国定忠治

 劇団若獅子結成20周年記念公演『国定忠治』でした。『国定忠治』の通し公演は42年ぶりの事だそうです。特別出演に新国劇出身の緒形拳さんも出演で御座いました。

 若獅子さんは新国劇解散のとき新国劇の遺志を継ぐべく笠原章さんが中心となって設立した劇団であります。ちなみにこの笠原さんは数年前に制作されたフルカラー無声映画『月太郎流れ雲』に平手造酒役で出演されており若干のご縁のある方です。

 新国劇といっても解る方はあまり居なくなってしまったのが現実ですが、演劇史・映画史を学ぶものにとってははずす事の出来ない劇団なのであります。創立者の澤田正二郎は元々芸術座におりましたが、かの松井須磨子と喧嘩して芸術座を飛び出します。舞台の夢を捨てきれない澤田は新国劇を結成するも客足はサッパリ、進退窮まって上演した『国定忠治』は殺陣の新しさが大いに受けて一躍人気劇団となったのでした。

   新しい殺陣とはなにかといいますと、スピード感のあるリアルな殺陣の事です。それまで殺陣といえば舞台も映画も全て歌舞伎にみられる様式的なものでした。主人公の振るう刀の切っ先と切られる人の間には遠目に見ても解る程の距離があり、英雄の一振りで悪役が十人いっぺんにひっくり返るなど当たり前でした。これは主人公の英雄性を際立たせる為に長い時間を掛けて工夫された素晴らしい演出なのですが、いかんせん明治から大正にかけて輸入され普及した西洋式リアリズムとは大きく乖離しています。大いなる工夫も放置すればマンネリズムに取り込まれてしまいます。そこに登場したのが澤田正二郎の新国劇でした。彼の立ち回りはツケを打ちながら踊るような歌舞伎式のものではなく、実際に斬りあっているのではないかと錯覚させるような迫力を持っていたのです。

 日本映画史は澤田正二郎をあまり重要な人物として扱いません。確かに彼は映画俳優としては、あくまでワンポイントリリーフでしたし、主演作の評価も決して高いものではありません。しかし尾上松之助から阪東妻三郎へと時代が移るにあたって、新国劇の創始したリアルな立ち回りの影響は計り知れないものがあるのです。この点は忘れてはならんところです。

 この日の『国定忠治』は基本的には澤田正二郎の演出を生かしています。かつての熱狂は無いとはいえ、その精神に触れるのは大事な事でありましょう。

 その澤田正二郎主演で『国定忠治』の映画が撮られておりまして、僕らのマツダ映画社には「赤城山の場」と「山形屋の場」が保存されております。現存しているのはこれっきりかと思っていたのですが、先頃「尼寺の場」と「御用の場」が含まれたビデオを入手しました。10月に某所でこれを演ります。演劇畑の方は観るよろし。
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|04/07| 舞台コメント(0)TB(0)












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