かえって物悲しいです。一人でもそもそと朝ごはんを食べていると、スタッフの方が出てきました。
「どっから来たの?」
「日本から」
「そう!アタシも日本に行ったことあるわ!right は右って言うんでしょ?」
「そうそう」
「Yes!」(とガッツポーズ)

 上機嫌でおばちゃんは去っていきました。朝から元気ね。
 さて、空港まではまたあの長い車に乗っけて貰えるそうです。親分モード再開、と思いきや到着した車には先客が二組。あいのりです。そうよね、そういうもんよね。却って安心しましたが。

 帰りはシャーロット経由。
 ここで問題発生。鞄の中に財布が な 
 落としたか?忘れたか?さすがに動揺でくらくらしますが、ここはもうシャーロット。
 仕方ないのでホテルに電話。片言で「お前ンとこに財布忘れてないか?あるとしたらホテルくらいなんだ」と伝えますが埒開かず。でも今夜はミシガンで『落第はしたけれど』を説明しなきゃならない。したけれど、じゃねえよ、落第だよお前。
 そもそも空港からどうやって会場まで行ったものか。アーメッド君の名刺も財布の中です。しかも現金がない!
 とりあえず家人に連絡をして、タクシー代を持ってミシガン大学で待ち構えてもらう算段を付けます。これで空港から会場まではたどりつける。後は……と思っていたところに、お馴染みアメリカ合衆国からの電話。インディアナ大学の方に財布が見つかったと連絡が行った模様。やれ嬉し、これで何とかなった。

 飛行機はシャーロットからデトロイトへ。
 空港でタクシーに飛び乗り一路会場へ、と思いきや運転手がミシガン大学への道を知らない!をいをい、空港からアナーバーへ定額で走るタクシーがミシガン大学へ行けないだって?正確な番地を行って貰わないと道が分からないだって?空港でタクシーに乗る客がアドレスを把握してない場合なんていくらでもあるでしょうに。何でもいいからアナーバーへ迎えと支持を出して走り出して数分、またしてもアメリカ合衆国から電話です。

「アーメッドだけど、今どこ?」

 ……今日は色々話が通じてたのね。

 頭のなかはしっちゃかめっちゃかの状態でミシガン大学に到着。売れっ子は財布を落してもいつも通り芸をしなければなりません。今夜は先ほども申し上げた通り『落第はしたけれど』です。音楽はStephen Warnarさん。先日『コック』をご一緒した、ミシガンシアターのオルガにストです。
 実は『落第はしたけれど』はちょっとミシガン大学と関係があるのです。小津作品は作中に洋画のポスターがちょいちょい使われますが、本作ではミシガン大学のタペストリーが斉藤達雄達が暮らす下宿の壁に貼られてるのです。まさか小津も80年以上経ってミシガン大学でこの作品が上映されるとは思っていなかったでしょう。その一点だけでも、ここで『落第はしたけれど』を演れて良かったと思うのです。
 Warnarさんの演奏は流石に手慣れたもの。無声映画を見慣れているなと感じられる安心の音楽です。ちょっと柳下さんとスタイルが似ているなと思ったら、Warnarさんてば『落第はしたけれど』の為に、昔ミシガン大学で演奏されたり歌われていた音楽の譜面を見つけてきて作中に織り込んでくれていたのでした。そういう作品に対するアプローチが柳下さんに似てるのね。無声映画の音楽をやる方の中には自分は一切リハはしない、事前に作品も見ない、なんて豪語する方もいらっしゃいますからね。そんな中、たった一回の為に古い楽譜を探して下さったWarnarさんに感謝であります。

 あ、財布ね。財布は送り先の確認をメールでしてから送ってもらう事になりました。
 良かったね。
|10/12| もやもやコメント(0)TB(0)
 髭剃りを忘れて来たんですね、家に。
 日本だとホテルに歯磨き、髭剃り、寝間着、スリッパが標準装備のところが多いですが、海外のホテルにはほとんどこういう物が備え付けてありません。なので僕はその辺の物を持っていきます。ホテルの部屋の中では雪駄でペタペタ歩いています。

 ところが忘れたんですね髭剃りを、ついでに歯ブラシを。
 どっかで買えば良いやと思っていたのですが甘かった。インディアナ、店が無い。無い訳じゃないんです、とても少ない。しかも今日は本番ですからね、まさか髭面でお客様の前に出るわけにもいかないですよ。

