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 先ほどミシガンも十二月三十一日になりました。
 あと二十四時間で新年です。

 海外に居るのに甘えて年賀状は出しません。どうしてもアメリカから年賀状が欲しい奇特な方がいらっしゃったら、ご連絡頂ければ年賀状を書きます。お歳暮も年賀状もしなくて良い年末は何だかとても楽ちんです。クリスマスギフトみたいなのはありますが、大変さでは比較にもなりませんね。

 今年一年、お世話になった方々、本当にありがとうございました。
 例年にも増して他人様のお力とご厚意にすがってやってきた一年で御座いました。

 今年お世話になった皆様、どうぞ来年もよろしくお願いします。
 今年疎遠になった皆様、どこかで何かあったらそのときはそのときでひとつ。

 良いお年をお迎えくださいませ。

今日のキティちゃん Kissとのコラボ
今年最後のキティちゃんはKISSとのコラボキティ
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 ただいま米国12月30日午前5時。日本12月30日午後7時。
 米国と日本だと同じ日付てある時間がかなり短いのです。
 なので日にちが同一の貴重な時間にブログ更新。

 今年も押し迫ってまいりました。押し迫った実感がまったくありませんけれど。
 
 今年は色々やらかしながら、どうにかやってきました。何とか終わりまで辿り着けそうです。
 来年はますますやらかしながら生きていくことになると思います。

 とりあえず帰国は三月末の予定。
 なにとぞよろしくお願いします。

 
 我が家は一昨日(28日)、魔法瓶を買いました。とても快適なお茶&コーヒーライフの幕開けです。
 その甲斐もあって昨日(29日)は郵便を確認に出たのが唯一の外出です。
 冬眠モードですね。 


 一日早いですが、皆様良い年をお迎えくださいませ。
 多分明日も更新すると思いますが。
|12/30| もやもやコメント(0)TB(0)
 年末ですね。
 こっちでは忘年会とかないのであんまりバタバタしてません。今住んでるアパートもあと二ヵ月で引き払うので大掃除ってんでもないし。やっぱりあんまりバタバタしてません。アメリカの方々、この時期故郷に帰っちゃう方も多いので僕が住んでいるアパートもなんとなく静かです。つまりバタバタしてません。

 日本の年末のバタバタ感て、何となくバタバタしなきゃいけない気になって感じるものでもありますね。
 僕なんかそんなにメリハリのある生活を送ってないのにバタバタしているような気になりますもん。あれって絶対に勝手にバタバタしているだけなんですね。こっちではむしろのんびり過ごさせて頂いてます。

 バタバタしない理由のひとつに、今年は紀伊國屋屋ホールに行かないというのもあるかもしれません。素人時分からお手伝いをさせて頂いて、かれこれ15年くらい12月29日は必ず紀伊國屋でしたから。でもおそらく来年も行けないんだな。その先はどうなるか分からないんだな。どのみち再来年の事なんて誰も分かりゃしませんがね。地震だって東京にデカいのがいつ来るか分からない。僕が高校生の時にはもう「関東直下型大地震が明日来ても何の不思議もない」っていわれてましたからね。こないに越したことはありませんが、でもこれだけ各地で大きな地震が来て、自分の住んでる地域だけ来ないなんて都合の良い事があるわけも御座いませんしね。

 ああ、なんだか妙な話になってしまいました。
 アメリカにいても、日本の地震のニュースは気になりますよ、やっぱり。

 えと、来年の話です。
 このところ「来年の○月頃の予定を教えて下さい」なんて問い合わせも多くて、来年の話がでるなんて少しは求められる芸人になったかなと思っていたのですが、考えてみれば年末だからってだけでね、来年が目と鼻の先まで来てる、それだけの事でした。でも嬉しいですね、とりあえず仕事が途切れないのは有難い。最初の頃はちょいちょいありましたからね、次の仕事の見込みがないって時が。もう嫌だ、あんな状況は。嫌だと言いながら、そうなりかねない状況に今年の九月、自ら足を踏み込んでしまったのですがね。

 ま、アメリカの年末年始をのんびり過ごして、この先の事は考えようと思います。
 しばらくは生きてそうだしね、俺。

 で、来年の仕事始めですが1月11日です。
 三が日なんて、どっかの旅行会社と組めばハワイとかのホテルで営業取れそうな気もしますが、それはしていないので少しゆっくりめの始動です。場所はDetroit Institute of artsです。演目はミシガンでのデビュー作『大人の見る絵本 生れてはみたけれど』を前回と同じくLittle Bang Theoryの音楽と共にお届けします。こいつは春から縁起が良いわぃ、となりますかどうか。
 公演詳細はこちら

 デトロイト近辺にお住いの方々、是非お運びくださいませ。
 アナーバーでは一昨日の夜にしっかりと雪が降りまして、ウチの近所はこんなです。

12月27日 アナーバー 雪

 
|12/29| 活弁コメント(0)TB(0)
 先日来、翻訳をしていると言い続けていた作品の字幕の訳が一先ず終わりました。これから台本を書きながら訳を直していく作業が待っています。

 無声映画の字幕の訳は、これはこれでちょっと独特の作業です。映画のストーリーがあって、それを理解させるために劇中にぽつりぽつりと入るのがインタータイトルと呼ばれる字幕です。映画は大衆娯楽なので物凄く複雑な文法や、マイナーな単語はあまり出てきません。だからほんの少し英語力があれば、映画を見ながらならば何となく意味は掴めます。ただし映画を見ないで字幕だけ抜き出した物を渡されて、さあ訳して御覧なさいと言われても意味の分からない文章が多いのも無声映画の字幕です。
 そんなこんなでざっくり訳した下訳を、今度はストーリーをきっちり理解しながら修正をせねばなりません。

 ところがですね、この作品は主役が一人二役なんです。そっくりさんが歩む数奇な運命の物語ですね。ちょっとボンヤリしていると、どっちがどっちだか分からなくなってしまう。ここで間違えてたまま訳を進めると取り返しのつかない誤訳をしてしまうのです。
 そして本作には懸念が一つ。台本を作るために気を付けてながら見ていても一人二役を混同しがちなのに、当時、弁士も無しに上映してこの映画はちゃんと筋を理解して貰えたんだろうかと。これをこれから現地で上映するとして、ちゃんと理解して貰えるんだろうかと。
 なかなか不安な部分ではありますが、あまり日本の無声映画には無い大河ドラマの様な雰囲気をどうやって語るか、台本を書く楽しみでもあります。
 新春は部屋に籠って台本書き決定で御座います。

 実はもう一本、字幕翻訳からやらなきゃいけない作品があるのよね。これは2013年に二本で上映が決まっている作品なので、こっちも渡米中に台本を書きあげちゃいたいんですが、さてどうなりますか。

 来年を迎える準備は順調であります。

 それからね、こちらにはJangleという情報紙が御座います。
 日本語で書かれた日本情報紙ですね。このJangleの2012年12月第2週号に中村勘三郎さんと小沢昭一さんの訃報が同ページに掲載されていました。日本ではあまり目にする機会のない記事でしょうから、ひとつの記録としてここで取り上げておきます。

勘三郎・小沢昭一 訃報


 Jangle紙は芸能、スポーツ、米国生活お役立ち情報等の割に柔らかい読み物が多いので、こちらで暮らす事になった方はたまに見てみると楽しいですよ。

 Ann Arborは学園都市なので、この時期になると人口が減る気がします。
 私も「帰国するの?」とよく聞かれますが、半年しか居ないのに帰国も大げさですからね。こちらでのんびりしようと早々に決めたのです。近所のショッピングモールでは新春セールもあるそうですが、平素から別段欲しい物がある場所でなし、といって交通機関も限られているので遠出もし辛いしで、要は日本に居る時と同じような年越しになりそうです。


年末の木
クリスマスも終わったなあという風情
|12/28| もやもやコメント(0)TB(0)
 近頃パァっとした話題が無いのにお気づきでしょうか?
 仕事が、ね。
 仕事はしてるんです。ただし人前に出る仕事をしていない。地味ぃに地味ぃに英語字幕を訳しながら某作品の説明台本を書いております。

 ミシガン大学に呼んで頂いた時、僕に迷いは全くありませんでした。そんな素晴らしいご提案を頂けるなんて、と気持ちはすぐにアメリカでした。ただし不安もあります。何かというと、帰国後の仕事。半年間、お付き合いが無くなる方もいますから、定期的にお仕事をさせて頂いていた所でも、帰国後は違うかもしれない。

 実際どうなるか、まだ分かりません。でも有難い事に、今の段階で来年、そして再来年のお仕事も頂いております。これなら何とか、死なない程度には生きていけるんじゃないか。ボンヤリと思うのですが、でもそれじゃいけないんですね。アメリカで半年活動したのですから、錦の旗を翻して晴々と帰国して、他の無声映画上映にもいい影響を与える様になってなきゃ本当は駄目なんです。
 今の所、そんな気配はありませんけれど。

 今日はいい天気です。ミシガンは酷寒の地で、雪はジャンジャン降って、ひ弱な東京者はにっちもさっちもいかなくなるんじゃないかと怯えておりましたが、今年は暖冬というのもあって意外に楽しく暮らしています。

 いよいよ押し迫ってまいりました。
 空気が静かです。

12月27日 アナーバー

 12月27日 Ann Arbor
|12/27| もやもやコメント(0)TB(0)
 クリスマスが終わるとクリスマスツリーの撤去が大変だそうです。 
 26日には大変な量のゴミが出るんだそうな。でも中にはずぅーっとツリーを飾り続けて、気付いたら2月なんて方もいらっしゃるそうな。さすがに2月は頑張りすぎだろうと思いますが、この文章を書いている2月12日現在、確かに町中で時々クリスマスの残照を目にします。いつまでもクリスマスを味わっていたいのか、それとも片付けが面倒なだけなのか。
 でも練馬にもそういう家がありました。壁に掛けるタイプの飾りでサンタさんが梯子を登っている様に見えるのがあるじゃないですか、あれが一年中飾っているお宅が我が家の近くにもあります。真夏でもサンタさんが塀にへばりついている姿はいささか見るものの涙を誘う悲しさがあります。せめて着替えさせてやれよ、暑そうじゃねえかとか思っちゃいますね。余計なお世話だけれど。

 本日はミシガンシアターで『レ・ミゼラブル』を見てまいりました。
 前評判も良く、期待して見に行きましたが確かに良御座んした。
 このブログは評論めいた事はやりたくないので、クドクド書きませんが、実は何が良かったかと言って環境が良かった。何度か写真をアップしてますが、ミシガンシアターは内装がとても凝っています。シアターオルガンもあります。暗い状態からどうやって場内を明るくするか、明るくなった後の場内がどんな風景かで映画の満足度が違います。映画は夢の世界です。夢はどうやって覚めるかがとても大事なのです。
 ミシガンシアターには夢の続きを見させてくれる雰囲気がある。殊に『レ・ミゼラブル』のような舞台の気配を感じさせる作品には、それが大事です。

