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 はい、いよいよ始まりましたAAS。
 学会の会場になるのはここ、グランドハイアットホテル。

グランドハイアットホテル AAS会場


 んまあ、豪華。こんな素敵な場所で何か出来るなんて、と思いましたが参加費払ってるんだったっけ。
 それでも楽しいけれどね。

 ミシガン大学の学会も楽しい日々でしたが、こちらは規模がとにかく大きい。
 学会はフレームとパネルという単位で進んでいきます(のはずです)。

 フレームと言うのは大雑把にいうと時間の枠。三月二十一日の十九時から二十時、これがフレーム。
 そのフレームの中に個々の研究テーマで発表される場がパネルです。つまり非常に乱暴な言い方をするとひとつのフレームの中にパネルが多いほど規模の大きな学会と言えるのです。乱暴だな、我ながら。
 もしろん規模の大きさと学会の充実度はイコールではありません。

 でもやっぱり規模が大きいと言うのは、それだけで圧倒されるものがあります。今日は初日という事もあってフレームはひとつしかなかったのですが、その中で行われているパネル数が三十四という(笑)。ひとつのパネルに平均四人の研究者が発表をしているので、この日は二時間の間に約百三十六人が発表しているんですね。

 この二時間だけで現役弁士の十倍ですよ。どうなってんだこりゃ。
 僕が効かせて頂いたパネルのテーマはReimagining History in Manga Format: From Gekiga to Syojo です。劇画と少女漫画を軸にしての考察ですね。海外に少女漫画の研究をされてる方って結構いるのね、と初歩的な事に感心したりなんかしてました。

 とにかくね、学会と言うのは楽しいものです。大勢の人が集まって知の共有をする場は必要ですよ。パフォーマーはどうしても、そういう部分での共存関係を作るのが苦手な人間が多いですからね。研究内容以外にも学ぶところが多いです。

 またAASはアジア研究の大規模な学会という事で、この七か月間に各地でお世話になった方々と早々に再開出来るのも嬉しい限り。既に今日だけでも四人のお世話になったあの方やこの方にご挨拶させて頂きました。「またアメリカ来たいんで、どうかよろしくお願いしますよぅ、えへえへえへ」って感じで。

 これから帰国まではなるべく毎日ブログを更新する予定ですが、なにしろ二十四日までは学会で他人様の話を聞いているだけ(しかも英語力の関係で理解度五割以下)なので、あんまり面白い事書けません。普段は面白い事書けてるかって言われれば、その……ねえ?

 僕の発表(というかいつも通りの実演)は最終日の最終フレームにて。トリって事にしておいて。

 
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|03/21| もやもやコメント(0)TB(0)
 明日からAASが始まります。AASというのはAssociation of Asian Studies の略でして、早い話がアジア研究学会ですね。なんでそれをサンディエゴでやるのか田舎者の僕にはよく分かりませんが、しかし大学や研究の世界に足を踏み入れてみると、結構色んな学会が世界のあちこちで開催されているのであります。

 今年はもしかしたら別の場所での学会にも参加するかもしれないしな、俺。

 AASというのはそれなりに規模の大きい学会でして詳しくは公式サイトをご覧いただきたいのですが、実は僕、AASに参加するんですね。パネリストとして。ただサン・ディエゴで遊んでたんじゃないのよ、一応この日に備えて準備……は、あんまりしてなかったような気もするけど、とにかく参加するのです。といって難しい話も、細かい質疑応答も英語力面で難しいので実演で参加させて頂くのですね。
 嘘だと思う方は二十四日のPANEL358を御覧なさい。ちゃんとIchiro Kataokaって書いてあるから。