 インディアナ大学の周り、ブルーミントンはそういう場所だというお話でした。
 のどかで良い町だけどね。

町にある劇場
町にある劇場

町 1
町の景色1

町の景色2
町の景色2

町の景色3
町の景色3 ミシガンとの気温差を実感 




 そうそう今日は本番なんですよ。午前中は髭剃りを求めて大学の中にも一足先に入りましたがね、良いところでね、お城みたいなんですな。ヨーロッパには実際にお城をそのまま大学として使っている所もあります。ボン大学は典型例ですが、インディアナ大学はどうかというとヨーロッパとは事情が違うとの事。
皆さんご存知の通りアメリカは歴史の浅い国です。でも成長は著しい。そしてヨーロッパに独特の憧れと劣等感を持っている人もいます。ちょっと昔のアメリカ人は「俺たちにだって城は作れるんだ!」と言うため、「ヨーロッパ人に負けてないぞ」と言うためにお城のような建物をいくつも作ったのだとか。インディアナ大学はそんな建物なのだそうです。
 文明開化以降、日本人が夢中になって洋風建築をやったのに近いのかもしれません。ましてやアメリカ人にとって、ヨーロッパは自分たちのルーツですから想いは良いも悪いも入り混じって複雑なのでしょう。

インディアナ大学1
インディアナ大学1

インディアナ大学2
インディアナ大学2

小川
大学敷地内に流れる小川 由緒ある小川らしい


そしてそして、インディアナ大学の持っている映像ホール、ここの見事な事!
しかも上映ラインナップが本当に素晴らしい。これが大学の設備かと思うと羨ましくて仕方ありません。この劇場、近年たてられた物ですが、ちゃんと35mm映写機が備えてあります。一般の映画館がフィルム映写機撤廃を条件にデジタルプロジェクター導入の補助を受けている事態を考えれば、教育機関での35mm上映は今後、重要な意味を持つかもしれません。

インディアナ大学の劇場
劇場外観

インディアナ大学劇場 客席
劇場客席

展示ポスター
展示ポスター1

展示ポスター3
展示ポスター2

展示ポスター2
展示ポスター3

パンフレット表紙
パンフレット表紙

パンフレット中身
パンフレット中身 復元版『月世界旅行』と同じページの感激


 本日の演目は『東京の宿』、シンポジウムの時が初演でしたのでインディアナは早々の再演です。ありがたい限り。
 興味深かったのは上映後の質疑応答でした。今回の渡米公演では質疑応答には通訳を付けて頂くのですが、インディアナでは大学院生の方々が通訳をしてくれます。しかも院生は一人ではありません。なんと三人。しかも全員女性。あたしは三人の娘さんに囲まれて、よってたかって訳されて質疑応答に応じるのです。これはとんだ王様気分。
 なかなか面白いやり方だと思いました。おそらく通訳の学生さんは、この企画の先生に目をかけられている方々なのでしょう。そしてこうした実践の場でさらに経験値を上げられる仕組みなのです。見どころのある生徒さんにはどんどんチャンスをやる、実に良い学校ではないですか。

『東京の宿』リハ中
『東京の宿』リハ中



 もしかしたら罰ゲーム的に「お前、あの日本人の通訳な!」とかいう事かもしれませんが……。

 お仕事が終わったら皆で楽しくお食事。
 だから旅の仕事って好きよ。
|10/11| 活弁コメント(0)TB(0)
 アメリカは広い国だねぇ。
 ちょっと違う町で仕事ってだけで飛行機ですよ。なんにしても飛行機は事前に時間と手間がかかります。空港には早めに着いていなくちゃいけませんしね、乗るには荷物チェックを受けなきゃなりませんしね、乗ったら乗ったで定刻出発ってあんまりないですしね。
 私の住まいはAnn Arborの外れに御座います。空港までは車で30分程度。
 という事は、自宅を出てから飛行機が離陸するまで悠々3時間くらいかかるのね。んでもってフライト時間は一時間半だったりするのね。なんだか不思議ね。