 映画館や公共施設が出し物毎に内装を変えるなんて不可能です。でも例えば明るくする時の時間のかけ方・タイミング、その後の音楽等で気を使える事は沢山あるかもしれません。

 ちょっとした工夫が成果を生む事もあるんではないかと思いました。
 ミシガンシアターでは一日一回、シアターオルガンの演奏があります。この日は僕が見た回の次の回で上映前に演奏があるみたいでした。しまった、その回で見れば良かった。シアターオルガンをしばらく聴いてからの『レ・ミゼラブル』はきっと素敵だった事でしょう。
|12/26| もやもやコメント(0)TB(0)
 ご報告。
 我が家にサンタさんは来ませんでした。おかしいなぁ、部屋に暖炉があるのに。

 やっぱりあれか、昨日の主な出来事が納豆だったのが良くなかったのか?
 でも良いんだ、昨日は日中に到着が遅れていた『血と砂』のフィルムが届いたから。

 サンタさんと言えば、保育園・小学校・中学校と同じだったウエダヨウコちゃんを思い出します。僕は基本的に過去の記憶が絶望的に残らない性質なので、小学校の記憶もびっくりするぐらい希薄なのですが、ウエダヨウコちゃんの名前はしっかりと記憶しています。こういう風に書くと、好きだったみたいですが、僕が彼女を覚えているのは中学生の時に「みんなはサンタクロースを何歳まで信じていますか?」という質問を先生がしたんです。そしたらウエダヨウコちゃんはきっぱりと「私は今も信じてます」と。
 あの時の凛々しさっていうんでしょうか、男前ぷりっていうんでしょうか、女の子に対して使う表現じゃありませんが実に様子が良かったんですナ。その一回で彼女の名前は僕の記憶に刻まれまたのでありました。

 昨年の年末には四谷で『サンタを信じなかった少女』と『クリスマスエンジェル』の二本を説明しました。この二本がYouTubeに上がってれば紹介したかったのですが、残念ながら『サンタを信じなかった少女』は見つかりませんでしたので、代わりに1898年の『サンタクロース』を。


『クリスマスエンジェル』 監督/ジョルジュ・メリエス、1904年、仏


『サンタクロース』 監督/ジョージ・アルバート・スミス、1898年、英

 この時期になると「クリスマスに関連のある無声映画ってありませんか?」なんて問い合わせがちょいちょいあります。サンタクロースが出てきて、ハッピーな話で、それなりに面白くて、尺もある、そんな作品があれば商売になるんですが、意外とないのよね。

 これっていうのがあれば教えて下さいませ。

サンタクロースより

|12/25| 活弁コメント(0)TB(0)
 納豆を買いました。
 世界中、ある程度の規模の町なら大抵アジア雑貨店があります。それらの多くは韓国の方か中国の方が経営されています。近頃は韓国、中国を嫌う日本人が増えてますから、こうした事態は面白く無いかもしれませんが、海外に暮らすとやっぱりアジア雑貨店の存在は有難いんですよ。彼らは売れるなら日本食材もしっかり輸入してくれますからね。おかげで日本のメーカーの梅干しだとか、日本のメーカーのラーメンだとか、日本のメーカーのカレーだとか、そして日本のメーカーの納豆が食べられます。

 Ann Arborにもちょっと良いレストランは存在します。こちらの懐事情が許さないのでほとんど行きません、正確には行けませんが問題ありません。なぜなら我が家には今、納豆があるからです。

 納豆美味い。
 
 街はクリスマスのイルミネーションで輝いている事でしょう。我が家の白いご飯は今朝、納豆で輝いておりました。

 納豆美味い。

 以上、アメリカのクリスマスイブレポートでした。
|12/24| もやもやコメント(0)TB(0)
 この数日、ネットを覗いているとマヤ歴が話題になっています。
 2012年12月23日にマヤ歴が終わる。そうすると世界も終わるらしい。なんてな事を結構世界中の人が気にしていて、買い占めやなんかが起きているのだそうだ。

 こういうので騒いじゃうのって日本人の専売かと思っていたらそうでもなかったのね。考えてみれば当然で、どの地域でもオカルト的な話題が大好きな人はいますから、マヤ歴の終り=世界の終りと考える人も世界中にいて不思議はないのです。でもやっぱり日本人が一番大好きだと思いますけどね。ノストラダムスしかり、血液型性格判断しかり、動物占いしかり。
 僕も嫌いじゃありません。世界の終りとか全く信じてませんが。そんなにすっぱりと世界は終わっちゃくれないでしょう。人間は人間のやってきた事のツケを払いながら終わるんじゃないかと思うのです。もしも終わる瞬間があるなら立ち会ってみたいとすら思っています痛かったり苦しかったりは嫌だけれど。我ながら身勝手だね。
 僕が恐竜大好きなのは、終わりの瞬間に限りなく近い出来事があった気配を感じるからかもしれません。そういやポンペイにも惹かれるもんな。

 でも世界が終わると思うなら買い占めなんかしても仕方ないのにね。もうちょっと終わりらしくすれば良いのにね。

 ちなみに僕の見た範囲ではAnn Arborでは大きな反応はなし。当たり前か。
 でも終末予言は様々な文化にありますから、馬鹿にしちゃいけないもの確かです。いつか来るその日に向けて我々は生きてゆかねばならない、という意味においては。週末じゃないですよ、終末ね。ここ大事。

 というような事を感じたマヤ歴最後の日に、僕は大型量販店Meijerにお買い物に出かけました。クリスマスムードといいますかね、何となく普段より賑やかで、いつもは見ない商品も売っていましてね。

 世界の終りを感じさせる様な色のお菓子も売ってました

お菓子1

お菓子2

お菓子3


 みなさん、良い終末を。
|12/23| もやもやコメント(0)TB(0)
 日本の皆さんこんにちは。
 かしらかしらご存じかしら?
 ついに出ましたよ、何がって『チャップリン・ザ・ルーツ』傑作短編集・完全デジタルリマスターが。今まで出たチャップリンのDVDの中で最高の画質、最高の品揃え、最高のお値……、まあなんだ素晴らしいDVD-BOXなのですね。

 チャップリンが無声映画を象徴する存在であることは以前もお話ししました。それは現代だけでなく、リアルタイムですらそうだったのです。チャップリンの作品は世界中で公開され、いくつもの類型を生み、そして同一の作品であっても様々な理由によりフィルムが改変され幾多のバージョンが上映されてきました。しかしそんなチャップリンだからこそ、オリジナルに近い状態で見たいと思うのが人情というもの。この『チャップリン・ザ
ルーツ』はそれに最も応える内容のなのです。

 もちろんこうしたDVDの元となるフィルムは基本的に海外にあります。なので同等の画質のDVDは海外に存在します。ならば海外のを買った方が安いじゃないかとお思いのアナタ、そこのアータ。このBOXには(一部作品に)音声が入ります。
 これも以前言いましたが「チャップリンに声は不要」と思われる向きも御座いましょう。それは正しい。けれどこういう楽しみ方があっても良いじゃない。特に日本は弁士の文化があったんですからね。

 優れた芸術は幾通りもの解釈が可能だと僕は思っています。チャップリンの作品は多様な解釈が可能なのです。つまり弁士や声優が何と言おうと、それは作品を規定する事にはならない。そんな解釈もあるんだな、と見て頂けば良いのです。それにしても関わっている顔ぶれの豪華な事、こんな企画に参加できるのは実に嬉しい。と同時にプロモーションの中心が大御所の声優さん方なので、ベンシはもっと頑張らにゃイカンぞと思う次第です。

 そりゃ成りたいですよ「あの片岡一郎が収録!」とか言われる存在に。今は無理でもね。
 別に愚痴ってるんじゃないのよ。

 最近は声優さん方が無声映画に気付き始めてますので、本職としては気合を入れていかなければなりませんね。とはいえこれが弁士ばっかりだったら商品として面白く無いと思います。真剣に思います。現代にこうしたDVDを、しかもあえて音声を収録するのであれば声優さん方にご参加頂くのは必然でしょう。だから話は戻りますが参加できて嬉しい訳です。

 このDVDでは声優と弁士の芸の違いがきっと感じられるのです。実に楽しい。

 これも以前から主張していますが、無声映画を商品化する場合は「音」に知恵を絞るべきなのです。無声映画だからって音楽をないがしろにしている商品が多すぎる。平気で音のないまま商品にしたり、古い音源を使いまわして全く新鮮味が無かったり。それで新規のお客様が獲得できる筈が無かろうに。無声映画ナメんな、と申し上げたい。ですがこのDVDは、その辺もちゃんとやってくれています。いや全部見た訳じゃないけれど、やってくれていると信じています。だって大野さんが「頭もお金も使った」って言ってたもの。
 
実際、こんな美しいチャップリンの短編が見られるようになったのは、ここ数年なのですよ。僕が弁士になったばかりの10年ばかり前ですらチャップリンの現存する短編を全部見るのは容易では無かったですし、階調が全く無くなってしまった耐え難い画質の16mmフィルムを有難がってみていたものです。さらにその前の時代では海外から取り寄せた8mmの上映会にマニアが集まって、貴重な機会に涙を流しつつチャップリンを見ていたのです。

冒頭ではBOXがお高いみたいな書き方をしましたが、実際の所、今挙げたようなひどい画質の16mmを一本買うだけで数万円したのです。それを考えれば安いなんてもんじゃない。

だから是非ね、お買い求め頂きたいのですよ。
なぜ無声映画といえばチャップリンなのか、このDVDで感じて頂きたいと思います。


チャップリン・ザ・ルーツ 傑作短編集・完全デジタルリマスター DVD-BOXチャップリン・ザ・ルーツ 傑作短編集・完全デジタルリマスター DVD-BOX
(2012/12/21)
チャールズ・チャップリン

商品詳細を見る
|12/22| 活弁コメント(0)TB(0)
 練馬放送さんに取材をして頂きました。
 練馬放送さんは以前、僕が石神井ふるさと文化館で『緑の騎手』を説明した時にも取材をして頂きましたので、今回は二度目。そして一琴師匠が「柳家一琴のねりらくご」という番組を持っていらっしゃる放送局さんでもあります。

 僕は戸籍は杉並なんですが、物心ついた時には練馬にいましたし、小中高は言うに及ばす大学も日本大学芸術学部だったので、んでもってお世話になっている声優事務所のイエローテイルも江古田なので、基本的に人生の大部分を練馬で済ましちゃってる人間なんですね。だから練馬で話題になるのは嬉しいのです。

