アタクシは日大の芸術学部という所におりました。もう少し詳しく書くと演劇学科の理評コースなのであります。理評というのは芸術学部の造語で、理論・評論を摘めたものが理評です。では私が理論や評論を学んでいたかといえば、どうにもさっぱりそうした記憶が無く、日々をボンヤリと過ごしていたように思います。同じ学費を払っていながら演技コースや照明コースはジャンジャン機材を使って学費の元を取っていくのに対し、理評コースは舞台を観に行くのに補助が出るでなし、唯一の特典としては原稿用紙が貰えるだけでした。しかも、その原稿用紙がミョウテケレンな原稿用紙で文字枡が長方形の何とも書き辛い紙でした。故に私一度もその原稿用紙を使った事がありません。そんな理由もあり、私の母校に対しての恨みは凄まじく、現在に至るまで何かにつけ母校を利用し、一生をかけてでも学費の元を取り返す所存なのであります。しかしこの行動はハタから見ていると、卒業をしても学校に顔を出す母校大好きっ子に見えてしますうのがタマに傷なのですが。

 さぁて、今回のテーマは評論であります。上で書いたように学生時代は理論・評論をやっていたオイラですが、現在では評される側に回っているのだから人生とは、これ愉快なものであるといえましょうか。

 実は最近立て続けに自分に向けられた二つの批評を読みました。どちらも七月の無声映画鑑賞会、つまり一門会を観て書かれたものであったのです。本当は全文掲載したいところですが要点のみを紹介します。

批評A
 活弁を見るのは初めてで、弁士が芸人かどうかに関心があった。見た結果としては澤登翠は紛れもなく芸人であったが、その弟子からは芸人らしさを感じ取れなかった。落語家であれば前座でも芸人らしさというものは出る。勿論、芸人らしくある必要は現代においては無いのかもしれないが、澤登翠という「芸人」の弟子として人前に出る以上、弟子にも芸人であって欲しい。
批評B
 活弁は既に何回か見ている。片岡一郎の語りは所々笑いを取るようなやり方で、受け持ちの場面とはそこそこマッチしていた。しかし息継ぎや語りのリズムに癖があり、映画から意識が逸れてしまうのが残念。

 この二つを読んで私は片方からは大いに刺激を受け、片方からは大いに苛立ちを感じたのです。どちらがどちらとは言いません。知りたい方は個人的に聞いてください。でもまぁ、解りますわな。

 批評はこの数年で劇的に変化したジャンルと言えるでしょう。それは誰しもがプロと同じスタイルで自分の感想を発表できる事に起因します。私が小学校の頃はプリントはまだ先生の手書きを藁半紙に印刷した物でした。ほんの十数年前までは活字というだけで最低限の手間と費用がかかっていたのが、今では手書きの方が手間がかかる様になってしまいました。言うまでも無くワープロ、そしてパソコンの普及が原因です。かつてプロのための道具であった活字は誰もが利用できるツールになった訳です。

 プロかアマチュアかを決めるのは能力ではありません。プロのスタイルを維持できるかという点が大事です。その意味においてプロの文筆家の定義は活字の流布のよって曖昧さを増したといえます。まして批評は劇作と違い誰でも出来ます。感想をただ書いただけでも一応は批評の体を成すのですから。

 自分はプロとアマの見分け位はつく、と仰る方も居るでしょう。しかしプロの外面をまとってしまうと我々は先入観で対象をプロと決めつけてしまいますから、言うほど両者の見極めは容易ではないのです。帝劇の舞台に素人が出ていたとして、その人をアマチュアと断言できる人がいるでしょうか。多くの人が「下手なプロ」として認識するだけでしょう。

 活字が誰でも利用でき、その次に来たのはインターネットでした。これでいよいよ誰でも自分の意見を発表出来るようになります。批評をしたい人にとって現代ほど素晴らしい時代は無いといえるのです。結果として批評や感想、評論、自論、暴論その他色々、ネット上には言説の嵐が常に巻き起こっているのはご存知の通りです。その最たる例がブログであるのも、これまたご存知の通りです。

 世間の人がこれほど何かを語りたがっているとは誰も予想していなかったのではないでしょうか?

 批評には正解はありません。その事がなおさらアマチュアのプロ化、プロのアマチュア化を促しています。別にアマチュアを批評をしたっていいのです。言論の自由を挙げるまでもなくね。ただし人目に触れる場所に意見を出す以上、自分の言葉のもたらす影響、自分の言葉の意味を考えて頂きたいとは思うのです。自戒の意識も込めてこの項は書いております。

 誰もが批評家になれる現代。国語教育で必要なのは読み取る力以上に書くときの配慮かもしれません。
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|09/05| もやもやコメント(0)TB(0)












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