実をいうと、少し緊張してました。初の米国巡業ですもの。こまかいやり取りも英語でしなきゃならないかもしれないんだもの。

 今回の仕事先はインディアナ大学。
 インディアナちゃんてば凄いんですよ。なんと自宅から空港までのタクシー代も出してくれる!そんな待遇良くて良いのかしらと思いますよね。日本じゃ、そんな扱い受けたことないですよ。空港へはバスが出ています。片道12$、事前予約をすれば往復22$でとてもお得。で、も、今回は足代が出るのでタクシーです。

 早朝、つまり朝7時、タクシーが来る予定の時間です。
 一昨日霜がおりましたからね、この時間だと結構寒いんですよ。
 息が白い。
 タクシーが、こない……。

 いきなりの躓きか?俺のアメリカ巡業はスタートラインでコケるのか?と不安になりましたが、10分ほど遅れてタクシーがやってきました。タクシーまでミシガンタイムかね。運転手はアーメッド君です。「道に迷っちゃった」と笑ってました。こういうときに「No problem」としか言えない日本人。実際、大した問題は無いんですが。
 タクシー会社には往復の運転をお願いしてます。そうすれば行きで往復分の領収書が貰えて、現地でまとめて渡せるので楽チンだからです。空港に着いたアーメッド君が言いました「43$ね」と。

 話、伝わってねぇ。
 片道分じゃんか、それ。
 「往復で予約してあるんだけど」と伝えると「じゃあ帰ってくる日に電話頂戴」と名刺を渡されました。物凄い伝わってねぇ。悪いのはアーメッド君ではありません「○時に××に行け」としか言わないタクシー会社です。なのでチップもお渡しして空港へ。

 よくガイドブックには「受けたサービスに不満があったらチップは渡さなくて良い」としてあります。でも英語を習っているスティーブによれば、基本的にチップを渡さない選択肢は無いんだそうです。受けたサービスに満足なら笑顔でチップを、不満なら憮然とチップを渡せば良いのだそうです。

 でも平然とチップを要求してくる奴の方がサービス悪い事が多いです、この国。
 仕事が出来る人は「チップは?」とか客に言わなくても貰えるんでしょうね。
 
 今回はU.S airwaysという路線での旅です。デトロイトからフィラデルフィア経由でインディアナ着、帰りはインディアナ発のシャーロット経由でデトロイト。思わず空港で写真撮っちゃうくらい浮き足立っています。

デトロイト空港
デトロイト空港にて

機内より
機内より

 さてまずはフィラデルフィア。ここで乗り換え待ちですが、どうやら次の飛行機が遅れている模様。食事でもと思って買ったサンドウィッチは不味い。
 何やら知らない番号から電話があった事に気づきます。相変わらず僕の電話は知らないアメリカ番号の発信者を「アメリカ合衆国」と表示します。怖ぇつーの。こちらから恐る恐るかけてみると自動音声で対応。「お前の旅券番号を言え」だかなんだか要求していますので番号を言うのですが、認証しない……。発音ですね、分かってますよ、でもどうしようもないじゃないのさ。何度かトライしてると、また違う番号から着信、野太い男性の声で「どうかしたかい?」と。どうしたのか分からんから困っとるんじゃ。

 てんやわんやの結果、要はフライト遅延のお知らせでした。
 
 知ってた、それ。

 インディアナにつくと、また電話をせねばなりません。タクシー会社のカウンターが無人なのです。そして「誰もいなかったら、ここに電話してね!」ってボードが立ってる。今日は電話で苦労する日だ。

 しかして到着した車がこれだ。

親分カー
親分カー

 何事かと思いましたね。
 誰かと間違ってるんじゃないかと。
 こういう車でお出迎えされる日本人は政治家か、その筋の親分か、あるいは俺くらいなものでしょう。乗ってても落ち着かないったらないのさ。あまりの豪華さに車の写真をとるという貧乏人丸出しの行動を取ってしまいましたよ、アタクシ。

 ホテルにも無事到着。なかなかよろしいホテルです。

インディアナのホテル
インディアナのホテル 持て余し気味のベッド

 部屋にはインディアナ大学の方からの手紙が置いてありました。顔合わせは明日の模様。

 かくして僕は夕食の為に、初めてきた町を夕闇のなか徘徊するのでした。
 実際ね、僕が海外公演に比較的呼んでもらえるのは、こういうのがOKだからでしょうね。最低限小遣いを渡しておけば空港からホテルには一人で行ける、食事も一人で何となくレストランに入れる。普通に生活されている方には、そんなの当たり前じゃないかと思うでしょうが、ゲストを迎える立場になってみると、こういうのは思いのほか扱いやすいんですね。1から10まで他人の面倒を見るのは大変ですから。

