納得がゆかぬ

 真面目に書きませう。たまには。いやさ、いつも真面目なのですよ。
 
 ちょいと偉い人と会いました。大きな事務所の人ね。でもって例によって「何をやってるんだ」「弁士です」みたいな会話をしたのです。その人の見解としては活弁に目を付けたのは面白いと、ただ落語家か講釈師になって余技として活弁はすべきである、ってんですよ。何故かといえば活弁は二度三度と観に行く気にはならんちゅうんですね。でも落語は下らないと思うけど又観たい聴きたいと思うんだと。そういうことですわ。その方は良いお年で徳川夢声も知ってるし、夢声の活弁も聴いたことがあるんだそうです。今、アタシらが弁士の仕事を頂いているのは珍しいからで、あと5年もすれば仕事はなくなるのだそうです。

 納得がゆかぬ。

 いや、抵抗はしましたし、多少は意見を変えさせましたがね。しかし現実問題として芸能界にしてみりゃ活弁なんざ古臭くてどうにもならんものなのでしょう。前提としてそういう認識だということが物凄く良く解った一時でした。  ただね、思うのです。無声映画は古い映画であるという意見、これは支配的です。だから現代に於いて弁士は古いものが逆に新鮮だというロジックで活弁と無声映画の魅力を語ります。それはつまり、現代では失われてしまったものに対する認識に近いのです。古いものがかえって新しい、それは間違ってない。でもそんなキャッチコピーが何だか古臭いような気がしていたのです。レトロブームで繰り返し喧伝されてきた「古き良き」という言葉、あれと何ら変わる事のない手垢にまみれた言葉にずっと聞こえていたのです。状況を説明するために一つの言葉を多用すると、その言葉は急速に色褪せて行きます。いちいち例を挙げるまでもなかろうかと思いますが、それでもあえて挙げるならば「カリスマ」「セレブ」といった言葉達です。これらの言葉は酷使されたが為に冗談でしか使いようがなくなっています。我々を取り巻く「古くて新しい」魅力というのは、もはや魅力的な言葉では無くなっているのでです。

 ある方が「無声映画を評して昔も今も人間は変わっていないという論理で古典映画を論じるのは今更である」といった論旨の文章を書いておりました。どなだったかは失念してしまいましたが、解り次第直すとして、注目に値するのはその方の文章の続きでした。「古典映画を観るときに我々はたった80年前の事がこんなにも分からない、という点に着目すべきである」と論じられていたのです。この意見が全面的に正しいのではないのです。書かれた御本人も理屈の上での問題として、その文章を発表したのだと思います。しかしながらその文章は「無声映画や活弁なんて古臭い」と思っている人が沢山居る中で「古いものが新しい」と言っても意味がないのではないか、むしろ違った魅力を語るべきなのではないかと考える契機にはなったのです。

 では、無声映画・活弁の魅力を何とするか。これが難問で、偉そうなことを書いたって答えを提示できやしないのですが、それでも一応の発想は持つことが出来ました。あえてお知らせする事でも無いのですが、こんなアタシの文章にお付き合い下さっている方が何人かいらっしゃるようなので、その方々のご批判を頂き、自身が恥を晒す事でもう一段階考える為にそれを書きます。先に言い訳しておきますが、これとて新しいロジックではありません。ただ「古くて新しい」よりはマシでありますし、少なくとも考えている事を発表する意思表示として書くのであります。

 いかんね、だんだん話が大仰になってきた…。

 つまりですな無声映画というのは古い映画なのでは無く、若い映画だと思うのはどうだろうか、ってことが言いたかったのです。

 というのも無声映画ってやっぱり関わっている人がみんな若いのです。歴史も若いのです。何もかもが若いのに後の巨匠たちの老成した姿で捉えるから必要以上に歴史の重みを感じてしまうんではないか。そうこの頃は考えているのです。○○監督の作品に語りを付けるなんてズウズウしいと思われようと何だろうと弁士は語るべきであり、音楽家は音楽を付けるべきなのです。シェイクスピアだってモーツァルトだって個々のクオリティはともかく様々なアレンジをなされて現代に繰り返し甦っているではないですか。なのに無声映画は未だに新しい手が入ることが何だかケシカラン事のように思われているのが問題の一つなのでしょう。

 いいんですよ、ベテランの声優、売れてるタレントがどんどん無声映画を語れば、ミュージシャンがどんどん音楽を付ければ、ミュージシャンだったら弾き語りが出来る人なんか幾らでもいるでしょう。どんどんやったほうがいいのかも知れません。ようは本業の弁士がそれに負けない何かを持っていればいいのです。

 嗚呼、又話題が専門的になってしまった。誰に向けて書いているのかと言えば自分に向けてなのです。でも活弁やら無声映画にちったぁ興味があれば言ってる事は理解ってもらえる内容だとも思います。そんな人が増えるとよいね。

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Author:片岡一郎
ご用命・その他
syoseibusi@yahoo.co.jp まで

公演情報
●百物語の夕べ ー第4回 怪談話と西洋怪奇映画ー
 三遊亭圓馬 怪談話『佐賀の夜櫻・鍋島猫騒動』
 片岡一郎   活動写真『カリガリ博士』
 日時/8月16日 18時〜
 会場/向島百花園 御成座敷
 料金/¥4000(お飲物付き・入園料込み)完全事前申込み制
 申し込み方法/お電話、FAX、メールのいずれかで、お名前、ご住所、お電話番号、参加人数をご連絡ください。
           受付確認後、下記指定口座へ会費のお振り込みをお願いいたします。
 電話・FAX/03−3619−4997
   メール /100ss@myad.jp
     口座/加入者名 百花園サポート士隊 00150−8−317047

●第601回無声映画鑑賞会 [なんてたってバスター・キートン]
 『キートンの大学生』(1927・米) 弁士/澤登翠
 『キートンの滑稽恋愛三代記』(1923・米) 弁士/片岡一郎
 『キートンの警官騒動』(1922・米) 弁士/斉藤裕子
 日時/8月25日 18時30分〜
 会場/門仲天井ホール
 料金/一般1800円 学生1600円 前売、電話&E-mail予約1500円
 ご予約/無声映画鑑賞会事務局
       電話/03-3605-9981 (受付時間 平日の午前10時〜午後6時)
       FAX/03-3605-9982
       E-mail/katuben@attglobal.net

●第602回無声映画鑑賞会 [第四回澤登翠一門会]
 『百万両秘聞』(昭和2年・マキノ御室)
 弁士/澤登翠、片岡一郎、桜井麻美、斉藤裕子
 日時/9月29日(月) 18時30分〜
 会場/門仲天井ホール
 料金/一般1800円 学生1600円 前売、電話&E-mail予約1500円
 ご予約/無声映画鑑賞会事務局
       電話/03-3605-9981 (受付時間 平日の午前10時〜午後6時)
       FAX/03-3605-9982
       E-mail/katuben@attglobal.net

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