 AASは四日間。という事はこれが終わると一日休みを置いていよいよ帰国なのです。並行して帰国準備もしている今日この頃です、ワタクシ。

 あのね、先日ね、トランクが壊れているのが分かりまして。トランクには車がよっつ着いてますでしょ。あれのひとつが、もげかけていたんですわ。もげかけたところに両面テープで張り付けてあったんですわ。どっかの空港で壊れて応急処置的に直されたんでしょう。今の宿について数日経つまで全く気付きませんでしたわ。
 今のトランクは初めての海外公演であるクロアチア行きが決まった時にお金をやりくりして買ったものです。思えばお世話になったなと思います。新しいトランクはこっちで買うべきか、日本で買うべきか悩んだのですが、日本は処分にお金がかかるんですね。こっちは宿に相談したら「ゴミ捨て場に出しといてくれれば良いよ」と簡単なもの。なら新しいのを買うっきゃない、ってんで買ってきました。

 最近のトランクって軽いのね。おじちゃんびっくりだわ。
 本音を言えばリモワのが良かったけどね、お店の人にも勧められたけどね、長い目で見たらお得かもしれないけどね、でもちょっと高いのね。
 でも新しいトランクも無事手に入ったので、これで秋からのドイツも安心ですね。

 そういや買い物帰りに現金と『地球の歩き方 西海岸編』をばっちり回りから見える状態で手に持ってバス待ちをしている六十代前半とおぼしき日本人のご夫婦がいらっしゃいました。現金なんて数ドルとはいえ、扇みたいに広げて持っててですな……。いくら治安が良いとはいえ、現金と旅行ガイドのコンボはやめなはれ。少なくともその状態でメキシコに行っちゃいかんよ、なんて思ったり思わなかったり。嫌な思いをしないといいけど。

 でも俺もオーストラリアでホテルの部屋清掃に現金盗まれた事あるしね。経験の内かもしれません。怪我さえしなきゃ、ですが。


 トランクのついでにTシャツも購入。
 とても可愛いデザインでしょ?

12th Friday
12th Friday


 あとは住所変更もしなきゃならんのです。郵便物を日本に転送して貰えるようにしなきゃなりません。ここで今、つまづいてます。
 USPSのサイトでも住所変更手続きは出来るんですが、これはアメリカ国内のみ対応なのです。転居先の州を指定しないと記入ミスになって受け付けてくれません。なら窓口でと思うのですが、USPS.comで手続きをしてくれと。だからそれが出来んから来てるんじゃ、といっても駄目。ちょっとネットで調べると対応しているスタッフで随分差があるらしくって、転送設定が国外に出来る事を把握していなスタッフが結構いるみたいなんです。酷い人になると「国外に転送は出来ません」でお終いだったりもするみたい。
 明日、もう一度郵便局に行ってみて、違う人がカウンターにいたらアドレス変更フォームが無いか聞いてみよう。

 まあそんなに色々送られてくる事は無いはずなので転送しなくても大丈夫だとは思うんですが、万が一って事もあるしね。でも万が一を想定すると、そもそも転送以前にちゃんと届けられない事もあるみたいだしね。

 やれるだけの事はやって帰りましょう。
 あと数日で片付くか分からないお金の問題も貰う方にも、払う方にもあるしさ。

 それでも幾つかの不安がありながら、まあ何とかなるだろうと思えるネット時代の有難さを感じています。簡単に時間差なしでやり取りできるもの。これがたかだか十五年前でも状況が全然違いますからね。

 そういえばサンディエゴでは短期で英会話学校に通うつもりだったんですが、問い合わせフォームから連絡したのに返信なしでした。ちょっとがっかり。でもその分、積極的にあっちっこっちに出かける時間が出来たので良かったとしますかね。
|03/20| もやもやコメント(0)TB(0)
 十日後にはもう日本だよ、おい。
 皆様いかがお過ごしでしょうか。そんなこんなで今日も遊んでいるのは僕です。

 本日お邪魔しましたのはSan Ysidroという町で御座います。カタカナ表記はどれが適当なのか分かりませんが、サン・イシドロが多いみたい。

 ここね、小さな町なんです。でも多くの人が出入りしています。なんでかと言うとメキシコとの国境にあるからなんですね。アメリカからメキシコに入るのはとっても簡単。どのくらい簡単かと言うと、国境まで行ってゲートをくぐってはい入国、ってくらいだそうです。パスポートや身分証を見せる必要すらない。その代わりメキシコからアメリカに入るには通常の入国手続きを踏まなきゃいけないらしいんですね。

