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 ポルデノーネの公演が終わりましてね、結果としてその後、七ヶ国くらいから「ウチにも来てよ」って声を掛けて頂いてね、ポルデノーネ初参加は上首尾だったと思うのですよ。自分の芸については減点法で採点しちゃうんで私、いつも不満がるもんですからね、あんまり考えないようにしてるんです、はい。本当はそういうのも全部録音しておいて、不満な部分と向き合ったりするのが良いんでしょうけれど、なかなかそこまでの勇気が出ないっつーか、逃げを打っちゃう感じですよね。

 ともかくもですね公演が終わりましてね、あとは自由なんですよ。もう映画を見てれば良いだけ。無声映画を見てれは良いだけ。気分はウキウキですよ。何見ようかしら、っても全部無声映画なんすけどね。それ以外見るものが無いんですけれどね。
 で、起き抜けにプログラムで上映作品のチェックなぞをしていたんですよ。そしたら妙な文字が目に入って来まして。「”Film explaniers: Meeting with the Benshi Ichiro Kataoka”」ってんですわ。僕は誰かと会うのか?なにをするのか?よく分からんわけです。もう仕事は全て終わった気でいましたからね。

 朝食食べてたら丁度デビットが来たんで、これは何事かしらん、とお伺いを立てたらポルデノーネにはCollegiumという企画が有ってゲストや業界人の話を聞いたり質問をしたりする場が設けられているだと。で、弁士の話を聞ければ若い子たちにも刺激になるだろうから是非やりたいと、そういう訳なんですね。なるほどなぁと思っておりましたらデビット先生「一時に来られる?」って。
 だってもうプログラムに書いてあるじゃないすか。
 行きますさ、そりゃ。

 でもまあ、とりあえず今日も映画を見るわけです。
 本日の一本目は『Zemlya(Earth)』(1930年・ウクライナ)でありました。ストーリーもあるっちゃあるんだけど、それよりも景色が主役みたいな映画でしたね。去年ミシガンでみた『サムサラ』をちょっと思い出しました。全然違うんだけどね。でもって一本お休みしてから見たのが『Scherben』(1921年・ドイツ)、演奏はNeil Brand氏。午前中に見るには重い映画でした。もうひたすら重い。ウェルナー・クラウスが出てるんだけど『カリガリ博士』と同じ目付、人殺しの目付。撮影中に実は一人くらい殺っちゃってるんじゃないかって目付。



 映画が終わると13時5分、Meeting with the Benshi Ichiro Kataokaは13時スタート予定。日本ならギャーってなる所です。向こうも何映画なんか見てんだよってなる所です。でも平気、ここはイタリア。13時15分に会場に着いたらデビットが「やあ」って。「じゃあそろそろ始めようか」って。住みやすいわぁ、イタリア。

 コリジウムは無難な質問から、受けてるこっちが面白いなと唸る質問まで様々。質疑応答は海外の方が基本的に面白いですね。日本でももっと好き勝手な質問してくれて良いのにと常々思っておりますよ、私。

 ポルデノーネ コリジウム
 左からJohan、片岡、David

 Varelioさんが撮ってくれた写真です。男三人、見事に黒い服ですね。
 こういう質疑応答を通訳の手を借りずに出来る様にならねばならんですね。

 お昼にピザを食べて、ジェラート食べて映画再開。
 続いては『Prog.Joly-Normandin』(1996~7年・フランス)、演奏はAntonio Coppola氏でした。フランス初期作品群で、中には何が写っているのか分からないくらいにフィルムが痛んでからの修復版もありましたが、そこに演奏が入る事で痛んだフィルムまでもが物語性を持つんですね。楽しかった。
 16時からは『Viaggio in Congo』(1912年・イタリア)で演奏はGünter A. Buchwald氏。イタリアの撮影隊がコンゴで撮ってきた記録映像で、記録映像としては興味深いものの映画としては無音で見たら恐ろしく退屈になるであろう作品にブーフヴァルトさんがピアノ&太鼓で演奏を付けたもんだから、なんだか楽しいミュージックビデオになっておりました。上映後に放したら「ドラムを足で鳴らしてたから、足が熱くなっちゃった」って言ってた。ずーっとズンドコズンドコいってたものな。

 本日〆の作品は二本立て。『Rågens Rike(The Kingdom of Rye)』(1929年・スウェーデン)と『Tramp,Tramp,Tramp』(1926年・アメリカ)で演奏はマスタークラスの受講者さん。
 ポルデノーネでは毎年、無声映画伴奏の第一人者から演奏の手ほどきを受けられる講座があって、しかもただ習うだけではなく、頑張った人はポルデノーネの大舞台で演奏させてもらえちゃうのです。今年の発表作がこの日本だったという訳。
 この二本はキャリアの浅い演奏者には大変な二本立て。なぜといって一本目の『Rågens Rike』は上映時間128分の大作。演奏者が中盤辺りから音の引き出しが無くなってゆくのが分かるのなんの。映画はひたすらに丁寧なある意味見せ方のお手本のような作品でした。そして二本目の『Tramp,Tramp,Tramp』は見た方が早いね。



 つまり映画を見ながらみんなで歌いましょう、というアニメなのです。これには演奏の腕が物凄く要求されます。原曲を把握して、映画のリズムで演奏しなければならない。さすがにマスタークラスの受講生には荷が重かった作品の様で、どうやらこうやら最後まで弾いたといった感じ。それでも客席からは暖かい拍手が飛んでおりました。若手に優しいポルデノーネ。僕に向けられた拍手もそうだったのかもシレナイ。
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