 理想の仕事はね、大泉学園のゆめりあホールで会をやって終電を気にせずに打ち上げ。
 
 にしても凄い時代ですよ。アメリカに居ながら練馬放送さんのインタビューで練馬についてお話しする。それをアメリカで聴けちゃう。以前オーストラリアに行く直前に現地のラジオ局からの取材を日本で受けた事がありました。あれは国際電話でしたね。今回はIP電話だったようです。

 お話のテーマはアメリカとクロアチアのクリスマス、外から見た練馬の魅力について、でした。

 僕は海外公演をコンスタントにやらせて頂いているので、国際派弁士なんて言って頂く事もありますが、実際は僕が国際派なんではなく、国と国との距離が無くなってきているんでしょうね。だから僕みたいなのでも呼んで頂ける。凄い時代ですよ、あらためて。

 いつか宇宙で弁士をやる人が出てくるんでしょうかね。
 そんな時代がくるとして、そこまでは生きられないだろうなァ。
 でもさ、月に『月世界旅行』を写したりしてさ、それを宇宙船の中から見たら楽しいだろうな。そんなシチュエーションで弁士をやってみたいな。

 夢見がちなお年頃なんだ、僕。

 月は無理でも、帰国たら練馬でまた仕事がしたいです。

練馬放送
 
 画像は練馬放送公式オリジナルキャラの、なみねちゃんとヘルツ君です。
 結構可愛いと思う。

|12/21| もやもやコメント(0)TB(0)
 クロアチアから帰って参りました。
 バタバタした旅でしたが、やっぱり海外は良いね。アメリカも海外だけどさ。

 僕はしょっちゅう「自分には時差ボケはない。なぜなら普段からボケてるから不規則な生活だから」と言っておりますが、今回のクロアチアは割に規則正しい生活をしてしまいました。なにしろ荷物がありませんからね、お金もなければ電源ケーブルもない。陽が落ちたら寝るしかない。実に健康的でね。

 結果、今日は結構な時差ボケです。
 寝てばかりいます。

 たまには良いやね。
|12/20| もやもやコメント(0)TB(0)
 帰国日です。帰国ってもアメリカに帰るんです。
 もう12月も終わりですよ。あと三カ月で帰国。早い、あまりにも早い。本音を申せばあんまり日本に帰りたくない。色々ありましてね、東京に。

 ともかく飛行機に乗らなきゃ帰れません。この日、ホテルからの出発時間はなんと午前三時半。早朝つーか朝。空港に向かう道中、突然吹雪っぽくなりました。思い返せば2009年にクロアチアに来た時も帰りの日に大雪で飛行機が二時間遅れたんでしたっけ。

 通常、国際線に乗るときは空港には二時間前には着いていましょう、がルールです。荷物積み込みの手間もありますし、何かトラブルがあった時に対応する時間も必要です。でもザグレブからの帰路は毎回出発一時間前。それで空港の職員さんも気を咎めている雰囲気が無いのです。どうでもいいけど「咎」って字、ハングルみたいね。
 ザグレブの空港は小さいのでひょっとすると一時間前でもOKなのかもしれません。それはそれで楽でいいのですが、そんなつもりで海外に出かけたクロアチア人が困ったりしやしねぇかと要らぬ心配をしてしまう僕なのでした。

 帰りの飛行機では『LOVE まさお君が行く!』と『アメイジング スパイダーマン』と『ティガー・ザ・ムービー』を見ました。どれが一番面白かったかは、文章上の並び順から察してください。てかどうしてわざわざエールフランスの機内上映に入ってるんだ、まさお。

 一日中飛行機の中だったので写真は御座いません。
 でも嬉しい事がありました。ちゃんとトランクが僕と一緒に帰宅できました。ヴィヴァ!!
 なんでも無いようなことが幸せだったと思う。とらぶりゅー。
 何もおきないって素晴らしい。


 
|12/19| もやもやコメント(0)TB(0)
 よく海外の仕事で「時差はきつくないですか」と聞かれます。
 ところが僕はほとんど平気でして、なぜかと申しますと常から不規則な生活なので一年中時差の中にいるようなもんだからですね。

 もちろん今回のクロアチアもほぼ影響ありません。不思議なもので連日目覚まし時計が鳴る三十分前にはしっかり目が覚めます。我ならが丈夫な体内時計を持っているなと思う反面、なんだかんだで海外に出ると緊張してるんだなとも思う次第です。アメリカではもう慣れてしまったので、こんなにシャンと目が覚めません。ダラダラと夜中まで起きていて、ヨレヨレと午前中にどうやら布団から這い出る状況。つまり日本に居る時と同じ。人間は駄目な方に簡単に流されます。

 昨日は無事にリエカに到着して一休み。疲れてはいますがしっかり七時には目が覚めてしまうという。この時に見た街並みの美しい事。ああ、良いなあ。

リエカ 夜明け
リエカ 夜明け

 本日は日中リエカ散策、夜に本番。
 何時にどこに行くべきか、まったく知らされてません。まあなんとかなるでしょう。
 いざ町歩き。

リエカ 街並み
リエカは坂が多い

高台の上に建物が
それは高台の上に出来た町だからですね

リエカは水の町
同時に水の町でもあります

リエカ 舟
舟もそこかしこに

リエカ 中央広場
リエカの中央地域 ZARAがありました

リエカ 教会
もちろん教会も

リエカ 教会2
大通りに面した教会

リエカ 街並み2
やっぱり坂が多い

 歩いていると猫ストリートを発見したのです。
 クロアチアもミシガンも寒い地域だからか、日本ほど猫がウロウロしていません。

リエカ 猫2

リエカ 猫1

リエカ 猫4

リエカ 猫3

リエカ 猫5

 写真に撮れない位置にいたのも含めて七匹おりました。

 猫と言えば、この猫もばっちり採取。

リエカ キティ 1
なんて書いてあるのかは分かりません

リエカ キティ 3
三匹同時に

リエカ キティ 2
らしきもの


 さて日も暮れまして午後五時五十分。本番は午後七時。未だになにも連絡がないので適当に劇場へ。こういう展開、クロアチアだから平気ですが、日本でこれだったら不安でいっぱいか、対応の悪さに苛立ってるかのどっちかです。やってることは同じでも、場所によって許せたり許せなかったり、ムラッ気があるね、我ながら。

リエカ クリスマスツリー
リエカにもクリスマスツリー

 劇場に着いたらスタッフさんが「待ってたのよ」と。
 こっちも連絡待ってたのよ。

 本日の上映作品はザグレブと同じです。でも違いがふたつ。
 ひとつめは『天狗退治』音楽。ザグレブではピアノとトランペットでしたが、ことらではトランペットのIgor Pavlicaさんが来られないということで、ピアノオンリー。それから『御誂治郎吉格子』は映写条件が違いました。

 今回の上映フィルムは日本のフィルムセンターさんからお借りした物です。映画のフィルムは幾つかのロールに分かれて保管・運搬されます。そして上映の時に一本に繋いで上営為する事が多いのです。一本に繋ぐためにはフィルムを切らなければなりません。通常の映画会社さんから借りたフィルムであれば、そうした作業は問題ないのですが、フィルムセンターさんは映画の保存の為の機関でもあります。単にフィルムを貸し出すための組織ではありません。保存をするという事は、フィルムが極力傷つかないようにしなければならないのです。
 つまりフィルムセンターさんからお借りしたフィルムは切る事が出来ない。ここに不満はありません。

 しかし、しかしです。ザグレブには無声映画を適正速度で映写できる映写機が一台しかなかった。結果として『御誂治郎吉格子』はフィルムの変わり目で上映を中断して次のフィルムが装填されるまで待たねばなりませんでした。映画の写らない弁士は情けないものです。せめて自由に離せる言語が通じればお喋りで間を保たせる事も叶いましょうが、ここはクロアチア。英語は通じるものの、アドリブでお喋り出来るレベルには程遠い。といってクロアチア語はさっぱりで。

 ところがですよ、ここART KINO CROATIAには速度可変対応映写機が二台ある。という事はフィルムを切らなくても、交互に映写すれば良いのです。映画を止めずに済むのです。やれ嬉し。
 こういっちゃなんですが、この規模の町の映画館に無声映画に対応した映写機がちゃんと二台あるとは思いませんでした。クロアチアってのは文化的な国なんだな、うん。

 それからなんと本日は、この映画館のオープン五周年の日なのだと。
 ターニャ、だからそういう大事な情報は事前に教えておくれ。そして映画館も、もう少し記念日っぽく振舞おうよ。何にもないじゃねえか、お祝いっぽいムード。

 仕方ないので前説で少し触れる事に決めたのです。
 前説と言ってもね、これも英語でやらなきゃいけないんですよ。もうアメリカであっちこっちでやってるので、短い前説なら何とかなるかなと思って話し始めてみたものの、情けない事に何をいうかすっかり忘れてしまうテイタラク。あーとか、うーとか唸りながらヨタヨタ英語で話していたら客席から暖かい、それはそれは暖かい拍手を頂きました。初めて学芸会で主役をやった子供か、俺は。

 上映自体は良う御座いました。
 ターニャから「あなたのパフォーマンスはとても進歩していた。あ、勿論、昔も良かったけれど」と、全世界共通のお世辞を頂く程度には良う御座いました、ええ。

リエカ プログラム1
プログラム

リエカ プログラム2
プログラム 拡大

 それからここにはオリジナルTシャツがありましてね、終演後に「これ買いたいな」と言ったら、映画館の方が二枚タダでくれました。計画通りありがとう。

リエカ Tシャツ


 終演後はMia Elezovićさん、Johannes Nauberさんとホットチョコレートなどを啜りつつ、今後の展開について作戦会議。でも明日は朝早いので早々に切り上げねばなりません。

 お休みなさい、リエカ。
|12/18| 活弁コメント(0)TB(0)
 本日は移動日で御座います。
 ザグレブからリエカまで車で移動。ホテルを出て、コンテンポラリーアートミュージアムに寄ってフィルムを車に乗っけて高速でリエカまで。
 こういうの良いですね。フィルムを積んだ車で移動っていうのが良いですね。巡業隊みたいですね。