メキシコへ
メキシコはこちら

 だそう、らしい、を使っているのには訳があります。なぜなら以前も言ったかもしれませんが、僕のビザは今期限切れのロスタイム状態なのです。今月末までは米国内にいるだけなら合法ですが、お金を稼いじゃ駄目、出国したら再入国不可、という情けないっちゃ情けない状態なの。だからちょっとビクビクしてました。そんなに簡単にメキシコに行けるなら、間違ってあっちに入っちゃったらどうしようと。いやまあ、とはいえ国境ですから流石に境界線はあるでしょうけれど、万が一メキシコに入っちゃうと僕に出来るのは日本に一度帰国して、再度米国に戻ってくると言う悪夢のコースなんですな。慎重にもなりまさぁね。

すぐ向こうはメキシコ
すぐ向こうはメキシコ

 San Ysidroまではダウンタウンからトロリーで四十分ほど。
 サンディエゴのトロリーは改札がありません。ちゃんと調べていないのですが、おそらくはドイツの電車みたいに抜き打ちでチェックにくるタイプじゃないかと思うのです。

San Ysidro駅
San Ysidro駅

 あんまり適当な事を書くのも何かなと思ったので少しトロリーの乗り方についてネットで調べてみたのですが、切符を買って自己申告制とか書いてあります。基本的に良い人ばっかりだからな、サンディエゴ。
 でもメキシコへの入国が簡単なせいで、国外逃亡をする犯罪者はかなり多いらしいです。とりあえず国から出ちゃえば警察は追ってこないですからね。そのあとどうやって生きていくかは別の問題ですが。
 いずれにせよ歩いて、しかもノーチェックで国境を越えられるなんて我々日本人には信じがたい環境ではあります。

 San Ysidroには大きなアウトレットモールがあります。皆様ご承知の事とは思いますが、僕はそういう所に売っている物には基本的に縁のない生活をしておりますが、ここに来たのも何かの縁、というか本当は駅の回りを無目的に散歩していたら辿り着いちゃったのでモールも見て回る事にしました。

モール案内図
なんとかモール案内図

モール中
なんちゃらモール

 
 いくつか見つけた面白い品物。

アイアンマンボディスーツ
アイアンマンボデースーツ

スーパコンバース
スーパーコンバース

ジョーカーコンバース
コンバースだJ

日焼けキティ
今日のキティちゃん 「南国らしく焼いてみたの」


 本当にショッピングモールに興味が無いのが伝わってくるチョイスですね。
 いやいやそれなりに楽しかったですよ。昼食に頼んだシュリンプバスケットが海老よりもフライドポテトの方が多くて、若干キレ気味になった以外は。

ケチャップタンク

 アメリカのファストフード店でお馴染みなのは↑のケチャップタンク(正式名称は知りません)でしょうか。ケチャップやバーベキューソースが好き放題使えます。ドブンドブン使えます。


 余談ですがこのモールでは「困った事があったらインフォメーションセンターへ」という内容のアナウンスが日本語でも流れます。サンディエゴって、まだ日本との直行便が出てないのね、今年出来るみたいだけど。それなのにそのサンディエゴからメキシコの国境ギリギリのアウトレットモールまで、日常会話がこなせない英語力の日本人が、アナウンスが必要な程の人数、定期的に来ているのかと思うと、日本人の買い物好きには日本人ながら驚かされる訳です。

 そういや昨日も「東京から来た」って言ったらバスの運転手さんに「Rich man」て言われたしな。俺がどれだけささやかに暮らしてるか知らねェな。
|03/19| もやもやコメント(0)TB(0)
 Point Lomaに行ってきました。日本語だとロマ岬。
 この辺りが今日のサンディエゴの始まりの土地なのだそうです。Juan Rodriguez Cabrillo(ホア・ロドリゲス・ガブリーヨ)という人がヨーロッパ人としては初めてここに辿り着いたのだとか。ガブリーヨの日記に「囲い込まれた素晴らしい天然の良港」と書かれた土地、海岸にセージが生い茂っている土地、白銀のような砂浜の土地、ガブリーヨはここをサン・ミゲルと名付け、後にサン・ディエゴになったと解説書には書いてあります。

