LPレコードの逆襲

LPレコードの逆襲

『LPレコードの逆襲 CDは音楽の楽しみを奪った』かまち潤・著 平成3年 毎日新聞社 を読みました。

 古い本です。発行が古いのではなくて、書いてあることが古いのです。本書はCDがLPに取って代わりつつある時代に書かれたもので、著者はタイトルからも察せられる通りLPレコードが大好きな方です。その為に文中でも建前としては「CD、LP共に長所と短所があり、特性を見きわめて利用するのが望ましい}としていながら全体の論調はあくまでLP寄りでして、アナログ愛好家がいかにCDに対して強い抵抗感を感じていたかを知るには絶好の書と言えます。

 例えばLPに対しては操作や設置の面倒さを認めながらも、手をかける事が愛情を育てる方法であると論じていながら、CDに対しては手軽さを認めつつ、小さくて探しづらい、これではライトユーザーは音楽から離れてしまうと危惧しています。

 LPでは大事な事がCDでは不満になってしまう。見事な論理の破綻でありまして、こうした破綻が随所に見られるのが本書の凄いところです。だがしかし、そこんとこを気安く否定しちゃあイケません。だって誰でも好きな物を守る時には論理がおかしくなってしまうぢゃないですか。愛すべきものを弁護するためには理屈ではない、情熱だ!とこの本は叫んでいるように思えるのです。

 とはいっても結局LPレコードの逆襲はなくCDに音楽業界は制圧されてしまったのですけれど。

兄と弟

黒澤明

『わが青春の黒沢明』植草圭之助
『蝦蟇の油 自伝のようなもの』黒澤明

 上記2冊を中心にして資料を読んだり国会図書館に行って古新聞のコピーを撮ったりしてきています。ある映画説明者についてここで書くためです。そもそもブログなんぞという明らかに自分に向いていない世界に手を出したのは、往年の弁士の記録を残したいが為でして、基本的に全く無益な私の文章もこと弁士の記録に関しては幾らか意味があるだろうと思っているのです。傲慢ではなく弁士の知識に関しては片岡一郎、既に日本屈指の存在なのです。ただそれは私が深い知識を持っているからではなく、誰も真剣に弁士の記録と格闘していないというだけの話なのです。嘆かわしい事ですが仕方がないので自分の為に、また興味を持った一部の方の為になるべく多くの資料を総合した形で弁士の物語を少しづつ記していこうとしているのが本ブログの正体なのです。現状では月に一人が限界です。今後はもっと難しくなるでしょう。

 殊に今度書く予定の弁士については、もっと充実した研究がなされなければおかしい存在なのです。しかし映画史はこの先人を、半ば意図的に視線から外してきたきらいがあります。無声映画末期の栄光と破滅を体現した彼について僭越ながら書きます。多分来週中に。

 さて関係者諸君に問題です。来週書こうとしている説明者とは一体誰でしょう?
 
 簡単ですね。

 分らなかったら弁士なんぞ辞めちまえ。

庭先案内 2巻

庭先案内 2巻

 ずっと好きなものがあります、多くの人には。ワタクシにとって、このマンガの作者須藤真澄さんという方はそうした対象です。高校時代からだから13年の間ずっとこの方の作品を愛読してきました。なぜ、かくも須藤作品に魅かれるかと申せば、代わりが居ないからとしかいい様がないのです。芸人でも作家でも代わりの無い存在感がとても重要です、私には。それは私が小さい頃からずっと変わり者と周りに言われてきた事に起因しているに違いないのです。変わり者で輪に入るのが苦手だった少年は代わりのない個性を持つ人に強く憧れる様になっていってしまったのです。発売直後に購入してその日の中に読んだのですが、今頃それについて書きます。つまり書きたかったってことですやね。

 須藤真澄作品は大別すると二つに分けられます。一つが『アクアリウム』や『電気ブラン』系統のファンタジードラマ、もう一つが『ゆず』や『おさんぽ大王』のような日常ギャグマンガです。本書『庭先案内』はファンタジーの方です。須藤作品におけるファンタジーの構成はいつも同じです。
 
 日常にふと異物が紛れ込んで主人公は動揺するのですが、気を落ち着けて異物を受け入れると、そこには忘れていた大事ものがあった。

 言葉にすればこの繰り返しなのですが、どの作品もそれぞれに独特の世界観を持っています。全てきちんと違う話になっている。これは描きたくても描けません。優れているのです、作者の目線が。失われてゆくもの、失われてゆきつつあるものに対しての、どこまでも深い視線が同じ構成の作品に多彩な変化を与えていると、勝手に思っています。

 

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古今和歌集

万葉集
 半年以上かけて読んでいた『古今和歌集』をようやく読了。あまりに時間がかかり過ぎて前半の歌など、もはや全く憶えちゃいませんがね。
 
 『万葉集』以来ようやく編まれた和歌(やまとうた)の歌集で率直かつ純朴な表現の『万葉集』に比べ技巧的かつ理知的なのが特徴だそうですがアタシは『万葉集』そ読んでませんので解説の受け売りです。読み終わってから高校で使っていた国語要覧を見ると『古今和歌集』は八大集の一つとなっています。すなわち古今、後撰、拾遺、後拾遺、金葉、詞花、千載、新古今の八つの勅撰和歌集を指すのだそうです。この八大集、受験の時はスラスラと言えましたっけ。受験当時はどれ一つ読んでませんでした。歌集だけでなく近代文学もしかりで正宗白鳥、岩野泡鳴、田山家袋といった作家も名前を覚えるだけ。読書好きとしては最高に苦痛な作業でした。もっともこの辺の作家を読まずに埴谷雄高や夢野久作、コリン・ウィルソン、H・P・ラヴクラフトなんぞを読んでいた自分にも責任があるんですけれども。