 弁士の巡業隊は無声映画初期と、無声映画が作られなくなったトーキー初期の都合二回流行しています。無声映画期の代表的な弁士と言えば他でもない駒田好洋でありますね。「頗る非常大博士」と自らを号し誇張でなく全国津々浦々までフィルムを携えて駆け回った駒田先生の活動によって映画館が立てられない山間部までも映画が知られ、また江戸川乱歩や伊丹万作といった後に日本文化史に大きな足跡を残す人々に強烈な印象を残した大先達は近年再評価がなされていますが、もっともっと注目されていい人物です。
 そしてトーキー初期には映画館で上映されなくなった無声映画のフィルムを携えてかつての一流弁士があちこちを回ったのです。これもまたあまり語られることのない映画史の一側面です。日本映画の歴史で名前だけは頻繁に聞く名作佳作が最後に人前で上映されたのは、この巡回上映だった事も少なくないようです。それは例えば『新版大岡政談』であったり『照る日曇る日』であったり『浪人街』であったり。また弁士も伍東宏郎や里見義郎といった関西で名を馳せた方々が名調子を聞かせたそうです。おっとイケナイ、わが大師匠の二代目松田春翠もその一人。

 そりゃ綺麗な劇場で満員のお客様を相手に演る方が条件は良いに決まってます。でも同時にこうした巡業に対して得も言われぬ憧れや魅力を感じるのもまた事実。だから何となくフィルムと旅をするのは嬉しいのです。DVDと旅は良くしてますが、やっぱりこういうのはフィルム缶の存在感が大事ね。

 ザグレブからリエカまでは車で約二時間。
 山道を越えて、トンネルを抜けると突然出現する町がリエカです。この町は『魔女の宅急便』のモデルの一部になったとも言われているそうですが、調べてみると「ここがモデルなんじゃないか」と言われている町の多い事ったら。つまり、これらのヨーロッパ的な雰囲気を見事にミックスしたのが『魔女の宅急便』なんだなと思いますね。事実歩いてみると、何となくジブリっぽいような気がするんですわ。

 リエカに来るのは僕も初めて。こんな町まで来る日本人なんているんかいな、と思っておりましたら観光シーズンには結構来るみたいです。なぜって町の人達がカタコトの日本語を話すんですよ。ザグレブより日本語を聞く機会が多かったくらいでね。

「どうぞ」
「ありがとう」
「ちょっとまって」

 極め付きはイタリアレストランで店員さんが魚を出しながら

「スズキ」

これにはちょいとびっくり。ここのイタリアレストランも魚が美味かった。美味かったけど料理が出てくるのが猛烈に遅いです。店にはおおよそ二時間滞在しましたが、一時間半は待ち時間といった具合。店員もイタリア人だったしね。

 夜はご一緒したMartin Arnoldさん製作の実験映画をART KINO CROATIAにて拝見。ここが明日の会場でもあります。あのねこの劇場が実に良いんですよ。雰囲気があってね、なにより映画愛に満ち溢れている。こんな会場で説明をさせて頂けるなんざ有難ぇったら。

通路
劇場通路

 通路の壁が素敵なんですよ。

色んな映画
映画貼り混ぜ

女優
女優さんがた

ディズニー
でずにー

ヒッチ
二階にはヒッチ

チャップリンとキートン
当然の様にチャップリンとキートンもいます


 場内も素敵なんですわ。

場内 客席
客席 二階席もあります

マイブリッジ 引き
場内の壁には……

マイブリッジ 寄り
これぞ映画史に対する敬意

スクリーン&ピアノ
ピアノも御座います(常設かどうかは未確認)

KINO 正面
劇場を正面から

KINO ななめ
劇場を斜めから

 ザグレブでは見かけなかったパンフレットも御座いました。今年の目玉は『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』だというのが伺えます。

リエカ パンフ1
リエカ パンフ

そしてMartin Arnold氏の作品は実にどうも愉快な代物でして、パンフレットに印刷されているシルエットから愉快さというかマズさがお分かり頂けるんではないかと思います。

リエカ パンフ2
手が、手が……


 上映が終わったら皆でカフェに行って、ワイン飲んで、ぷらぷら歩いてホテルに戻って。現在のクロアチアはとても治安の良い国です。
 にしても飲んでばっかりいるな、俺。

 明日は再び本番ですぞ。
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 あなたは神を信じますか?

 のっけから宗教じみた言葉ですが、いかがでございましょうか?
 個人的には唯一絶対の神を信じてはいません。いま英会話を習っているのは牧師さんで、とても良くして頂いているのにもかかわらず、こうした発言をするのは申し訳ないのですが、クロアチアに何度も呼んでいただいているにもかかわらず、こうした発言をするのは申し訳ないのですが、自分の中のリアリティとしてそうなのだから、仕方のない事です。

 ですが日本的な緩い意味でのカミはいるかなとも思うのです。殊に芸の神様はいらっしゃるだろうと思うのです。はなはだ身勝手な世界認識ではありますが。

 初めてそれを感じたのは、何を隠そう昨年のオーストラリアでした。会場はシドニーオペラハウス。ここでの公演日、実を申し上げると僕は少し不機嫌だったのです。なぜかと言えば上映素材が16mmマスターのデジベ、しかも音楽は生演奏ではなくマツダ映画社でもっていつも使いまわしている音源。無論、それらが残っていて今日僕らが最大限に恩恵に与っているのは事実です。どんなに感謝してもしきれません。

 けどさやっぱりシドニーオペラハウスでやるのに、音楽がありものですでに録音済み、映像は16mmテレシネじゃあ、ね。

 という訳で不機嫌だったんですね。

 そしたらいざリハの段階で「再生できません」と。
 現場は大慌てでした。僕一人だけ平気な顔してたんですわ。上記のような心境でしたから。それでも公演自体はやらなきゃいけませんから、打開策をあれやこれや協議して、作品を差し替えるかなんて話もして、素材も取りにホテルに戻って、というタイミングで映写担当の方がフッと漏らした「これはPALか?」という一言が物凄くはっきりと僕の耳に飛び込んできたんですね。デジベは日本から持ち込んでますから当然NTSC、原因さえ分かれば後はシドニーなんて大都市ですから解消はどうとでもなるんでして、公演は何事も無かったかのように行われました。

 この時、スタッフさんの言葉を聞きとらせてくれたのは芸の神様だと思っているのです。オペラハウスに対しての敬意を感じて下さったのだろうと。
本当に手前味噌ですが、時々、芸の神様が「お前は弁士を続けて良いよ」と言って下さっているような気がするのです。

 気のせいでしょうけれど。

 終演後にはオペラハウスのスタッフさんに「あの時、片岡さんが落ち着いていたくれたのが心強かった」と言われてしまって、とても恐縮した記憶が御座いますがね。

 さてさて、本日はザグレブ公演当日です。
 昨日夜、空港に問い合わせて頂きましたが、いまだに僕のトランクは発見すらされていませんでした。

 ところがあなた、なんと朝食を終えてホテルのカウンター前を通ったら……

 届いてる!

 こういう時にね、芸の神様はいらっしゃるなと思うのです。

 気のせいでしょうけれど。

 本日のザグレブは霧模様。大聖堂もてっぺんが霧に隠されております。

ザグレブ大聖堂 霧
霧の大聖堂

 夕刻、お出迎えを受けていざ会場へ。
 クロアチアの方はあんまり計画的に動きません。なので余裕を持って会場入りしても一向にリハが始まらず、ようやく始められると思うと、会場になんだか勝手にお客さんが入ってきて客席で見てたりします。皆さんが良いなら良いんだけどね。

 そんな訳があって、会場等の写真は全く取れていませんが、2009年に来た時と同じザグレブのコンテンポラリー・アート・ミュージアムです。以前来た時にはクロアチアに着いた日に「あそこは明日オープンなのよ」と言われて、実はこけら落としだったと現地に着いてから知ったコンテンポラリー・アート・ミュージアムです。ホールでパフォーマンスをしたのは全人類で僕が最初だったという衝撃のコンテンポラリー・アート・ミュージアムです。

 改めて今回の映画祭をご紹介します。その名もFilm Mutations(フィルムの突然変異)。
 映画祭の内容は公式サイトをご覧いただくとして、本日、私が説明するのは『天狗退治』(1935年・大藤信郎)と『御誂治郎吉格子』(1931年・伊藤大輔)の二本立て。なんとそれぞれに違うミュージシャンが生演奏をするという豪華仕様。しかもどちらも二人のユニット。これなら芸の神様のお喜びでしょう。

 『天狗退治』と『御誂治郎吉格子』がYouTubeに上がっていたので参考までにリンクをはってみました。といっても前者はトーキー版です。また後者は東條秀声先生という、たしか北海道で活動されていた往年の弁士の先生が晩年に説明した音声が入っております。このバージョン、東條先生はカンを取り戻してない感じがしますし、選曲がねぇ……。

 『天狗退治』にはピアノ/Damir Prica Kafka、トランペット/Igor Pavlicaのお二人。
 『御誂治郎吉格子』にはピアノ/Mia Elezović、チェロ/Johannes Nauberのお二人。
 弁士はアタクシ。

 特にトランペットのIgor Pavlicaさん、私は今回初めて知った方ですが、クロアチア在住の日本人のKさんによるとクロアチアでは物凄くメジャーな、日本で言えばサザン・オールスターズみたいな知名度のバンドで活動をされている方なのだそうです。
 海外に来るとこういう扱いがあるから止められませんなぁ。
 実際、音がとても豊かで楽しゅう御座いました。『御誂治郎吉格子』のMiaさんは2009年に同じ場所で『生れてはみたけれど』をご一緒した方です。先日このブログでお話ししたクロアチア在住日本人四天王の娘さんでもあります。現在はドイツのケルン在住にも関わらず、わざわざ駆けつけて下さいました。こういう時、ヨーロッパ独特の近さは素晴らしいですね。

 とかなんとかやっている間にお客さんがますます入って来ちゃってリハもあんまりやらない間に開始となったのです。
 良いなあ、このアバウトさ。

 でもね、不安もありました。というのも『天狗退治』にはサイレント版とトーキー版があって、今日の今日までどちらがクロアチアに来ているか分からなかったのです。もちろん私が説明をする前提でフィルムセンターさんからお借りしているのですからサイレント版だろうと予想はしていましたが。
 さらに『御誂治郎吉格子』も回転数が24fpsなのか18fpsなのか今日の今日まで分かりませんでした。これもフィルムセンターさんからお借りしているので18fpsでの上映が規約か何かに入っているだろうとは予想していましたが。

 『天狗退治』はリハが出来たから良いんですよ。サイレント版だって確認できたから良いんですよ。問題は『御誂治郎吉格子』でしてね。リハが一秒も、リハどころか試写が一秒も出来なかったのね。僕の手元にある『御誂治郎吉格子』の練習用素材は24fpsなのね。結果としては予想通りの18fpsでしたよ。しかも僕の説明に合わせて字幕を作って頂いたから、スピードに合わせるためのアドリブも出来ないというね。やった事のない上映速度にどうにか合わせて説明しましたよ。一応、この道10年ですからね。