 そういった歴史のある場所なので現在は国定祈念公園に指定されております。
 景色は実によろしい。

ロマ岬から


 天気のいい日はメキシコが見える事もあるんだそうで。
 それから1~2月に掛けてはホエールウォッチングも出来る、何もないけど色々ある場所なんで御座いますね。


展示
小さいですが展示も

ガブリーヨ
ガブリーヨ記念碑

セージ
かつては生い茂ってたセージも今では生息地の70%が失われてしまい、ここは保護区のひとつ


 最近、諸事情で現金をちっとも持っていないんです。ところが事前に調べたら入園料が$5かかるってかいてあったんですが、バスに乗って行ったら素通り出来ちゃいました。車で入るには$5、路線バスならそのまま入れるらしいです。不思議ね。
 そんな訳なのでサンディエゴに一定期間滞在して、フリーパスチケットを持っている方は是非行って頂きたい場所であります。園内には「蛇に注意」みたいな看板がありまして、へぇ蛇が出るんだ、なんて軽い気持ちでおりますと、どうやら蛇とはガラガラヘビの事らしいのです。いやいや、もうちょっとはっきりお知らせしておくれよ。ガイドには「見えない場所には手を突っ込んではなりません」と書いてあります。このガイド、日系人の方が訳しているのか時々言い回しが面白い。

 記念コインマシーン
観光地お馴染みに記念コイン製造マシーン
|03/18| もやもやコメント(0)TB(0)
 頑張ってブログ更新が嘘にならない様に頑張ります。
 おぉ、なんという稚拙な日本語。

 帰国が間近に迫ってきました。皆様にお願いしたいのは仕事を下さいという事ですね。
 もうね死活問題ですよ。だってねぇ、この七ヵ月間ご無沙汰しちゃって、義理欠いちゃって、挙句におそらくもう出る事なはいであろう現場まで出来ちゃって。帰国子女の悩みってやつね。誰が子女だ。

 そういう訳で、現在かなりスケジュールはガラガラ自由が利きます。どうかよろしくお願いします。でもすでに来年の仕事が決まってたりもします。不思議ね。

 とまあここまでは前置きで、帰国一発目の仕事のご案内が14日だよというお知らせです。遅!

 詳細は以下の通り

●第9回ぐらもくらぶイベント 『ある交錯期 無声映画と発声映画 転換点を顧る』 ~片岡一郎氏帰朝記念~
2013年4月14日(日曜日) 19時00分~21時00分(18時30分開場)
入場料:2,000円 (別途会費2.000円程度・先着順にて交流会予定)
※空席ありの場合は当日入場可能
弁士:片岡一郎 (活動写真弁士)
進行:保利透 (ぐらもくらぶ主宰)

会場・神保町・らくごカフェ

千代田区神田神保町2-3 神田古書センター5階
地図

1920年代に映画界をを席巻した「発声映画=トーキーシステム」。
しかし、その登場はディスク式(円盤レコード式)システムから始まり、またパート・トーキーや音響版など、所謂「オール・トーキー」作品になるまでには紆余曲折あったのです。

今回は約80年前に日本で公開された当時の手法を完全再現しようと言う試みであります。

独逸真空管アンプ音響によるトーキー映画の上映と、映画説明の実演で繰り広げられる、昭和初期の「ある交錯期」を追体験してみませんか?