 ・・・・・お世話になっておりますMarkus先生

今夜のお食事はMalibu Grillというお店のライムチキンパスタ、飲み物はバカルディをロックで。Malibu Grillは町でも有名なお店だそうで、厨房に大きな窯があってピザを焼いています。インディアナ大学に行く方は是非お訪ね下さい。

ところでアメリカは食事中に店員さんが「味はどう?」って訊いてきますね。ここでも「Good」としか言えない日本人。実際美味しかったから問題ないのですが。

 ちなみにインディアナ大学周辺は田舎です。アナーバーも都会ではありませんが、インディアナに比べれば大都会です。どのくらい田舎かと申しますと……夜も更けて来たので、明日ご報告。
|10/10| 活動コメント(0)TB(0)
 あーあーテステス。
 そちはお元気ですか?こちらはお元気です。

 ただいま11月25日です。
 そちらは何日ですか?何?日付を見ろ?
 ブログの日付は10月9日です。なるほどそちらは10月9日です。
 偉く開きましたね。頑張って時間差を詰めて下さいね。
 え?それは11月の俺の仕事だろう?ごもっともです、なので頑張って書いてます。
 明日はいよいよアメリカ巡業スタートですね。
 頑張って下さいね。

 そうそう、今日から英会話教室に通い始めたんですってね。
 先生はスティーブという牧師さんだそうですね。結構、変わった方だそうですが大丈夫ですか?

 そういえば10月8日の朝には霜が降りたそうじゃないですか。
 何の冗談ですか。10月ですよ。10月の上旬ですよ。もう少し手加減しても良いんじゃないですか。しかもその話題は昨日付のエントリーに書くべきなのに忘れちゃって、今から書き足すのが面倒なんですね。最低ですね。嫌ならブログなんて書かなきゃ良いんです。

 で、なんですか、明日インディアナに発つのに、まだ飛行機の予約番号もEチケットも貰ってないそうですね。あなた本当に大丈夫ですか?しっかりして下さいよ。

 え?何?良く聞こえないですよ。
 10月8日の画像をアップしておいてくれ?
 遅いんですよ、そういうのはリアルタイムでお届けするから日本との季節の違いが分かるんじゃないですか、今アップしても印象薄ですよ。

 まあしょうがないからやっておきますけれどね。
 じゃあ、インディアナに気を付けて行ってらっしゃい。

 ブツッ

 ああ、交信が途絶えちゃった。

秋の景色
10月8日は完全に秋

初霜
初霜……。
|10/09| もやもやコメント(0)TB(0)
 ソーシャルセキュリティーナンバーを取らねばなりません。
 これは前にもお話ししたかもしれませんが、アメリカにおける身分証番号のようなものです。アメリカには戸籍がありませんので、この番号によってさまざまな手続きをし、また納税もしたりする訳です。

 ソーシャルセキュリティーナンバーを持つという事は、アメリカの社会の構成員として認められるという事なんですね。なのでアメリカでは子供が生まれると同時に届け出をすることが多いんだそうです。

 僕は日本国民ですし、永住も(おそらく)しないでしょう。ではなぜ番号を取得しなければならないかというと、納税に関わってくるんです。今回僕はミシガン大学から一定のお給料を貰っています。お給料には税金が発生します。お給料というか収入には税金が発生します。

 この税金をどうするかが問題なのです。

 アメリカで得たお金はアメリカに落として欲しいのが国としては本音でしょう。となれば何もしなければ税金はアメリカに持って行かれます。結構ゴソッと。今回僕は日本で納税手続きをします、と言おうとしているんですね。

 これをするのにソーシャ……、面倒なので略しますとSSNが必要なのです。

 今日はSSN申請手続きに行く日・・・・だったのですがオフィスで雑用をしていたら事務のMさんがやってきて「あなたはSSN申請に必要な書類が揃ってないわ」と仰るではないですか。外国人がSSNを取得するには、どこで何をしている人間かが証明できなければならないのです。僕の場合はミシガン大学に雇われている証明が必要なのです。その証明書発行の手続きがまだ済んでない!