 話を戻しまして…。

 「古今」は「万葉」に比べ技巧的と紹介されています。事実、掛詞は頻出しますので知識の無い現代人には注釈が付かないと何の事やら皆目解らん歌が大半を占めます。千年以上前の言葉は、もはや外国語なので当然なのですが、歌われている内容はどうかというと非常にシンプルなのが多いことに気が付きます。

 恋って苦しいものだナァ

 ああ、花が奇麗だ
 
 仲のいい友達と別れるのはさみしいヨォ

ってなモンです。むしろ現代人の作る俳句の方がよっぽど複雑なテーマを抱えています。お茶のペットボトルにくっついている俳句なんて、どうしちゃったの?と聞きたくなるほど人生語っちゃてます。いかに現代人が強い刺激の中で暮らしているかが良く解ります。

 その反動でしょうか、都会を中心にシンプルな物・事への回帰願望が強くなっているようで、その種のビジネスも目立ちます。考えてみりゃ癒しブームは先駆だったのでしょう。ここであえて申し上げますと癒しブームから広がっているシンプル志向が私は嫌いです。大っ嫌いです。無農薬野菜の食事を出す店をネットで予約して、携帯で友達と待ち合わせして、車で移動して、土にも触らずオーガニックがうんちゃらと言ってる連中がイヤなのです。そりゃあ癒しを求める気持ちが分らなくはないが、にしても金で解決しすぎるよね。田舎に住んでごらんよ。一週間、携帯を離してごらんよ。

 個人的な意見です。なので簡単にひるがえします。例えば、アロマの香りと活動写真という企画があったとして、そこで活弁やってくれと言われたら、その時は喜んで演ります。演りますとも。そして言うでしょう「皆さん、癒されて下さいね」

二代目さん

二代目さん

 東京に住んでいる我々にとって上方落語はどうしても触れる機会の少ない芸能です。無論、きちんと調べていれば月に何度かは東京で上方落語を聴く機会はありますが、それは熱心なファンに場合であって絶対数はやはり少ない。とすると、私のようなヌルい落語ファンが上方落語を聴きたいと思ったときには録音に頼らざるを得ないのであります。

 手軽に聴けるのは米朝師匠、故枝雀師匠のCDでして図書館の落語コーナーには高い確率でどちらかが置いてあります。語り口もスマートで関東圏の人間にも聴き易く、素晴らしいシリーズであります。

 私が落語のテープの聞き漁っていたのは高校時代で、図書館にある落語を片っ端から借りておりました。当然、上方落語も含まれます。その時聴いた上方落語で一番好みだったのが二代目桂春団治だったのです。


 語りのテンポの良さ、口跡の明瞭さ、程よい上方のアク、どれも素敵でした。しかしながら二代目は録音も資料も決して多くありません。初代が上方落語伝説の人物で、三代目が現役でご活躍されている為でしょうか、両者の間に挟まって話題にのぼる機会が少ないのです。その二代目の奥様、河本寿栄さんによる二代目桂春団治の思い出語りが本書です。発行は平成14年にされていますが、ようやく読んだという次第。

 この本を読んだからと言ってどうだという事は無いのです。しかし、芸は好きだったけれども、人とナリについては全く知らなかった方のエピソードに触れるのは嬉しいものです。二代目春団治師匠、もっと録音が残っていたらと思う方の一人です。

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プロフィール

Author:片岡一郎
ご用命・その他
syoseibusi@yahoo.co.jp まで

公演情報
●百物語の夕べ ー第4回 怪談話と西洋怪奇映画ー
 三遊亭圓馬 怪談話『佐賀の夜櫻・鍋島猫騒動』
 片岡一郎   活動写真『カリガリ博士』
 日時/8月16日 18時〜
 会場/向島百花園 御成座敷
 料金/¥4000(お飲物付き・入園料込み)完全事前申込み制
 申し込み方法/お電話、FAX、メールのいずれかで、お名前、ご住所、お電話番号、参加人数をご連絡ください。
           受付確認後、下記指定口座へ会費のお振り込みをお願いいたします。
 電話・FAX/03−3619−4997
   メール /100ss@myad.jp
     口座/加入者名 百花園サポート士隊 00150−8−317047

●第601回無声映画鑑賞会 [なんてたってバスター・キートン]
 『キートンの大学生』(1927・米) 弁士/澤登翠
 『キートンの滑稽恋愛三代記』(1923・米) 弁士/片岡一郎
 『キートンの警官騒動』(1922・米) 弁士/斉藤裕子
 日時/8月25日 18時30分〜
 会場/門仲天井ホール
 料金/一般1800円 学生1600円 前売、電話&E-mail予約1500円
 ご予約/無声映画鑑賞会事務局
       電話/03-3605-9981 (受付時間 平日の午前10時〜午後6時)
       FAX/03-3605-9982
       E-mail/katuben@attglobal.net

●第602回無声映画鑑賞会 [第四回澤登翠一門会]
 『百万両秘聞』(昭和2年・マキノ御室)
 弁士/澤登翠、片岡一郎、桜井麻美、斉藤裕子
 日時/9月29日(月) 18時30分〜
 会場/門仲天井ホール
 料金/一般1800円 学生1600円 前売、電話&E-mail予約1500円
 ご予約/無声映画鑑賞会事務局
       電話/03-3605-9981 (受付時間 平日の午前10時〜午後6時)
       FAX/03-3605-9982
       E-mail/katuben@attglobal.net

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