※イベント本編には、88分の映画参考上映を含みます。(1927年米国制作ジャズ音楽関連映画)
※今回は都合により「日曜日夜」の開催になります。

予約方法
ぐらもくらぶ事務局→ gramoclub78@gmail.com
電話予約(らくごカフェ)→ 03-6268-9818(平日12時~18時 )
(タイトル【ぐらもくらぶ第9回】、本文に【お名前】【電話番号】【人数】【交流会参加可否】記載の上お送りください。予約完了後数日以内に返信メールいたします。また返信メールが迷惑メールとされてしまう場合がありますので、メールアドレスに携帯電話のアドレスを記載される場合は「gramoclub78@gmail.com」からのメールを受信拒否しないように設定をしておいてください。また、迷惑メールフォルダもご確認ください)

協力:森田富雄氏(独逸真空管研究家)
予定使用システム「戦前ドイツ真空管アンプ&スピーカー」
主催:ぐらもくらぶ事務局
ブログ「レコード狂の詩」
ぐらもくらぶ主宰・事務局:保利透




 帰朝記念です。朝帰り記念じゃありません。
 違うんだ、俺が考えたギャグじゃないんだ。本当にそう間違えてる奴を見た事があって、思い出しただけなんだ。

 僕は参考上映作品の説明を担当します。1927年のジャズ音楽関連映画といえばアレです。映画史をやればかならず出てくるアレです。今回台本を書くにあたって初めて腰を据えてみたのですが、これはどうしてなかなかの佳作ですよ。どうしても映画史の技術面から評価される事が多い作品ですが、筋もしっかりしていて日本人好みです。
 実は見た事がないんだよね、という方も結構いらっしゃると思います。是非、お運び下さいますようお願い致します。

 というかね、帰国一発目くらいは大勢の方にいらして欲しいじゃない。芸人として。
 米国で片岡一郎が成長したかどうか、見に来てやって下さいませ。
|03/18| 活弁コメント(0)TB(0)
 大分放置してしまった閑話休題で御座います。
 久々に更新いたします。この調子で帰国までリアルタイムで書きつつ、穴も埋めていければ良いなと思っております。

 物を書くのも、芸を磨くのも、筋肉を鍛えるのも唯一のコツは継続なんですな。受験では一日休んだら三日遅れるなんて事を言いますが、一日休んだら遅れるのは一日分です。でも今日だけが、今日も良いか、になるのがとても怖い。一日休んで、次の日にフル起動できる人は、それだけで才能がありますよ、実際。

 さて本日は『Emperor』を見て参りました。
 
Emperor
Oの字が日の丸になっているポスター


 片岡孝太郎が昭和天皇を、トミー・リー・ジョーンズがダクラス・マッカーサーを演じるというのでひっそりと話題になったものの日本公開が未定だった事もあり日本では大きく取り上げられずに米国公開を迎えてしまった感のある作品です。
 一部報道では『太陽』『靖国』に並ぶ問題作となる可能性がある、なんて書かれておりました。これは日本人として見ておかねばなるまいと、こちらのシネコンで見たんですが、いやはや、これ悪くないですよ。少なくとも話題ばかりが先行していざ見てみたら「なにが問題なの?」ってなった『靖国』より僕はずっと好きです。さらに『Emperor』は別段問題作じゃありません。少なくとも僕にとっては。

 実際、本作の主人公は昭和天皇でもなければマッカーサーでもありません。タイトルこそ『Emperor(天皇)』ですが実質的にはボナー・フェラーズという方(この人も実在の人物)が物語の中心人物です。マッカーサーと共に日本統治の為にやってきたフェラーズには実はずっと想っている日本人女性がいて……、というのが本作のメイン部分。
 引き裂かれた二人の恋を通じて戦争の悲劇と、戦後日本統治、特に戦争責任が誰にあるのかを決めなければならない非日本人にとっての戦後日本における苦悩がここでは描かれています。
 個人的にはっとした点はふたつ。
 まずは何と言ってもファーストシーンです。ここでは原爆投下の記録映像が使われています。以前このスミソニアンの航空博物館に行った時に触れましたが、あの博物館に所蔵されているエノラ・ゲイを原爆投下の資料も混みで展示しようとしたところ一部の人々の猛反発にあい展示そのものがなくなってしまった事があります(現在は別館に展示)。原爆を兵器として使用した歴史は今なお非常に扱いが難しい事実なのです。それなのに原爆投下から始まる映画が米国のシネコンで上映されている。
 そしてもう一点は字幕の使い方です。舞台が終戦直後の日本ですから日本語も時折出てきます。普通の映画なら全ての日本語に英語字幕をつけて公開されるでしょうが、この映画はストーリーに重要な日本語以外は字幕が出てきません。映画館に来た多くのアメリカ人観客は時折交わされる日本語の会話の意味が分からないのです。『Emperor』は日本とアメリカが手を取り合って新しい時代を作っていく希望を予感させて終わります。実際、マッカーサーと天皇の対面を実現させたフェラーズが満足げに「飲みに行こう」と車に乗り込み颯爽と焦土と化した東京の走り抜けてゆくのがラストシーンです。しかし作中では翻訳されない日本語が何度も出てきます。両者が真に手を取り合う事の困難さがここに描かれています。

