ブルーバード映画という映画会社がありました。ここはユニバーサルの子会社で、アメリカの映画史では全く重要視されていません。アメリカの映画会社にも関わらず、アメリカの映画史文献では、こういう会社がありました、と書かれているにとどまる扱いです。研究者か、さもなけれぼよっぽどのマニアでないと知らないのがブルーバード映画。日本だとどこが近いかしら、エトナ映画とか全勝キネマと、僕の中ではそんなイメージ。

 ところがブルーバード映画さん、なぜか、どういう訳か日本でやたらとウケちゃった。海外の映画史家に「ブルーバード映画は『カリガリ博士』以上の影響力が日本映画のとってはあったんだよ」と言うと、まず信じて貰えませんが事実です。

 どうしてそんなに喜ばれたのかは分かりません。好んで舞台にされた農村風景が日本人好みだったから、作品のテーマに貧困が頻繁に取り上げられたせいで主な観客層だった低所得者の強い共感を得られたから、マートル・ゴンザレスに代表される女優が日本人にとってとても可愛かったから、等々の説が御座いますが確かな理由は分かりません。前述の通り米国映画史では重要な意味を持たない会社の作品故に本国でのフィルム保存も充分ではなく、といって主な配給先の日本では映画保存は絶望的状況です。作品が残っていない以上、片っ端から見て検証する事も出来ません。
 
ただ一つ言えるのは、当時の日本人、わけても日本の映画人が己の映画の理想形をブルーバード映画に見ていたという事です。

 11月に、ハーバードフィルムアーカイブで説明をさせて頂きます。
 ここではなんとブルーバード映画を上映したいとの打診、しかも希望の作品があれば(フィルムが現存していれば)僕の希望を通してくれると。

 僕は日本人ですからね、日本人の弁士ですからね、ブルーバード映画はいつか説明したいと強く思っておりました。作品の希望も聞いてくれるなんて飛び上がらんばかりに嬉しい提案です。
 選ぶ基準はひとつです。自分はなにが見たいか、に尽きます。日本の映画史に関わる人間にとってブルーバード映画を象徴する作品と言えば『Southern Justice(南方の判事)』ですが、これはどうやら残っていないらしい。ならば僕の心は決まってます『Shoes(毒流)』です。『毒流』も日本の映画人に感激を持って迎えられた作品ですし、なによりも晩年の生駒雷遊先生の説明の録音が残っている。これがまた良いのです。どうにかして一度でいいから生駒調で『毒流』を説明してみたい。ベンシ、いやさ映画説明者として至極自然な欲求であると思います。

 生駒調で語ってみたいなんて思う奴は現役ではワタシだけかもしれませんがね。

 そういう訳でハーバードでの二日間の上映のうち、一日は『毒流』を説明する運びとなったのです。本作は日本のフィルムセンターに約10分の断片が保存されているのも知っていましたし。
 それにしても「何が演りたいですか、それにしましょう」なんて提案が出来るのもハーバードフィルムアーカイブがFIAFに加盟して映画に対する真摯な態度と、他団体に対しての適切な連携を保ち続けていたからこそなのです。無声映画の発掘・保存・修復・上映なんてマニアの道楽だと思っている方もいるかもしれませんが、現在では各国が文化の歴史として世界中で連携しながらやっている事業なのです。とても広がりのある世界だと知って頂ければ幸い……ここで、へぇそうなんだって思うタイプの方はこのブログは読まないね。たまさか辿り着いたとしても、ここまで読まずに別のサイトに飛んじゃうね。

 話を戻しますとね今日ハーバードの公演情報をみたら上映時間が57min!ごじゅうななみん!!ふぃふてぃーせぶんみにっつ!!!日本にある10分前後のやつかと思ったら、なんと。
 オランダのフィルムアーカイブが近年デジタル修復したバージョンなのだそうで、こう言っちゃなんですが、俺に説明されるのを待ってたね、君(暴言)。※『毒流』は昨年のサンフランシスコ無声映画祭でも上映されています。
 
 57分バージョンでの上映がとても嬉しかったというお話でした。
 日本でもいつか『毒流』の57分版を演りたいな。
 ブルーバード映画及び『毒流』に関するウィキペディアの記述は、映画史を愛するKさんが熱烈執筆した物です。これもまた映画に対する真摯な態度と申せましょう。お礼申し上げます。

 
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