天狗退治 ザグレブ
『天狗退治』上映風景

御誂治郎吉格子 ザグレブ
『御誂治郎吉格子』上映風景


 そうそう字幕が凄いのよ。私の説明台本を事前にお渡ししておいたら、なんとクロアチア語と英語の字幕を作ってくれての上映ですよ。どれだけ良い待遇なんじゃ。ありがたい限り。

 上映後はこっちがサンキューって言ったのにお客さんが帰らないもんだから、急遽Q&Aコーナーが始まったりしました。自由すぎだろうクロアチア。

 すべて終わって食事をしたらさすがに疲れたワタクシ、ホテルでバタンキュー(死語)でありましたよ。

 明日はリエカに移動だ。

 
 これは全く余談ですが『御誂治郎吉格子』をYouTubeで検索したらオーストリアで上映した時の記録映像が出てきました。これは、どう判断すべきか。
|12/16| 活弁コメント(0)TB(0)
 日本人の弁士がアメリカに暮らしてクロアチアに行くというのは実に稀有な体験に違いありません。おそらくはクロアチアで三回も公演をした弁士とは僕が史上初なのではないかと思ったのです。でも考えてみたら、もしかしたら無声映画時代の弁士の方で、なにかの拍子にクロアチアに移住してひっそり生涯を終えた方がいるのかもしれない、なんて思ったりもしたのです。

 実際のところは、クロアチアで日本人が暮らし始めたのは今から約四〇年ほど前が初めての事だとか。最初の方は女性で、それから立て続けに三人の方が続いて、しかもすべて女性で、皆さんクロアチア人とご結婚されたそうなのです。一時期はその四方がクロアチアに住む日本人の中で四天王とか呼ばれていたそうな。仲が悪かった訳ではないけれど、なんとなく派閥みたいなものがあったそうな。

 だもんですから、その昔に弁士がクロアチアに移住したセンは無くなったのでした。

 クロアチアは現在不況です。政府としてはなんとか景気を回復させたい。でも単独ではどうにもこうにもならないのでEUへの加盟を目指していました。そして今年国民投票を行い賛成票が反対票を上回ったために来年、悲願のEU加盟となるのです。ところがこの国民投票、投票率が44%とあまりよくない。というのもクロアチアが景気が良かったのは旧ユーゴスラビア時代で、クロアチアになってからは一度も景気のいい時が無い、しかもEUに加盟すれば物価の上昇は目に見えている、でもこのままじゃ身動きが取れない、というので投票に対するモチベーションが上がらない状況が背景にあるそうなのです。

 それからクロアチアは今でも教会が物凄い権力を持っていて、実質政府を動かしているのもクロアチアなのだそうです。ここで問題なのは教会の主張はEU加盟と並び立たない点がいくつかあるという事なのです。ひとつには同性愛者の問題。現在、EU各国では政治の世界で活躍されているセクシャルマイノリティの方が多々いらっしゃいます。ところが教会としてはこれは認められない。この点については政府もEU加盟のため教会に必死で抵抗したのだそうです。さらに観光立国を目指すクロアチアとしては日曜日にお店をあけて、お客さんを呼び込みたい。しかし教会は、安息日は休むべしと主張する。

 てな具合にクロアチアの前途は何かと不透明なのですね。

 クロアチアでは見かける日本企業と言えば、三菱、トヨタ、東芝、それにサンリオ。キティちゃん、本当に世界中に居ます。日本企業ではありませんが我々に馴染みのある所ではマクドナルド、H&M、LUSH辺りが来ています。EU加盟を契機に、これから日本企業も増えるかもしれません。


ザグレブのキティちゃん
ザグレブのキティちゃん

 そうそう昨日行きましたザグレブのコンサートホール、集客人数は何人でしょうか……正確な人数は知りませんが、五百人程度は入れると思います。このホールでの最長公演記録を持つのはなんと日本の鬼太鼓座なのだそうです。当初四日間の予定だったのが、連日の満員で急遽一日追加され四日間になって最長公演となったのだそうで、意外な所で意外な名前を聞くものです。鬼太鼓座の他にも和太鼓のグループは幾つかザグレブで公演をしているのですが、とにかく鬼太鼓座が圧倒的な人気を誇るそうです。それから山海塾も来て、賛否真っ二つだったとも聞きました。鬼太鼓座が来て、山海塾が来て、片岡一郎が来てるんですからザグレブって街は実にブンカ的な所ですよ。日本各地にあるホールだけこさえて個性のない運営をしている自治体に爪の垢でも煎じて飲ませてやりたい、とまでは言いませんがね。

 言ってるか。
 その前に鬼太鼓座と山海塾に手前の名前並べる不遜をどうにかしなきゃなりませんナ。

 あとねクロアチアは海が近いでしょ。魚が美味い。
 アメリカも良い国ですが、魚ばかりはね、こればっかりはね。
 それがあなた、美味しいスズキだの鯛だのが食べられる。これは嬉しい。

 今日もクロアチア在住の日本人Kさんに連れられて、クロアチア料理を堪能した訳ですよ。案内して頂いたお店はメニューに英語表記すらない、つまり観光客が来る可能性がほとんどない地元の方が楽しむお店。そこでクロアチアのワインとお魚を頂いた日にゃ上機嫌で、ええ。

 一般に魚を食べる時には白ワインを選びますが、クロアチアは赤を飲む事が多いのだとか。郷に入っては郷に従えで、もしクロアチアに行かれた際には赤ワインでお魚を召し上がって頂きたいと思います。あ、ワタクシ食事を写真に撮る趣味が全くないもので画像は御座いません。この日の晩御飯はイカと鯛を頂いた事だけご報告致します。

 本日お話ししたクロアチア豆知識は全部Kさんからの受け売りです。 

 こっちでウロウロしていると、たまに地元の方から「ニイハオ」って挨拶されます。こういう時、どう返して良い物やら未だによく分かりません。とりあえず「Hi!」と言っておきましたが。

 今日は、いや今日も市内を歩き回っておりました。
 そうそう、これ大事な情報。町中にあるショッピングモールみたいな場所のお手洗いは有料でした。一回二クーナ(約三十円)をコンシェルジュっぽい人に払います。僕は気付かないでお手洗いに入って、出る時に請求されました。この時、ほとんどお金を持ってなくてね、危ないところでしたよ。

ザグレブの映画館
ザグレブにあるチェーン経営の映画館 『ホビット』を大宣伝中でした

フィルム風壁の絵
壁に書いてある絵がフィルム風

ザグレブのクリスマスツリー
ザグレブのモールにあったクリスマスツリー アメリカに比べると地味

チャップリン風
床屋さんかと思われます チャップリンじゃないかしら


 明日は本番だ、大丈夫かね?
|12/15| もやもやコメント(0)TB(0)
 クロアチアに来て四日が経ちました。
 冒頭で申し上げますが、トランクはまだ届いておりません。
 様々な方からお話を伺うと、あの空港ではよくある事だと。そしておそらくはうっかり乗せ忘れたんではなく、意図的に乗せなかったんだろうと。というのもですね、パリからザグレブまでは小型機なのですね。なので乗せられる荷物の量がグッと少ない。そこで乗せられない奴は後回しにしちゃう事があるんだそうです。でもたいていの場合は次の便、もしくは次の日の便に乗せるんですね、「うっかり乗せ忘れちゃった、てへっ」てな調子で。クロアチアの方々も、僕もそう思ってました。ところがまだ出てこない。なんでも去年末には空港が大混乱で最大十日間出てこなかった荷物があったんだそうな。
 しかしトランクには和服が入っている。
 着ている物なんて何でも出来ますけどね、どうせ映画の最中は暗くなるんだしね。落語家さんじゃないしね。でもやっぱり海外公演では和服もサービスの一環なのですよ。だから着たいじゃない?

 それからPCの電源ケーブルがトランクの中でしてね、メールチェックもままならないというね。大弱りで御座いますよ。ちなみに毎晩、お洗濯をしています。着るものもないのでね。

 でも来ないものは仕方ないので、市内観光に繰り出したんですね、今日は。
 

 ザグレブはクロアチアの首都ですが、さほど大きい街じゃありません。ただ妙に靴屋が多い。至る所に靴屋がある。クロアチア人に理由を訊いたんですが、考えたことも無かったと言われました。でも多いです。

 今回最初に行ったのはArheološkog muzeja u Zagrebu(ザグレブ考古学博物館)で御座います。ここの展示、正直言って地味でした。しかし全体の地味さを目玉展示が覆すのです。それが世界で一番長いエトルリア語で書かれたテキストに巻かれたミイラ。これは凄かった。あんなに生々しいミイラを初めて見ました。実に凄かった。「ザグレブ ミイラ」とかで画像検索すると出てきますので、興味のある方は探してみて下さい。

考古学博物館 展示1
考古学博物館 展示品1

考古学博物館 展示2
考古学博物館 展示品2

博物館 エレベーター
エレベーターのドアは手動式


 その後もあちこち回りまして……。

大聖堂 昼
ザグレブ大聖堂

市場
ザグレブ名物 市場

魚市
魚市 ピンボケ

街並み
数日前の大雪がまだ残っています

雪原
雪原のような残り方をしている場所もあります

坂道
魅惑の階段

大聖堂遠景
大聖堂遠景

メトロポリスをやるらしい
ザグレブでも『メトロポリス』をやるらしい

寿司屋 ザグレブ
寿司屋は世界中にあります

キティちゃん ザグレブ
今日のキティちゃん?