 こうした視点は監督のピーター・ウェーバーがアメリカ人ではない事にも由来するでしょう。ちなみに『真珠の首飾りの少女』『ハンニバル・ライジング』の監督でもあります。そういった訳で戦争に勝ったカッコ良いアメリカ軍人は出てきません。むしろに日本や天皇に気を使い、配慮するアメリカ人の姿がこれでもかとばかりに出てきます。そのせいか、僕が見に行った回の周囲のお客さんの反応はイマイチだったように感じました。
日本の世論がTPPだオスプレイだで、かなり割れている中で、こういう映画を結構大きな規模で公開しちゃうんですね。一般的なアメリカの方々だと「TPPってなんじゃならホイ?」って人も多いらしいのですが、日米関係に関心のある人にとってはTPPは当然知っている事、ましてや本作を制作するにあたっては当然それらの状況も考えるでしょう。でもやっちゃうのがアメリカの自信というか、凄い所。
それから時代考証はしっかりやっている印象です。僕は専門家ではないので詳しくは分かりませんが、少なくとも『パールハーバー』(2001)のように日本軍司令官が乗っている戦艦の中に日本庭園と鳥居がある、みたいな全身脱力ツッコミ所満載系映画ではありませんでした。

日本公開が未定だった、と先ほど書きましたが今調べたところ日本公開は7月に決定したそうで公式サイトも立ち上がっています。邦題は『終戦のエンペラー』のようです。これは「天皇」という単語を避けたんでしょうかね。気になるところです。正直、ちょっと違和感のある邦題ですが、単純に『天皇』にしちゃうと観客層が狭まっちゃいそうだしなァ。


こちらはトミー・リー・ジョーンズからのメッセージ動画

 最近、日本における愛国心が(ごく一部の人でしょうが)おかしな方向に向かっているように感じられます。中韓に喧嘩を売ってりゃ愛国だってのはあまりにも、あまりにもですよ。そうした状況下で本作の日本公開が決まっているのはとても嬉しい。海外の目から見た終戦直後の日本がどんなものであったかの一端を、我々は『終戦のエンペラー』を通じて知る事が出来ます。外から日本に対してどんな視線が向けられていたか、この時期に触れる事が出来るのは日本人にとってもありがたい事ではないでしょうか。

 それから片岡孝太郎の天皇は昭和天皇は味があって良ぅ御座いました。『太陽』ではイッセー尾形が演じていますけれど、ここから分かるのは天皇を演じるのに重要なのは演技力よりも身体性って事なんです。あの時代をどっかで間違えたような悠然とした動きはジョークでやるなら結構誰でも出来ますが、きっちり演じようとしたら普通の役者さんじゃ無理なんです。別にお二人に演技力が無いって言ってるんじゃないですよ、念の為。
 片岡孝太郎の他には伊武雅人、西田敏行、桃井かおり、中村雅俊、初音映莉子といった面々が出演しております。初音映莉子はキーパーソン抜擢に応える好演をしておりました。

 最後に申し上げておきますが、僕の英語力ですので会話の細かい部分は聞き取れてません。7月になったら答え合わせをしに日本語字幕付きの上映にも行かなきゃ。

 全然違う話だった!てな事になったゴメンね。
 でも、しばらく怠けていた僕に、今日はブログを書かなきゃと思わせてくれる映画だったのは事実です。
|03/17| もやもやコメント(4)TB(0)