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リスペクト 溝口健二

 南明奈って娘が一寸可愛いと思ってるのですが、いかがでしょうか。関係無ぇっすね、ええ。活動写真弁士の片岡一郎です。新・文芸座で喋ってきました。その備忘録で御座るよ。ニンニン。
 
 常々言っている事ですが、ここではっきりと言っておきましょう。

 アタシは『瀧の白糸』よりも『折鶴お千』の方が好きです。てかいい映画だと思ってます。

 いや、作品の持つ情緒とか、監督の特性とかを考えたら、それから公開当時の評価をみたら『瀧の白糸』の方が評価が高いのは分るんです。

 初めて『折鶴お千』を見たのは世田谷文学館でした。まだ素人ファンとして澤登翠の公演をちょろちょろ観て廻っていた時分。大して広くもない会場に楽団も付いての上映だったと記憶しています。この会場での感動とラスト付近での場内のすすり泣きが未だに忘れられないのです。場内と自分の感覚、それに勿論パフォーマンスと映画が見事にシンクロして「これは凄い作品だ」と思ったものでした。私の好きな無声映画でベスト3を選べと言われたら確実に入ります。その位好きな作品が『折鶴お千』なのね。対して『瀧の白糸』にはそうした経験がありません。小さな声で本音を言うと『瀧の白糸』アンマリスキジャナイ。

 師匠の語り芸としても良い時の『折鶴お千』は凄いです。圧巻な時があります。

 そんな『折鶴お千』ですから演る気はさらさら無かったのです。10年とか15年とか、せめてそれ位キャリアを積んでから演るつもりでいたのです。そしたらさぁ、去年よフィルムセンターに演れっていわれて演りましたよ、しぶしぶ。まぁそれだけ思い入れの強い作品だから他の奴が語るよりは良いかなとも思って。もの凄いプレッシャーでしたよ、当日はずっと吐き気がするんですな。ちなみにアタシは本番前の緊張が凄いのです。30分前には大概吐き気にさいなまれてます。誰も信じてくれないけれど、でもホントなんだよォ。

 とに角、フィルムセンターで演りました。で、もうしばらくはオサラヴァだと思ってたら新・文芸座ですよ。もうね、やっぱり吐き気、イライラ、凄かったのです。

 出来は言い訳しません。噛みました!メチャクチャ。いや、全体としては悪くなかったんスけどね。これで噛まなきゃもう少し…と思いながら自分の出番を終えたのですってやっぱり言い訳してます。恥ずかしい事です。なぜあんなに噛んだか、理由ははっきりしてるのですが、それは書かないでおきましょう。ご来場の皆様、噛んでスミマセンでした。その代わり噛んだ以外の事は謝りません。おゝ強気。

 でも作品解釈自体は発見があったから自分にとっては良いんだ。うん。
 それからこの日は大入りが出ました。ありがとう御座います。
大入り袋


 こういう作品と対峙出来るから弁士をやってるのです。

 以下、マニアの方用の情報です。興味のある方のみ、続きを読んで下さい。
 アタシの前説では話しましたが、実は新・文芸座における『折鶴お千』はマツダ映画社に保存されている35㎜可燃性フィルムにより上映でした。なので画面は傷は目立ったものの何とも言えない深みがあったっしょ?気付いた?にしても燃えなくて良かったね。

 それからねマツダ映画社所蔵版と、松竹からビデオで出ている版と、昨年上映されたフィルムセンター所蔵版(これのマスターはプラネット所蔵版です)は若干尺が違います。一番長いのはプラネット所蔵版で、一番短いのはマツダ映画社所蔵版なのですが、最長のプラネット所蔵版でほんの1~2秒欠けている部分がマツダ版にはあったりします。

 どういう差があるのか、気付いた範囲で挙げてみようかと思いましたが、あんまりメンド臭いので止めます。知りたい方は直接声を掛けて下さい。

 話を戻しますと所蔵している場所によってフィルムの長さが違うのは、とりもなおさず映画がフィルムという物質を媒介にしている芸術であることを示しているのです。物質ですから使えば痛みます。痛めば失われていきます。そういうコトなんですね。しかもこの三つのプリントを比較検討して最長版『折鶴お千』を造ったとしても、それが完全版『折鶴お千』である保証はどこにもないのです。その3っつ全てに失われたシーンがあるかもしれない。加えて当時は検閲も厳しかった背景もあり、リアルタイムでの公開版が既に不完全版だったりもします。現実に『折鶴お千』はラストシーンから察するに、現存するどの版にも無いシーンが本編半ばに存在していた事は予想されます。そのシーンは公開されたかは別にして、少なくとも撮影自体はされています。

