綱の品格について

 朝青龍と白鵬のにらみ合いが問題になっております。何のかんのと言っておりますが、相撲業界は朝青龍に話題を提供していただいているようなものであります。

 このところ相撲に限らず頻繁に聞く言葉が「品格」ですが、横綱に求められる品格とはなんぞや、と言えばこれはワタクシにはさっぱり分からんのです。そもそもどうして横綱に品格が必要なのか?そっから分からん。

 あのね、講談を皆さんは聴きますか?聴かないでしょうね。私はちょびっと聴きます。映画ファンは聴きません。日本映画の原作になっている作品が膨大に含まれている講談なのに聴きません。それはそれで解せないのですが、今日はその事ではありませんので話を戻しますが、講談には寛政力士伝という演目群があります。読んで字の如く寛政年間を舞台にした相撲の話なのですが、実はこの演目には隠れた秀作というか今聴いても面白いネタが多いのです。講談は武家の話が多いので堅苦しかったり、あるいはドラマツルギーとしての起伏に乏しかったりする作品が多いのは事実です。これにはこれで理由があるのですが、まあ兎も角として、寛政力士伝は題材が相撲だからでしょうか、気軽かつ滑稽な雰囲気を持った内容が少なくありません。現代でも十分楽しめます。詳述はしませんが寛政力士伝には取り組みに勝つために体に油を塗る力士がいます。オマンマを食いすぎて師匠を破門になり身投げをしようとした所を救われて別の師匠につき、自分を破門にした力士の元師匠をやっつける力士がいます。小柄で取り組みのとき相手の股間に頭突きをする力士がいます。そして雷電や谷風といった魅力的な力士がいます。

 登場する力士が個性的なのです。それ故に寛政力士伝はマニアックな存在ではありますが現代に命脈を保っている。

 それに比べ、戦後からの相撲のエピソードはどうでしょうか。美談と出世談ばっかりです。相撲マニアはいざしらず、それ以外の人にとっては面白くも何ともない。知らない・関心のない人間の美談ほど退屈なものは無いと多くの人は知っているのです。

 さて、現代です。朝青龍、良いじゃないですか。白鵬、結構です。身一つでモンゴルから出てきて、入門したては苛められたりしたでしょう、そりゃ。それが横綱になり、モンゴル相撲では永遠に手にできないような栄光と名声とお金を手に入れたのです。増長して当たり前なのです。もっと言えば、横綱になってなお、あのファイティングスピリットを持っているのが素晴らしいのです。あれに品格なんぞ言ってる日本人が敵うわけがないじゃないですか。彼らにしてみれば「勝ってから言え」ってなもんですよ。

 相撲好きの知人が言っていました。

「曙や小錦みたいな体格が違う奴らに勝てないのは仕方ないけど、同じような体格のモンゴル人に負けるのが情けない」

 しかしね、私に言わせりゃ、この感覚が駄目なのです。現実問題として体格が違えば勝てないんでしょう。でも「体格が違うから勝てないのは仕方ない」とファンも、そして本人も考えて、そんな考えが定着してしまったから日本人力士は弱くなったのです。そんな事でモンゴル人に勝てますかね。勝たなきゃいけないモンゴル人と勝つことを諦めた日本人。差は歴然です。敵前逃亡ならぬ歴然逃亡・・・嫌な洒落だねドーモ。

 朝青龍と白鵬は今様の寛政力士伝を体現しています。面白いです、彼らは。それに対して日本人力士は面白くないです。品格なんぞドブに捨てちまわなきゃ勝てないよって事なのです。

 そもそもね、相撲はスポーツではなく神事芸能なのです。なればこそ様々な儀式としての決め事があります。シコもそうですね。横綱の綱に付ける神社にある白いビラビラ(酷い表現…)もそうです。だけどもさ、日本の神々ってのは格式ばったものじゃないでしょう。もっと自由で野放図な連中でしょう。柳田翁によれば妖怪は堕ちた神々ですが、日本の神や妖怪に見られる溌剌とした雰囲気を感じるのはやっぱり朝青龍なのですよ。あと高見盛?

 いいんだよ腹が立ったら怒りゃ。両横綱が一触即発になったら、その場でもう一勝負すりゃいいのさ。お客さんもラッキーだべ。

 アタクシはそう思うのです。
 
 

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