 実は私、前回ザグレブに来た時に悔しい思いをしているのです。というのがこちらはコンサート類が安いのに行けなかった。次にザグレブに来るときには必ずコンサートか劇場に足を運ぼうと思っていのです。そして今日それが実現したのですね。

コンサートホール
コンサートホール

 会場はConcert and Congress Hall Vatroslav Lisinski、演奏はザグレブ・フィル・ハーモニー、曲目はBoris Papandopulo(ボリス・パパンドプロ)のKoncert za violinu i violocelo uz pratuju orkestraとブルックナーの交響曲第7番ホ長調WAB.107でした。どうやらボリス・パパンドプロ氏はクロアチアのモーツァルトと呼ばれているっぽい。良いね、こういう肩書。

ザグレブフィル
当日パンフレットとチケット


 安といってどれくらい安いかと申し上げますと、料金は三段階ありまして、一番安いのが60クーナ、次が90クーナ、一番高いのが120クーナ。折角なので120クーナのチケットを買いましたがね、1クーナがなんと約15円。なんとオーケストラが1800円で聴けちゃう。何度見間違いかと確認したかしれやしません。
 当然ですが、国や自治体からの補助がしっかりあるからこのお値段なのですね。ザグレブでは演劇も500円程度で見られるのが普通だそうです。こういう所、ヨーロッパは素晴らしいですね。政権がどこかによらず文化支援はきっちりやる。日本では政権が代わるたびに支援の規模やらなにやらが変わる。政権どころか首相が変わるたびに方針が変わったりする。これで平気な顔して文化立国なぞと言うのだから大したもので。
 まあオーケストラやら歌舞伎やら日本で1800円になっちゃうと、ほかのジャンルが大打撃ですがね。物価相応の値段はありますね。

 ザグレブフィルは物凄く演奏が上手いという訳ではないかもしれません。けれど、この土地で育まれている音楽をようやくこの土地で聴けた喜びは、他の物には代えがたいのです。それになによりお客さんが音楽を楽しんでいた。良い夜でしたね。

 寝る前に洗濯をしなくてすめば、もっと良い夜なのですが。
|12/14| もやもやコメント(0)TB(0)
 早いもので、クロアチア篇も3日目です。しかしアメリカ旅日記クロアチア篇てオカシイよね。確実にオカシイよね。

 3日目の今日はちょっとワークショップをやってきました。
 基本的に教えるのは嫌なんです。でも少しでも活動の回数が多い方が良いですからね。やる事にしましたよ。受講生はザグレブで演劇の勉強をされている方々。取り上げるのは『生れてはみたけれど』です。というのも本作は四年前にご当地でやっておりますからね、クロアチア語の台本があるんですよ。今回初めて自分の台本がクロアチア語に訳された印刷物を見ましたが、何書いてあるのかちっとも分かりませんでした。自分の言葉とは思えない。

 ワークショップは急遽決まった事もあって参加者自体は少なかったのですが、参加した方々の積極性が素晴らしい。「少しでも多く、そして長く実際にやってみたい」と言ってきます。こういう積極性は素晴らしいですね。アメリカ人もクロアチア人も、折角参加したらやらなきゃ勿体ないという考え方なのです。こういう所は日本人、大いに見習いたいと思います。俺は手遅れかもしれないけれど。

 余談ですが聞いたところによるとクロアチア人は謙遜の感覚が非常に薄いのだそうです。英語が堪能な人はそれほど多くない(日常会話程度はOK)のにも関わらず、大抵の人が「俺って英語超得意」って言うんだとか。この辺りも日本人と好対照かもしれません。あ、ドイツ人はその辺り日本人よりな気がします。彼らの「私、英語が話せないんです」は「私、(ネイティブレベルで)英語が話せないんです」ってのに近いパターンが多いです。謙遜するんですね。

 ワークショップは複数人で声色掛け合い形式で十五分づつ、その後に一人で全部をやるスタンダードスタイルで十五分、最後に僕が日本語、受講生がクロアチア語で一分のシーンを掛け合いをする実験的形態で実演しました。お互いに何を言っているのか意味が分からない中で、映像を頼りに音と感情で演技するのはとても楽しい体験でしたよ。生演奏の方とご一緒するのに近いかもしれません。

 そういえばパリからザグレブに来る飛行機ではなんと他の日本人と同乗、ホテルには韓国人が宿泊しております。以前は東洋人なんかちっとも見かけなかったのに、最近は随分観光客が増えたのだとか。特に夏場のドブロニクなんかは日本人がいっぱいだとか。僕が初めて海外公演をさせて頂いたイストラ半島の端っこのモトヴンですら日本人観光客が大挙してくるらしいです。モトヴンに7年前に僕が行った時には、地元のアンちゃんに露骨な黄色人種差別をされましたが、近頃では日本人は金を落すと思われているらしく、そういう事も無くなってきたらしいです。良い事なんだけど、ちょっと寂しいね。

 せっかく映画祭に呼んでいただいたので、夜は映画鑑賞で御座います。何を見たかと申しますと、クロアチアくんだりまで来て若松孝二という。作品は『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』でした。若松監督、2008年にクロアチアにいらしていたそうです。日本大好きターニャは若松監督の訃報が大ショックだったと言っていました。若松監督、本当に世界中を駆け回っていたんだと、監督の残した道を後から歩いて気付かされますね。

映画祭 会場
『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』が上映された会場 ロビーの方が暖かかった

 ええと、それからシャルルドゴールで姿を消した僕のトランクはいまだに発見すらされていません(笑)。PCの電源ケーブルもトランクの中です。あれが出てこないとブログのリアルタイム更新が出来なくなっちゃう。そういう問題じゃないでしょう、俺。

 ホテルのすぐそばに日本大使館があるんで、明日あたり駆け込んで外交的圧力をかけて貰お……無理言っちゃいけない。でもクロアチアの日本大使館には四年前にアポなしで押しかけて、若干迷惑そうにされた経験があります。駄目じゃん、俺。

 写真もアップしたいのですが、電源が確保できてからね。
|12/13| 活動コメント(0)TB(0)
 早朝のシャルルドゴール空港。初めてのパリが朝焼けだった、なんてちょいと詩的じゃございませんか。空港の待ち時間では買いもしない、いや買えっこないブランドショップを冷かして時間をつぶします。こっちは買う気がなくても、向こうは日本人だとやっぱり期待するものがあるんでしょうね。巴里っ子の間でも日本人のブランド好きは有名だと聞いたことがあります。フランス人は「なぜ日本人は高級ブランドのバッグを日常のお出かけに持っていくんだ?」と思うのだそうです。たしかに遊園地に行くのにプラダとかシャネルのバッグを持って出かける人、いますね。あれはブランド物には興味のない日本人にも謎の行為です。そしてブランドが好きな方は「ブランド品は物が良いから一つ買えば一生使えるんだ」と仰言るとか。でもブランド好きの方って、いくつもバッグを持ってらっしゃる。いったいどんだけ生きるつもりなんだと。
 いえ、本当にそう言っているのを聞いた経験があるわけじゃ御座いませんが。

キティ シャルルドゴール4
今日のキティちゃん 巴里1

キティ シャルルドゴール3
今日のキティちゃん 巴里2

キティ シャルルドゴール2
今日のキティちゃん 巴里3

キティ シャルルドゴール1
おフランスのキティちゃん


 なんてな事を言っている内に搭乗時間になりました。が、飛行機が来ません。
 九時五十分発の予定が十時半になったとの告知が。さらに待ちます。十時半を回りました。まだ掲示板には「飛行機は遅れているので十時半の予定です」って書いてある。過ぎてる、もうその時間過ぎてる。
 これがフランスとクロアチアのコンボです。ヨーロッパの恐ろしさです。
 結局飛行機は十一時二十分に出発しました。当初の到着予定時刻は十一時五十分です。ま、そんなもんよね。

 飛行機は離陸直後にドォンと一発揺れた以外は安心のフライトでした。
 
 ザグレブには当然ながら遅れて到着。ところでザグレブの空港の素晴らしさは入国審査がとても簡単。パスポートを見せると簡単にスタンプを押してくれます。質問等一切なし。アメリカなんか国に入るだけでもオオゴトよ。日米安保条約とは一体。

クロアチア航空
クロアチア航空の飛行機

 さて、ここでトラブルが発生します。
 なんと荷物受取所で待機していてもトランクが現れない。誰もその場から居なくなっても現れない。つ ま り、トランクが来ていない。
 シャルルドゴールからザグレブに向かう飛行機に乗り込むとき、積み込み待ちのカートの中に間違いなくあったのです。それが来ていない。あの中には着替えとか和服とかお土産とかが入っている。もしトランクが出てこなければ僕は一週間着の身着のままで過ごさねばならない。
 空港事務所に行くとトランクの材質やら色やらを聞かれて、それから連絡先を書かされます。住所記入欄にはパーマネントアドレスを書けとしてある。もしですよ、僕のトランクが見つかっても日本に送られたらそれはそれで困っちゃいますね。持ち主より三カ月も早く帰国してどうすんだと。

 見つかり次第、滞在先のホテルに送ってもらう約束をして、それからアメリカの住所も伝えます。しかし僕らが乗る飛行機のすぐ脇まで到着していたトランクがなぜ乗っていないのだ。
 これがフランスとクロアチアのコンボです。ヨーロッパの恐ろしさです。

 でも好きです、ヨーロッパ。

 自分の手の届かない物についてクヨクヨしていても仕方ないので、空港からホテルへ。
 午後三時ちょうどにホテルロビーで毎回僕を呼んでくれるターニャとの待ち合わせだったのです。

 ターニャが現れたのは四時十分でした。
 ヨーロッパの恐ろしさです。

 ご飯を食べて、小一時間町中をぶらつきます。夜のザグレブ。美しい街。

ザグレブ大聖堂 夜
夜のザグレブ大聖堂
 
 僕はクロアチアが大好きなのです。それは初めての海外公演で、いまだにこうして読んでもらえるからでもあります。街が美しいからでもあります。人が優しいからでもあります。でも今回感じたのは、この国の庶民は平和の重さを知っているから、僕はこの国が好きなんだということ。クロアチアはつい最近まで内戦をしていた国です。だから平和に暮らせる事がどれだけ尊いかを、ちゃんと人々が分かっている。日本では核武装をしようとか、自衛隊を国防軍にしようなんて意見が出てきています。それはそれで必要な論議なのでしょう。でも戦争を止める事の方が遥かに大変だと、そして重要だとこの国の人々は知っている。
 内戦があってしっちゃかめっちゃかになった国が、今では映画祭に日本人の弁士を招くようになった。伊藤大輔の映画をフィルムセンターから借りるようになった。
 平和って素晴らしいね。

 こういう事をいうと平和ボケと言われるかもしれない。でもクロアチア人の映画祭スタッフを会話していると、ふとした拍子に戦争の話が出てきます。そういう人たちが平和を謳歌し映画祭を作っている。
 彼らを平和ボケと言う資格のある日本人はそうそういないと思うのです。
 こういうこと、芸人が書くもんじゃない気がしますな。
 
 つまり僕はクロアチアが好きなんです。

 これを書いている現在十三日午前一時。
 トランクについての続報はありません。嗚呼。
|12/12| もやもやコメント(0)TB(0)
 さてさて久々のクロアチアです。
 思えば初めての海外公演がクロアチアでした。それが未だに縁が続いているのだから有り難いものです。毎回呼んでくれるターニャには感謝をいくらしてもしたりない気分ですね。しかも今回はアメリカ生活中のクロアチア公演です。ダブル海外公演とでも申せましょうか。

 初めての時は緊張しましたよ。学生時代に叔父がデトロイトで働いていて、遊びに行ったことはあるものの、それ以来の海外でしかも一人旅。飛行機の乗り換えなんか初めてでしたしね。現地に行ったら通訳がいるという話だったのに、出てきたのは「こんにちは」が言えるだけの人で……。そういうのは通訳とは言わんのぢゃぁぁぁ、と思った記憶が御座います。しかしこのヨーロピアンないい加減さおおらかさは僕には合っているのか不快じゃないんですね。