 観た方のために言うと、宗吉が悪党たちに罵倒され、自殺しようとしてカミソリを持って神田明神に行きます。そこでお千にカミソリを取り上げられるシーンがあったはずです。でしょ?
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|09/16| 活弁コメント(3)TB(0)
YAS.
斉藤裕子さんとmixiで知り合いになり、先日、mixiの仲間数人と新文芸座に観に行った者です。
なので、春翠トーキー版「白糸」、澤登師匠「お千」、斉藤さん「白糸」を観た後、残念ながらオフ会でしたので、片岡さんや他の方の活弁を観ることが出来ませんでした。(オフ会がなければ、本当に全部観たと思います)

そんな私が、片岡さんに「折鶴お千」について、お尋ねする失礼をお許しいただきたいのですが・・・

片岡さんがこちらにお書きになっていらっしゃるのを今読んで、やはり検閲によりカットされたか、フィルムの破断による、一部消失があるのを知りました。ではないかと思っていました。それも、いくつかバージョンがあるのですね。出来るなら、完全ノーカットが観れる事を期待したいですが・・・難しいのでしょうね(^_^;)

ところで、お聞きしたいことがありまして。というのも、「お千」のラストカットなのですが、病室に戻ってきたお千の手前にしゃがんで居る、宗吉が合成されての2ショットになるのですが、合成の理由が解りません。その少し前のシーンでは、普通の2ショットがあるので、山田・夏川二人同時の撮影が出来なかったとは思えません。
幽霊のように、半透明に・・・というのも、理由が見あたらず、何か他に理由が(何か他のものと合成する理由が)あって合成したのが、検閲なり、消失なりで、その部分だけ無くなってしまった・・・とか。
あの溝口健二ですから、意味も理由もなく、そういった映像を創るとは思えません。
もし何かご存じでしたら、教えて頂けますか?
斉藤さんに伺ったら、片岡さんなら、もしかしたらご存じかも・・・ということでしたので、こちらのblogを教えて頂き、この書き込みをさせて頂きました。
ご存じのことがあったら、教えて頂けると感謝です。よろしくお願いします。

次回は、何としてでも、片岡さんの活弁、観させて頂きます!
2007/09/19 23:34* URL* [ EDIT]
【かたおか】
YAS.様
 わざわざの書き込みありがとう御座います。ラストシーンですね…。まずはハッキリしている事から書きますと、他所に保存されているプリントではもう少し続きがありまして、「あなたが勉強してるのに いい気持ちで寝てなんかいられない」という字幕が入って、針仕事をしている風のお千と、うなだれる宗吉が、なおも写し出されてエンドマークなのです。

 このシーンは松竹さんから出ている『折鶴お千』で観られると思います。

 さて、ではなぜ宗吉が多重露出で描かれているかといえば、正直分りません。『折鶴お千』は公開当時、批評でコテンパンに書かれてしまい、権威に弱い溝口監督は、自分の中で失敗作のレッテルを貼ってしまったようでして、現存作の中ではコメントや記述の少ない作品に位置します。

 なのでここから書く事は完全に私見です。そのつもりでお読み下さい。

 お千が警官に連れ去られ、万世橋の駅で列車を待つ宗吉が回想(本編)かた覚める光景が写されます。ここから暫く、物語は宗吉の目線で描かれていきます。待合所で倒れた女性がお千である事は観客の誰もが了解していますが、それでも執拗にお千の痛ましい姿を描くのは、一連のシークエンスが宗吉の視点から描かれている事を示しているからと捉えるのが妥当でしょう。

 もし『折鶴お千』が宗吉の物語であるなら、ここで終わっても良いのです。しかし本作はあくまで「お千と宗吉」の物語ですからお千の物語を完結させてやる必要があります。そのために溝口は残酷にもお千を覚醒させて「畜生!」「男!畜生!」「男獣」と口走らせ、あまつさえ幻の宗吉まで見せるのです。

 ここで問題になるのはお千にとっての宗吉は17歳の、自分が身を挺して守った宗吉であって名なり功なりを遂げた医学博士の宗吉ではないという事です。なので、お千には立派になった宗吉は実物がそこに居ても居ないのと同じ、幽霊に様な存在となってしまっているのですね。

 深読みをすれば幾らでも出来ます。ラストでの「お祖母さんと あたしを 忘れて」という字幕=お千のセリフなどは溝口のエゲツなさを見事に見て取れる字幕です。

 ともかく色々な意味においてお千と宗吉は違う世界の存在になってしまった事が描かれている、とアタシは解釈していますがいかがなものでせう。
2007/09/20 08:27* URL* [ EDIT]
YAS.
YAS.こと、吉田康弘です。

なるほど、やはりカットされてもいるわけですね。

>色々な意味においてお千と宗吉は違う世界の存在になってしまった・・・

それをはっきりと表す、映像表現があったのでしょうかね?
そのショットが、消失してしまったのでしょうか?
とはいえ、多重露出の合成で何を表現したかったのかは、現状のフィルムだけでは解りづらいですね。残念です。

まだ「残菊物語」も、観たことがないので、ぜひ観てみたいです。
2007/09/20 23:39* URL* [ EDIT]












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