 という訳で、今日はSSN発行手続きが出来ませんでした。
 残念。

 代わりと言っちゃなんですがデジタル・ミームから発売されているDVD Talking Silents シリーズがミシガン大学には1~4までしか所蔵されていなかったので、残りを入荷するように要請しておきました。

 なんて日本想いなワタクシ。
|10/08| もやもやコメント(0)TB(0)
 アメリカは車社会です。
 なので車に乗れないと驚かれます。
 どうやってくらしてるの?みたいな扱いをされます。
 とくにミシガンは寒い地域ですから、冬になったら大変だよと。雪が降ると30分に一度来るバスが40分遅れたりするよと。意味が分かりませんが、そういう事があるんだそうです。

 でもアメリカのバスは安いです。一回乗車1$50¢でOK。実に安い。欠点は本数が少ない事です。今申し上げた通り、30分に一本がアナーバーではマックスです。という事はバスの運転手さんも、そんなに数がいないんです。東京だとバスの運転手の顔を覚える事ってまずないですが、こっちはすぐに覚えます。
「あ、この人は運転が荒い人だ」
「この人はお年寄りに親切な人だ」
「いつも不機嫌な人だ」

 てな具合に。

 バスの運転手さんの中で一番印象的なのはやや太り気味で強面の黒人さんです。イメージはボブ・サップ。僕は彼の事を心の中でボブと呼んでいます。本名はこの際どうでもよろしい。
 ボブは愛想が悪いです。口調が不機嫌です。顔が怖いです。
 初めてバスに乗った時の運転手が実はボブでした。
「○▽■☆」
と何かを言うボブ、聞き取れないボク。露骨に迷惑そうな顔をして
「いいから乗れ」っぽい事を言うボブ。

 なんて怖い国だろうと思いましたね、ボク。
 でもね、少し慣れてくると良い奴なんですよ、ボブ。
 バスに乗る客にはいちいち「乗り換えは?」と聞いてます。最初の「○▽■☆」はそれだったんですね。これを聞いてこない運転手も多いです。ご老人や怪我人がバスを待ってると、とても気遣いです。それから仲のいい人と話していると怖い顔がとても可愛い笑顔になります。その笑顔がバックミラーに写って客席に見えちゃいます。

 なにが言いたいかというと、週に一度はボブの運転するバスに乗って学校に行っているという事なのです。

 写真は今日のキティ。

今日のキティ 10.・7
近所の家具屋にて捕獲 ピントがあってない

|10/07| もやもやコメント(0)TB(0)
 来週から巡業が始まるのです。
 アメリカ巡業ですよ。あっちいったりこっちいったりと、私は旅が大好きなので楽しみですが、準備がね。台本を書きながら隙間を縫って稽古して、んでもって旅をして、です。
 
 忙しいったらありゃしない。

 そんな合間にも自分の好きな事はしてないと持ちません。
 ミシガンには韓国から来た方が大勢いらっしゃいます。特にScreen Arts & Culturesには孫さんという方がいて、大変お世話になっているのですが、なんとこの方に韓国の弁士のSP盤録音を聞かせて頂きました。僕が今まで聞いた韓国弁士のSP盤録音は『アリラン』だけなのですが、今回拝聴したのはなんとグリフィスの『東への道』です。これには感動しましたね。
 弁士口調には日韓でそれほど大きな差は無いようです。若干韓国の弁士の方が謡調子が強いかなとは思いますが。韓国語で弁士は「변사」と書きます。発音は、あえてカタカナで書けば「ビョンサ」でしょうか。孫さん、このほかにも『ベン・ハー』の映画説明音源もお持ちとの事。これもいずれ聴かせて頂きたい。韓国では近年『青春の十字路』という無声映画が発見されましたし『アリラン』もリメイクされました。こういった作品もいつか演ってみたいのです。

 最近手がける機会が減ってしまいましたが、以前は私、頻繁に中国の無声映画を説明させて頂いていました。それは珍しい作品がやりたかったというのが一番の理由ですが、もう一つの理由として、調度日中関係がこじれていた時だったというのがあるのです。そういう時だからこそ、抗日がテーマの中国無声映画を日本人弁士が演る事に意義があるのではないかと思ったのです。実際に「よくやりましたね」という声も頂きましたが、ごく少ない例外を除いて世間からは大して注目されない企画でしたね。
 そんな私ですから、今は韓国の無声映画をやりたいと思うのは自然な流れなのです。
 政治的に難しい時期だからこそ、文化面では積極的に交流する機会を持たねばならんと僕は思っております。でないと戦争したい連中の思いのままになっちまいます。そういう手合、最近日本にも増えてきましたから。