 まあそんなこんなあんなに緊張した海外公演も、今では家を出る寸前まで手塚治虫を読んでからというテイタラクで。ダレてますね。ちょっと良くないかなぁ、なぞと。

 今回はデトロイト発、シャルルドゴール経由のザグレブ着で移動します。

 そしてね聞いて下さいよ、今回の飛行機には個人モニターがある!
 先日の日米間フライトではモニターがない機体だったので寝ているくらいしか出来ませんでしたが、今回は映画が見られる。有難い事です。

 見た映画は『るろうに剣心』と『アベンジャーズ』でごわした。
 どうだい、これからクロアチアに行くとは思えないチョイスだろう。 
 感想は書くと長くなりますので、気が向いたら後日加筆します。感想は書かないと言っているに等しいですね。
 個人的には『アベンジャーズ』の方が好きでした。よくもまああれだけの無茶苦茶な登場人物をまとめるもんだと感心しきり。

 飛行機は8時間のフライトの末、まだ日の登りきらないシャルルドゴールへ到着。
 フランスはまだ来たことがないんです。いずれここでも演りたいですね。先日は坂本頼光氏がここで『御誂治郎吉格子』やら『斬人斬馬剣』説明して好評であった由。とても嬉しいニュースでした。そしてなんと『御誂治郎吉格子』のフィルムはフランスから日本に帰らず、そのままクロアチアに来て僕が説明するのです。

シャルルドゴール空港
シャルルドゴール空港 明け方

 思えば無声映画時代、日本の映画人は西洋の映画を規範として発展を夢見ていたのでした。もちろん『御誂治郎吉格子』の伊藤大輔監督もその一人。その伊藤作品がフランスからクロアチアをハシゴ上映している。我々が伊藤監督に認めて頂ける弁士かどうかは分かりませんが、この事実だけは監督に喜んでいただけるんではないかと思います。

 そして現代日本の映画人、いや日本人は知って頂きたい。
 日本映画は無声映画時代にすでに西洋各国でこうして絶賛を持って迎えられる水準の作品を作り得ていた、という事実を。
|12/11| もやもやコメント(0)TB(0)
 明日クロアチアに経ちます。
 もう海外に行くのは慣れたもんですからね、荷造りは前日です。
 大丈夫、説明台本と和服さえ持っていけば、あとは何とかなる。

 海外にいくと毎回ドキドキするのが入国審査です。ワタクシも何のかんの行かせて頂いておりますが、今までで一番審査が楽だったのがクロアチアでした。次がドイツかな。オーストラリは審査そのものは楽だったのですが、行く先々爆発物チェックをされたのを覚えてます。そんなに爆発しそうだったか、俺。

 いまにして思えば、初めての海外公演がクロアチアだったのは、その意味でも幸運でした。誰かが付いて着てくれるならいざ知らず、完全に一人旅の状況で入国審査で意地悪な対応されたら今の僕は無かったかもしれません。その点ではアメリカの入国審査は厳しいです。「どこに行くんだ?」「何しに行くんだ?」「金は持ってるのか?」は標準的に聞かれます。

 全くの余談ですが、僕が現在暮らしているのがミシガン州です。実は生まれて初めて海外に出たのもミシガン州なんですね。叔父がデトロイトで働くことになって、親戚一同で遊びに行こうという計画が持ち上がりました。僕の一家は基本的に出不精者ばかりなので「良いよね、海外なんて行かなくて」って雰囲気だったのですが、なぜか僕は行きたくなっちゃったんですね。それで来たのがデトロイト。あの時、両親が随分無理してお金を工面してくれたのに気付いたのは齢三十を越えてからでした。

 んまあ、あの時の経験があって今の海外生活に繋がっていると思えば、ねぇ?
 そして叔父にも随分あちらこちらに連れて行って貰ったものだと、今更感謝する今日この頃です。街も、ナイアガラの滝も、ブロードウェイで『美女と野獣』も、ジュリアード音楽院も見ました。アナーバーには来ていないハズ。

 そんな昔の事をつらつらと考えながら一時間ばかりで荷造りして今日はお終い。
|12/10| もやもやコメント(0)TB(0)
 アメリカに来て100目だよ。ひゃっほい。
 日記のカウントを間違えてなければだけどな。

 本日はパーティでした。アメリカは良くホームパーティをやります。それは彼らがパーティが好きだったり、友人や同僚とのコミュニケーションツールとしてパーティを有効に使っていたりといった理由からでしょう。日本ではホームパーティは少ないです。これは住居の問題ですねぇ。
 第一に友達を住人以上呼べるスペースの家に暮らすのが容易じゃない。スペースがあってもちょっと騒ぐとすぐに苦情が来ちゃう。これじゃパーティはなかなか出来ません。いや、日本にもいるんだろうな、しょっちゅうホームパーチーをやっている人達。そういう身分になってみたい気もしますが、そういう人達と仲良くやっていく自信が皆無です。でもたまには「今日はこんな人たちと飲みました。楽しかった♪」みたいなコメントと共にシャンパングラスを片手に、ブランド物のスーツを身にまとい、若干日やけ気味のドヤ顔を浮かべる人達との交流をアピールするブログとかアップしてみたいもんです。

 上記の文章から悪意しか感じませんね。憧れが微塵も出ていませんね。
 これ以上書くの止めようね。

 幸いにして残念ながら、そういうパーテーに参加した経験は御座いません。かなり近い感じでちっとも楽しくないのには参加した事がありますけれど。

 アメリカでもやっぱりそういうのもあるんでしょうが、流石に僕はお呼びじゃないので、気配すら感じたことがありません。本日はミシガン大学のスクリーンアーツ&カルチャーズの皆が集まってのパーティです。同じ職場の皆さんと集まって語らおうというもの。会った事がある先生、授業のお邪魔させて頂いた事がある先生、接点が無かった先生、オフィスが同じ部屋のマーク先生、それに皆さんのご家族と大賑わいの夜でした。

 興味深かったのは皆さんが「ハッピーホリディ」とあいさつをする事。クリスマスじゃないんだ、なんて思っておりましたらクリスマスはキリスト教のお祝いだからなんだそうです。アメリカには多様な価値観の人がいて、多様な宗教観の人がいて、日本人よりも宗教が生活に強く結びついていて。だから挨拶はハッピーホリディなんですな。

 きっと日本にも沢山あるんでしょう、こういう自分たちでは意識ないけど他者との関係性をうまく整理するためのルールが。違う文化に身を置くのはやっぱり楽しいですね。
 それから何か一枚くらい写真を撮っとけば良かったね。

 ハッピィ100目。
|12/09| もやもやコメント(0)TB(0)
 英語の辞書を買いました、いまさら。
 英和・和英の小さな辞書は持って来てるんです。そうではなくて今回買ったのは英英辞書ですね。なるべく知らない単語を調べる時にもこっちを使うようにしようと思いまして。涙ぐましいじゃ御座いませんか。

 今回辞書を買うにあたってのポイントはコンパクトさでした。いくら語数が豊富でも重厚な装丁のものでは使いづらいですからね。使いづらいと使わなくなりますからね。そんな理由から注文したのがPocket Oxford American Dictionaryでした。お値段も手ごろだし、これで良いやと。

 今日、届いたんです。アマゾンさんから。

 デケェよ。

ポケットディクショナリー


 脇に置いてあるペンは標準的な大きさの奴ね。

 なんでこれがポケットなんだよ。お前らそんなに大きなポケットか。ルパンだって言ってるじゃないか「俺のポケットには大きすぎらぁ」って。限度ってモンがあるだろうに。
 良いんですけどね。値段には納得してるし。要は俺がちゃんと使えば、それで問題ないんです。よし、ちゃんと使って英語の勉強をするぞぅ。

 デカいよなあ……。
|12/08| もやもやコメント(0)TB(0)
 今日は『A Late Quartet』を見てきました。
 アナーバーにはミシガンシアターとステイトシアターの二つの映画館があって、どちらも映画以外にライブもやったりする地域の文化発信基地的な役割を果たしております。じゃあ映画館としてはどうかというと、ネットで調べるとみんなが「マニアックな映画ばかりを上映している」と紹介しています。毎年ハロウィンには無声映画の上映が定番の映画館だしね、クリスマスには『素晴らしき哉人生』を上映しちゃうような映画館だしね、『ロッキー・ホラー・ショー』が今でも定番の映画館だしね。マニアックですわね。

 さて『A Late Quartet』です。じんわりと良かったです。いわゆる人生の引き際が主なテーマの作品なんですが、しみじみとしていてね。こういうのは良心的なミニシアターとか、地方のちょっぴり寂れた映画館でやってくれたらと思うのですが、これからどんどんミニシアターも大変になっていきそうですしね。日本ではやらないのかな。やって欲しいなあ。きっとどっかの会社が買い付けてDVDでは出るんだと思います。でも映画館の暗闇が似合う映画です、これは。




Late QuartetLate Quartet
(2012/11/06)
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|12/07| もやもやコメント(0)TB(0)
 小学校に行ってきました。いえ僕が勉強しに行ったんではなくて。
 こちらでたびたびお世話になっているOさんの娘さんが通っている小学校で、弁士を見て頂こうという企画ですね。枠としては音楽の授業で御座いました。

 授業の進め方としては、まず先生が今日の授業について簡単に説明して、僕にバトンタッチ。実演をしたら、今度は子供達が弁士にチャレンジ、最後に音楽が変わると無声映画のイメージがガラリと変わるという実験をしてお終い。

 最初に申し上げますと、実に、実に楽しい授業でした。
 先生が簡単に弁士について解説をして下さって、僕が後を引き継ぎます。一応挨拶をしなきゃならんと思って、たどたどしい英語で話してみたんですが、これが丸っきり通じねぇ。もうね、手に取るように分かるんですよ、子供たちが「このおじさんは何を言ってるんだろう??????」ってなってるのが。表情からバッチリ読み取れるのね。ほら、大人だと僕のカタコト英語も理解しようとしてくれるじゃない?でも子供は分かるか分からないかですからね、こっちの顔みてポカーンとしてやんの。
 もうしょうがねぇやと思って、早速実演にしました。こういう時はスラップスティックコメディに限りますね。字幕も英語だと安心ですね。以上の理由からお馴染みの『専売特許(It’s a gift)』を上映。これが冗談みたいにウケるのなんの。子供たちがギャンギャン笑う。んでもって音楽の先生じゃない、なんだかちょっとイカツイ男の先生が無声映画について解説をするもんだから、子供たちの興味は増すばかり。調子に乗って英語字幕は無いけどアニメならいけるかな、と『太郎さんの汽車』を上映。こっちも大受けの介。

