寿会

 一龍斎貞寿という芸名は我々弁士とも縁がありまして、初代貞寿はかの(どの?)山野一郎先生だったのでした。無声映画が無くなってしまった後、弁士は揃って仲良く失業しちゃったのは拙ブログにいらっしゃるモノズキな皆さんならご承知と思います。失業した弁士がまず考えたのは、今まで培った話術を活かせる仕事はないかという、至極当然な事でした。そこで漫談や腹話術、紙芝居、司会、そして講釈師と様々な人生があったのです。山野先生は一龍斎貞山先生の門下となり貞寿の名前を貰ったのです。もっとも貞寿としての活動は大してせず、じきに山野一郎に戻って漫談の方で芸能活動をしていたのが晩年の山野先生だったようです。

 そんな訳で、大きな名前でも何でもない貞寿ですが、芸名としては見た目が大変よろしい。空けたままにしておくのも勿体ないと思ったかどうかは判りませんが、ともあれ平成になってから貞寿の芸名が復活したのです。それが現・貞寿さんです。有難いことにアタクシは親しくさせて貰っておりまして、この日はそんな貞寿さんの勉強会でした。

 もうね、良く出来た人なの、貞寿さんは。アタシやアタシと大学が同期の某講釈師よりも芸暦は短いのですが、でも人間性の問題でしょうかね、貞寿さんの方がしっかりしてますよ、ええ。HPhttp://www.k5.dion.ne.jp/~teijyu/index.htmlを見ると仕事もバンバンこなしていて素晴らしいったらないのです。ちまみに愛称は「じゅじゅ」で御座います。
 この日の出演はと申しますれば。

 宝井琴柑 
 一龍斎貞秀『カイダーン』
 一龍斎貞寿『ショート講談』
 一龍斎貞秀『富田屋お信』
 安達成彦『雪の姑娘』朗読
 中村かおり『本当にあった怖い話』
 佐藤由美『飴屋幽霊』朗読
 一龍斎貞寿『吉原百人斬りの発端』

 で御座いました。琴柑さんの演目は正確に演台を知らないので割愛。牛若丸の話ね。

 第四回の今回は怪談特集でありました。

 何と言っても怖かったのが中村かおりさんの『本当にあった怖い話』でした。怖いのよ、本当に。アタシの前に座っていた女性などは怖がっているのを通り越して怯えていましたもの。芸人が話すんだったら、そこまで怯えた人がいれば手加減したりするんでしょうが、この方は声優さんだそうで手を緩めません。怖ぇえつぅの。

 対して講談の怪談話は怖くありません。扱っている時代が違う所為もあるのでしょうが、それよりも話芸というものが本質的には娯楽であり、聞き手を恐怖させるように出来ていない事が良く解りました。

 怖さとはなんでしょうか。「怖い話」と「怪談」の差とはなんでしょうか。リアリティの差かもしれません。でも中村さんの話が怖かったからといって「怖い話」が本当にあった事の証明にはなりませんやね。ましてや話術の差では無い訳です。結局は我々聞き手が「本当にあった」話のように感じてしまうか否かの差なのでしょう。そして嘘を本当にあった事のように、本当にあった事をフィクションめいて話せるかどうかはそれなりに大きな問題だと思うのです。講談も活弁もライブなのですが実際に体験した人の話には生っぽさでは及ばないですね。でも素晴らしい朗読よりも前座の落語の方が生っぽかったりしますね。

 パソコンとネットの普及で家に居ながらにして多くの娯楽が楽しめるようになりました。映画やCDは売り上げで苦戦しています。そんな時代に、いやそんな時代だからこそ、次はライブが見直されると言う人は少なくありませんし、そうであれば良いと思ってはいます。ならば我々ライブの人間は生っぽさの研究をしておいた方が良いかもしれません。生っぽさは芸とは別のモノですが、必要に応じて仮面を付け替える必要は生じて来ようと思うのです。

 例によってテーマに踏み込みきれない自分の文章がもどかしいのですが、仕方ありません。仕方ないので本題に戻します。

 貞寿さんの『吉原百人斬りの発端』大いに楽しめました。この方には二ツ目になったら『折鶴お千』を講談で演ってくれと頼んであるのです。話を合わせて呉れているだけかもしれませんが。
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|08/11| 舞台コメント(0)TB(0)












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