 テナ大層な事は言ってはみたものの、やっぱり未知の無声映画は見たいし、説明したいのが弁士ってもんです。という訳で日韓友好団体の方々、オファーお待ちしております。

 『青春の十字路』上映を伝えるKRnewsの記事です。
|10/06| 活弁コメント(0)TB(0)
 週に一度の本領発揮。
 Silent Ozuの日ですよ。
 今日の作品は『淑女と髭』でした。英語題は『Lady and the Beard』といいます。マンマか、そのマンマか、とやや突っ込みを入れたくなりますが、じゃあ何なら良いんだと言われても思いつきません。

 主演はかの岡田時彦であります。余談ですが数年前にミシガン大学には岡田時彦の御息女でいらっしゃる岡田茉莉子さん、そして旦那様でいらっしゃる吉田喜重監督がいらっしゃった事があるのです。校内でも何カ所かでお二人のサイン入りポスターが貼ってあります。ミシガン大学にとってもお二人を迎えるのは重大事だったのが分かりますね。

 僕のサインですか?契約書以外は特に求められてませんよ、ええ。
 
 私にとって『淑女と髭』は今回初演でありまして、おまけに笑いの要素も多い作品ですので、ウケなかったらどうしようと内心かなりビクついておりました。ダレた空気ってきついですからねぇ。

 それから今回の音楽は生演奏ではないのもポイントでした。では既存の音楽をそのまま流すだけかというと、それも違ってなんとDJとのコラボ上映なのでした。しかもDJは私が先日出演させて頂いてヘドモドしている様子を世界中にばらまいた番組のDJでもあるarwulf arwulf氏です。arwulfが二回続くのはコピペミスじゃありません。そういう名前なんです。頭文字が大文字じゃないのもタイプミスじゃありません。そういう名前なんです。

 私は無声映画の上映には弁士はつかなくても良いけど、音楽は生演奏で上映すべきだと思っています。少なくとも弁士を付けるための経費を浮かすために生演奏を何となく選曲されたありもの音楽でやるのは良くないと思っています。なぜならば無声映画は今後、生ものとして上映していくしか新しい観客を獲得するのは難しいと判断しているからです。ではDJはどうかというと、なかなか面白いなと感じましたね。作品ごとにゼロから音楽を選んで、上映中は演者のフィーリングで音をコントロールしていくやり方には、一定以上の可能性を感じました。arwulf arwulfさんは『淑女と髭』のモダンな雰囲気に着目して、レトロアメリカな音源から選曲して下さいました。
 選曲という作業は場合によっては生演奏よりも、もっと柔軟な判断と豊富な音楽知識が求められるのだなあと感じた次第。ちなみにarwulf arwulfさんがDJをされているラジオ番組は「余所ではかけない音楽をかける」がコンセプトで動物の唸り声とか、赤ん坊の泣き声とか、東南アジアの民族音楽とか、弁士の声とか、そういうものが流れています。

 心配だった笑いの部分も良く笑って頂きました。一番ウケたのはリンカーンの肖像画が出てくる瞬間です。まさに爆笑と表現するほかないウケ方で。ドォーンと笑いが起きて、次の瞬間に拍手。まさかアメリカの映画好き日本好きの皆さんも1931年の小津作品にギャグでリンカーンが使われるとは思っていなかったのでしょう。そりゃもう凄い反応でした。面白いと思ったら素直に笑ってくれるアメリカ人、大好き。

リンカーン
『淑女と髭』を未見の方は、この顔でアメリカ人が爆笑した場面を探す為にご覧ください。

|10/05| 活弁コメント(0)TB(0)
 先日も書きましたが、Noon Lectureというシリーズが御座いましてね、今期は日本文化について毎週木曜のお昼に講演があるんですよ。それには極力参加するつもりでおります。なぜって折角ミシガン大学に来てるんですもの、ちったあお勉強したいじゃありませんか。アメリカに居て、少しは知的になって帰りたいじゃないですか。