 ま、僕のパフォーマンスがウケてるんじゃないんですけどね。
 映画がウケてるんですけどね。

 二本見て貰ったら先生が「実際に弁士をやってみたい人」と。この時、集まっていた子供は50人くらいですか。ほぼ全員が手を挙げましたよ。凄まじい積極性ですよ、アメリカの子供達。あのね、彼らと戦争しちゃイケマセン。無理です。勝てっこない。十歳になる前に勝負がついてます。
 しかも演目は『太郎さんの汽車』ですよ。英語字幕なし、台本なしで適当に喋ってみましょうって無茶な進行なのに、子供たちはドンドン自分なりに喋る喋る喋る喋る。ふと見てみると音楽の先生も一緒になって喋ってる。イカツイ先生は楽しそうに見ていて、ネットで下調べをしてきたんでしょう、時々弁士について解説をしている。

 なんだかね感動してしまいましたよ。子供たちも先生も弁士なんて二十分前に初めて見たんです。それをもう楽しそうにやっている。これ、日本の学校だったら、少なくとも先生が自分からやったりはしませんね。もし先生がやるなら失敗したくないから事前に台本を作って練習して来たりするんじゃないかと思います。でもこっちは先生も子供も同じ立場で一緒になって弁士体験を楽しんでいる。

 僕はもっと弁士の文化を広めたいんです。学校で学芸会ってあるじゃないですか。あれに1組は演劇、2組は活弁、3組は音楽、みたいにするのが理想なんです。あっちこっちで言ってますが、無声映画はただ見て終わりじゃないんです。今でも、これからもずっと生きている人間が参加できる映画なんです。子供達が弁士をやるチャップリンやキートンなんて良いですよ。しかもそれが弁士が金儲け目的のワークショップをやるんじゃなくて、なんとなく学校で行われるようになるのが一番の理想。

 そんな理想の萌芽を日本ではなくアメリカで感じましたね。
 アメリカの学校がどこでもこうなのかは分かりません。Oさんはいくつも学校を見学して、この学校を選んだそうですから、この学校は特別なのかもしれません。という事は日本にもこういう授業が出来る学校があるかもしれません。あったら良いな。あるなら交通費だけ出してくれるなら教えに行くね。
 とにかくもし自分に子供がいたら、こっちで育てたいなと思ってしまいましたよ。色んな人種の子もいるし。凄く環境が良い。

 なんて感激を覚えてしまう程に子供たちが楽しそうにしていました。
 よくよく見ると音楽の先生が一番楽しそうにしています。
 先生ってば……。

 ここまでやって授業時間は終わりなのですが、先生は最後の企画をどうしてもやりたいというので、授業は強引に続行。これは先生独自のアイディアです。『吸血鬼ノスフェラトゥ』の一場面を三パターンの音楽で見せようというもの。それぞれが全く雰囲気の違う音楽ですので、同じ場面なのに全く違う映画かと思ってしまうでしょ?と、子供たちに説明したいんですね。さすがに音楽の先生。
 昨夜Macを駆使して作ってきたらしい三タイプの『吸血鬼ノスフェラトゥ』を上映。おお!ホントに違う映画みたいだ!!と先生が自分の作ってきた映像にヴァカウケ。
 先生ってば……。
 
ここでも例のイカツイ先生がチョイチョイと解説をしてくれます。なんて文化に対する知識の豊かな先生なんだろう。きっと一日中本を読んでたりするんだわ、だってお腹も大きくて身体が重そうだもの。
 なんて思ってたら、このイカツイ先生の受け持ちは体育だって。
 今日一番の驚きでした。
 子供に無声映画とは何かを解説できる体育の先生……。
 人材の層が違うんだな。
 
 繰り返します。アメリカと戦争するのは止めましょう。

お土産の付箋と帽子
お土産にもらった付箋と帽子。学校の名前が書いてありますので、興味のある方は調べてみて下さい。
|12/06| 活弁コメント(0)TB(0)
 会話テーブルに参加してきました。
 会話テーブルというのはミシガン大学で日本語を勉強している方々が集まって行われるお茶会で、ここではコミュニケーションは日本語のみ。そんな空間なのでネイティブが遊びに来てくれるのは大歓迎という場なのです。
 ここに参加させて貰って驚くのは二年生くらいになると、かなりのレベルで日本語が話せるようになっているということ。俺なんか、俺なんか……。実際文法的に正しい日本語なら今の若者、いや中年も含め日本人よりもちゃんとした日本語を話せる人が多いのです。ボキャブラリーが少なくても、文法的にちゃんとしていれば、聞く側も充分に補えるという当たり前の事実に気付かされる大切な時間でもありますね。みんな、文法って大事だぜ。

 日本語を勉強している学生さんたちですから、日本文化に興味のある方が多いのですが、といって日本文化なら何でもOKではありません。
 今日の会話テーブルでは音楽の話が出たんですね。そこでとある男子生徒さんが初音ミクについて語ったんですな。これが女子から実に評判がヨロシクない(笑)。はっきり「キモーイ」って言ってる女子もおりましたよ。良い日本語知ってんじゃねぇかお嬢ちゃん。彼女たちもアニメにはそれなりに興味があるようなんです。AKB48は積極的には好きではないけれど理解は出来ると言ってました。でも、ミクは駄目。中々興味深いような気もしましたが、よくよく考えてみると日本の女の子とほぼ同じ感性なんじゃないかと思った次第。

 でも良いじゃないか、俺が学生の頃なんて、もっとそういう趣味の人間には風当たりが強かったんだぞ。お前ら池袋のアニメイトがもっと小さくて小汚い店だった時代を知らないだろう。と思ってしまうのは、僕がおじさんだからですね。

 しかしまあ、せっかく日本語を勉強してるんだ。ミクでもジャニーズでも興味を持った物はなんでも好きになるがよろしい。でも若干ヒキ気味の女の子にスマホに保存してあるミクの動画を見せるのは止めといた方が良いかもしれないよ。先輩からの忠告だ。

ミクキティ
もしかしてと思って調べたらやっぱりありました、ミクキティ
|12/05| もやもやコメント(0)TB(0)
 こちらでは12月4日、日本では5日、中村勘三郎さんがお亡くなりになりました。
 エバれるほど舞台を拝見しちゃおりませんがね、でもやっぱり残念だなと。歌舞伎を見た事がない人に何を最初に見せるかと考えた時に、中村勘三郎の芝居はひとつの分かり易い基準でありました。個人的体験としては勘三郎襲名直前の『乳房榎』の面白さにウーンとなってしまったのが今でも記憶に残っています。

 こういう訃報が米国に居ながらタイムラグなしで知る事が出来る。
 嬉しいような、悲しいような。

 あんまり人が亡くなった事にグダグダ書くのは趣味でないので、今日はここまで。


怪談牡丹灯篭 怪談乳房榎 (ちくま文庫)怪談牡丹灯篭 怪談乳房榎 (ちくま文庫)
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三遊亭 円朝

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 別にアフィリエイト的な事をやってる訳じゃないんです。なんとなく画像が欲しくって。
|12/04| もやもやコメント(0)TB(0)
 12月なんですよ。
 12月はクリスマスですね。
 ですねといっても、クリスマスで浮き足立つって事もなくなりましたけれど。子供の頃は何か貰えるんで楽しみでした。11月が誕生日プレゼントで、12月がクリスマスプレゼントで、1月がお年玉。子供心に欲望まみれの三ヵ月でしたね。いまは誕生日だからって物欲が高まるという事はありません。一年中煩悩にまみれておりますゆえ。
 女の子のサンタルック、あれは可愛い。最初に考えた奴は実に偉い。

 この時期に日本の方とやり取りしますと「本場のクリスマスはどうですか?」てな事を良く聞かれます。本場はフィンランドじゃねぇかな、と思わないでもありませんが日本的なクリスマスの本場はやっぱりアメリカな気がしますので、その辺は深く考えないで良いでしょう。そもそもフィンランドもサンタクロースの本場であってクリスマスの本場じゃないものね。

お菓子
お菓子です

 でもAnn Arborのクリスマスは東京のよりは質素ですよ。盛り上がっていないって事ではなくて、生活の中に溶け込んでるんでしょうか、無理に恋人のイベントになってないからでしょうか、広告代理店がクリスマスで盛り上がらない奴は寂しい奴だと喧伝しないからでしょうか。のんびりしたものです。もっともNYやシカゴにいれば、また状況は違うんでしょうけれどね。

だんだんと電飾が
だんだんと電飾が増えております

 日本のドラマやアニメはホワイトクリスマスが大好きです。実際に12月24日の夜にロマンチックな雰囲気を感じられる程度に強くも弱くもなく雪が降るなんてことは東京じゃ、ちょっとない事態ですが、ミシガンだとどうなんでしょうかね。クリスマスに雪が降っても感動したりはしないんでしょうね。かくいうワタクシも今朝の深い霧にこそ、むしろ感激してしまったのでした。

朝の霧景色
霧の中の風景
|12/03| もやもやコメント(0)TB(0)
 クロアチアの準備が続いています。
 ここで向こうから興味深い話が。ある方が『天狗退治』は残酷なのではないか、と仰っていると。
 これはなかなか興味深い指摘です。僕の認識では『天狗退治』を残酷と思ったことはあません。けれどそう言われてみれば、人間がペチャンコになるわ、木葉天狗はジャンジャン唐竹割にされちゃうわ、ちんころ平々の首は抜けるわで残酷描写てんこ盛りなんですね。

 現在日本のアニメは世界中で大変人気があります。各地のDVD売り場に行けば分かりますがアニメコーナーには日本のアニメが沢山売っています。以前参加した東京国際アニメフェアでは海外からのお客さんが大勢いらしてました。もはやオタクは世界共通語だという人もいます。反面、日本のアニメは教育上よろしくない、と眉をしかめる人が多いのも事実です。つまりエロ描写と残酷描写が多すぎるってんですね。
日本ではそういった描写もフィクションだからOK、アニメだからOKと何となくうやむやにしてきた経緯があります。だからどんどんエスカレートして突然、非実在なんちゃらという珍なる概念が生み出されちゃったりもします。

 こういう「アニメだから良いか」みたいなのが、どこから始まったかと思うと、無声~トーキー初期にすでに同様の傾向がみられるという事が『天狗退治』から分かる訳です。映画史でいえば刀で切られてリアルに人から血が噴き出すのは黒澤明以降とされております。それまではチャンバラは娯楽なので斬り合いにも関わらず、あまり死を想起させるようなものではないのです。膨大な量の例外はありますけれどね。
 しかしながら『天狗退治』はじゃんじゃんグロテスクな描写をしているんです。良くも悪くも日本のアニメの自由さの原型は戦前ですでに確立されているんだと妙に感心した指摘で御座いました。


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|12/02| もやもやコメント(0)TB(0)