初日、電話対応でワタワタ。二日目、外人局が開いてない。
 そんなこんなで三日目です。

 今日は長いです。

 朝、八時。再びボン大学のUさんと共に外人局へ。
 当たり前ですが今日は開いてました。整理番号をとるとものの五分で呼び出し音が鳴って電光掲示板に七番の部屋へ行けと出ます。繰り返しますがたったの五分。最初に「二カ月待ち」と言われ、二カ月待ったら「一ヶ月半待ち」と言われたのが、ボタンを押したらサトウのご飯ばりの急展開ですよ。

 七番の部屋には女性の担当者が棲んでおられました。「片岡」の名前を告げると知っていたので、我々を電話で翻弄したのはこの人です。お名前はFさんにしておきましょう。

 Fさん、とにかく仕事をするのがお嫌いな様で、我々の目的がアーティストビザの獲得である事を告げると「そんな制度はない。というか知らない。私があなたたちにしてあげられる事はない」と。知ないってあんた、この部屋には資料っぽい本もあれば、目の前に立派なおパソコンもあるじゃありませんか。なのに何一つ調べようともせずに、そんな制度はないと仰言る?

 とにかくこっちは事前に調べて、事情も二ヵ月前から説明して、ようやくここに来たのに。
 それをたった五分で無いと?
 とにかく大使館に言われた資料を持って来たのだからと言って差し出すと、それはそれは大儀そうに紙をお捲りになりまして、質問をしてきましたよ。

「あなた達は仕事をするの?」
「はい」
「でも、この推薦状には『仕事をしない』って書いてあるわ」

 だからアーティストビザだって言ってんだろが。
 この数日間でビザを獲得しなければならない事情が僕にはありました。
 9月23日~10月1日がアメリカ、10月3日~12日がイタリアなのです。そして10月20日からイギリスに行かねばなりません。アメリカから帰ってきてから申請をして遅いのです。そしたらFさん言いましたね

「アメリカに行くなら、それで滞在日数がリセットされるから大丈夫じゃない?」って。

 分ってねぇ、この人まったく分かってねぇ……。
 ドイツを含むシェンゲン協定加入国には最大90日間観光ビザで滞在できるルールがありますが、これは出国しただけではリセットされないのです。出国中滞在日数のカウンターが進まなくなるだけなんです。滞在日数に関しては結構複雑なので興味のある方は調べてみて下さいませ。とにかく、外国人を取り扱う外人局の、しかも実際に外国人と話をするセクションの人が滞在許可日数の制度すら正確に把握していないのが分かりました。嗚呼。

 なおも食い下がると、これまでに輪を掛けて面倒くさそうに「じゃあ上司に聞いてみるわ」と席を離れました。
 やれこれで少しは事態が好転するかと期待しますよね、普通。だって上司だもの。
 待つことしばし、その上司が我々の面談している部屋までFさんと共にやってきます。
 事態を重く見て、直接僕らの話を聞きに来てくれたのかと思いきやそうではなくて、単にFさんが僕の持って来た書類を自分のデスクに置き忘れたから一緒に身に来ただけでした……。書類忘れたって、なんのために立ち上がったんだアンタ。上司の人も変わった方でしたよ。ドイツは役人といっても日本の様にスーツとは限らないのですが、にしたって何だよその原色系のシマシマTシャツ。ここはお前ン家か、てか休暇中か。

 ……人を見かけて判断してはいけません。きっと彼が僕らに救いの手を差し伸べてくれるに違いないのです。

「うーん、アーティストビザ?知らないなぁ」

 おい、シマシマ!

 ドイツには仮申請ビザ(Fiktionsbescheinigung)というものがあります。これは現在ビザ申請中である事を証明するためのもので、観光ビザの90日間を過ぎても滞在が可能になるものです。せめてこれだけは発行して貰いたかった。僕はアメリカに一週間行くので滞在可能期間が実質一週間伸びますが、同行している妻はアメリカには行かない、つまり10月9日、僕がイタリアにいる間に滞在可能期間が終わってしまうのです。せめて仮申請ビザを出してくれとお願いしたら、またしても素晴らしいお返事。

「でもあなたはアメリカに行って、奥さんはドイツに残るんでしょう?一緒に行動しないなら仮申請ビザは出せないわ!」

 あれか、F、お前は24時間365日、ダンナと一緒か。そんなに熱々か。またサトウのご飯か、このやろう。
 Fさんと上司は「面倒くさいからねぇ」とか言って笑ってます、ヘヘッヘヘって。

 このFさんの机の上には標語を書いた札が置かれていました。

「いつも笑顔で」

 札の裏には「お客さんの為に仕事しましょう」とか「電話でも笑顔で対応しましょう、電話口の向こうの人には伝わります」といった接客の基本が書いてある素晴らしい札なのですが、Fさんの凄い所は「いつも笑顔で」を自分が読めるようにではなく、客が読める位置に置いてあるという点です。
 いやいやいやいや、待て。このままじゃ日本に帰らなきゃいけなくなっちゃう。折角、東京都から助成金を貰って、各国から出演オファーも貰っているのに。
 Fさん、我々が困っているのを見てアドバイスをくれました。優しいなあ。

「日本人なら街を歩いていてパスポートを見せろとか言われないから大丈夫よ」

 この人、不法滞在勧めちゃった!

 大丈夫じゃねえよ。というかお前、一番そういう事言っちゃいけない立場だろうよ。シマシマも平気な顔して聞いてんじゃねえよ。上司として咎めろよ、このわがままプリンセスを。

「あの、僕はイギリスに行かなきゃならないんですが、大丈夫なんでしょうか?」
「さあ」

 んんんもぉぉぉぉぉぉ。
 シマシマは平気な顔して出て行っちゃうし。
 とにかくここからは「私には何も出来ない」の一点張り。ネットで調べて皆さん外人局で苦労されているのは知っていましたが、ここまで非の打ち所のない駄目役人も珍しいんじゃないかと思うのです。彼女、全ての行動が面倒くさいのです。その面倒くさいを回避するために全身全霊全能力を費やしているのです。

「それでは困ります。では、あなたには何もできないとして、あなたが私達の立場だったらどうしますか?」とUさんがなお食い下がってくれています。
「そうね、Uさんはジークブルクに住んでるんでしたっけ?だったらジークブルクの外人局に行ってみる、かしら」

 Fさん、とうとう余所へ行け宣言です。
 ドイツは地域ごとの自治がしっかり分けられていて、どこかの街が他所の街の行政に口を出すのは御法度です。同時に、自分の街の仕事を余所へ押し付けるのもご法度なのです。
 歩く違反辞典みたいな人だよ、この人。

「ジークブルクに行ったら何とかなるんですか?」
「いままでジークブルクに行った人がこっちに戻ってきたことが無いから分らないわ」

 どこのホーンテッドマンションだ。奥に魔獣でも潜んでんのかジークブルクの外人局には。
 Fさん、またへへっへへと、若干、水木しげるテイストで笑います。
 「いつも笑顔で」ってそういう意味じゃないと思うんだ。

 
 ここで押し問答をしていても埒が明かなそうなので、我が軍は体勢を立て直すことにしました。
 出来る事は

①ボン大学に戻って関係者協議
②午後になったらジークブルクの外人局に行ってみる
③ドイツ大使館に問い合わせをしてサポートして貰う

 の三点です。
 みてろFめ。必ずアーティストビザを手に入れてみせるんだからねッ。

 という訳で、後篇に続きます
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|09/18| もやもやコメント(0)TB(0)












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