 様々な授業にだって出たいと言えば何とかなるんでしょうけれど、とりあえず自国文化について学ぶのは大事だろうと思うのです。日本人は日本の事知りませんからね。海外に行くとみなさん自分の国、自分の町の事を知っていらっしゃる。僕が会った範囲では、大抵の方が「この町の人口は○○人で」とか「この建物には××という歴史があって」なんて解説をしてくれる。アナーバーに古くからあるアイスクリーム屋さんのお姉ちゃんもちゃんと自分の店が何年からあるか知ってました。日本でコンビニ店員に創業者の名前を聞いたって絶対に知りません。そのくらい自分の暮らす共同体に対する認識に違いがある。

 まあアイスクリーム屋のお姉ちゃんが創業者の曾孫さんなだけかもしれませんが。

 大事だと思いますね、歴史を知る事。それも戦争史ではなく、自分の住んでいる地域の歴史を知る事。

 本日のヌーンレクチャーのテーマはIs Immigration Necessary for Japan? Workers, Growth, and the Philosophies of Immigrationで御座いました。講師はカリフォルニア大学のJohn Skrentny先生。Immigrationは移民の事ですね。

 それはそれとして一昨日、学校の近くのヌードルショップに行ったら、待ち番号札にこんな文句が書いてありました。この店、サンドウィッチも出すんですが随分八方美人じゃ御座いませんか、あなた。

麺のプロ
俺たちは麺のプロだ、けれどサンドウィッチも否定しない。
|10/04| もやもやコメント(0)TB(0)
 手紙を出しました。
 後でブログを書くために残したメモには「手紙」とだけ書いてあります。
 おそらく初めて郵便局に行ったのでしょう、この日。

 ああ、雑な日記ね。一か月以上遅れて日記もクソもないもんだけれど。
 とはいえ手紙を出すのにも緊張するんですよ。何しろ仕組みが分からないでしょ、しかもここ最近肝心な書類が届かないから米国の郵便に対しての信用がいまいちでしょ。そんなこんなでね、手紙を出しそびれておりましたのですよ。

 加えて忙しかったしね。

 手紙を書く時間くらい取れるだろうと言われりゃ仰る通り、もっと言えば、せめてメールを出す時間くらいは取れるだろう、という事になるのですが、なかなかどうして他人様にきちんと届けるつもりの文章はエイヤっといかないと書けないものですからね、それで遅れてしまうのよね。出発前から不義理を重ねた皆様許して下さいませ。

 ようやっと時間が出来たんです、要は。
 結果としては手紙を出すのは簡単でした、当たり前だけど。カウンターに行って「この手紙を出したいのだ」と言えば、あとはお金を払うだけってなモンです。でもやっぱり日本と違う点もありますね。一つは郵便局が見つけ辛い。本当に見つけ辛い。町中は郵便配達の車がちょいちょい走り回ってるんですよ、でも郵便局が、無い。
 日本だとポストは赤いし、郵便局の看板もそれなりに派手でしょ?こっちはポストが青いのさ。でもって変な所に無造作にポストがある。ごみ箱みたいなのよ。特にウチの近所にあるポスト。

 郵便局もビルの中にひっそりあったりしましてね、世を忍んでます。つまり正確な位置を知っている情報強者だけが手紙を出せます。こんなところまで弱肉強食ですアメリカ。あと窓口は結構待ちます。さらにいうと局内は殺風景です。日本だと申し訳程度に観葉植物やソファがあったりしますね、少なくともアナーバーの郵便局はそういう体制ではありません。カウンターの奥はすぐに配達物仕分けスペースで、なんだか工場みたいです。あと局員さんは客が預けた封書を、その場で投げます。

 日本からすると、とてもドライですね。日本だと葉書一枚でも「お預かりします」でしょ?どっちが健全かは分かりません。でも封書一枚なら45¢ですよ。そんなものにいちいち頭を下げる必要はない気もします。むしろパッパと捌いてくれた方が有難い。最終的には無事に届けば文句はないのです。だからアメリカ式は嫌いじゃないです。割と好きです。

 まあ届かない率も高いんだけどね、アメリカ。

ポストカード
画像はボストンで買ったポストカード。そのうち誰かのお宅に届くかもしれません。

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